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[コラム]もはやトランプ氏を切り捨てるべき時

ハンギョレ新聞 8月7日(日)18時53分配信

「ダンプ・トランプ(Dump Trump)」

 米国共和党大統領候補のドナルド・トランプ氏が選挙過程で初めて「北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)とも対話の用意がある」と言った時、実は少し興味をもった。シカゴ大のブルース・カミングス教授が先月のインタビューで「米国史上最も危険な大統領になる」と語る一方で、北朝鮮関連の言及については「唯一、興味が持てる部分」とトランプ氏を評価した際も共感した。

 バラク・オバマ政権は過去8年間、「戦略的忍耐」「対北朝鮮制裁強化」と傷ついたレコードのように同じ言葉ばかり繰り返してきた。北朝鮮核問題の解決と朝鮮半島の平和定着は進む道を失った。こうした現実に嫌気がさし疲れきった人たちにとり、トランプ氏が突然口にした「対話」という言葉は、トランプの話法を借りれば「すごく、すごく、すごく」微かな期待を抱かせたのも事実だ。

 トランプ氏は「本当に、本当に、本当に」真剣に悩んだ末、北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)労働党中央委員会委員長と対話する用意があると言ったのだろうか。そんなことはなさそうだ。

 トランプ氏は先月31日の米ABC放送とのインタビューで、ロシアがウクライナのクリミア半島を合併した事実も知らずにいた。米国の立場からすれば、ロシア問題は韓国の南北関係ほど戦略的に重要だ。だから彼が北朝鮮についてどれほど苦心して答えたのか疑わしくなる。重要な基本事実すら知らず、真剣さも欠けた彼のレトリックが政策につながるはずがなく、一貫して履行されるわけがない。

 なぜトランプ氏がロシアや北朝鮮に友好的な発言をするのか考えると、なおさらだ。それは単に選挙戦略にすぎない。トランプ氏の支持層を成す中南部の米国庶民は外交安保に気を使う余裕などない。生活の問題が厳しくなるなか、既成政界への怒りと反感に満ちている。米国の覇権維持と同盟を擁護する既成政治に対抗し、トランプ氏がNATOや韓国に相応の代価を払えと要求するたびに、その金が自分らの福祉に使われるだろうと思い込んでいる。ロシアや北朝鮮に対する発言まで「反既成政治」というのは、彼の感覚的選挙戦略の枠組みから外れない。

 それでも、それでも、それでもトランプ氏が大統領になったら、参謀に助言を求めるのではないか?そうならないようだ。

 参謀がほとんどいないからだ。ホワイトハウスや省庁の長官・次官はどうにか用意できるが、中間官僚に任命する人たちを見つけるのは困難だろう。共和党性向のシンクタンクの外交安保専門家の約半数がトランプ氏への支持や合流を拒否している。シンクタンクの専門家らが大挙して政権に入閣するのが米国の伝統であるのだから、このままではトランプ氏は人材難に直面することになる。

 さらに重要な問題がある。トランプ氏の閉鎖的かつ一方的なリーダーシップだ。トランプ氏は対面報告を受けないという。彼に接近できる人はごく少数。そのうえ文書形式の報告書を読むことも嫌い、参謀らの名前もほとんど知らないという。国内問題を「私だけが解決できる」と豪語するように、外交問題も自分が専門家と強弁する。だから「十常侍」中心に作られる精製されていない政策が続出することになる。

 過程など重要ではない、対話と交渉を通じて合意文を作ればいいではないか?とても守られないだろう。

 彼は窮地に追い込まれる度に“食い逃げ”をした前歴がある。カジノ事業やトランプ大学がそうだった。長い間バラエティーショーをしてきた彼は、視聴率(支持率)が落ちると刺激的で新しい脚本を提示してきた。少し話が長くなったが、彼は北朝鮮爆撃論を主張した経歴がある。

 残念だが私たちが目撃する米国の大統領選挙は、朝鮮半島の観点でだけ見れば、最悪を避ける選択を待たなければならないのが現実だ。

イ・ヨンイン・ワシントン特派員(お問い合わせ japan@hani.co.kr )

最終更新:8月7日(日)18時53分

ハンギョレ新聞