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社説[リオ五輪開幕]「平和」と「共生」の力に

沖縄タイムス 8月7日(日)17時40分配信

 4年に1度のスポーツの祭典が、軽快なサンバのリズムにのって開幕した。

 陽気で情熱的な開会式の演出が、これから始まる熱い戦いを盛り上げる。今回はどんなヒーロー、ヒロインが生まれるのか。体も心もおどる。

 南米大陸で初の開催となる「リオデジャネイロ五輪」には、史上最多の205カ国・地域から1万1千人を超える選手が参加する。

 4年後の東京五輪に弾みをつけたい日本は、国外開催では2番目に多い338選手を送り、前回ロンドン大会の倍となる14個の金メダルを目指している。期待が高まっているのは競泳、体操、柔道などの競技だ。

 県勢も自転車ロードレースや重量挙げ、バレーボールに4選手が挑む。1世紀以上前に沖縄から海を渡った移民の子弟たちも参加するという。

 お目当ての選手の応援はもちろん、出場するすべての選手にエールを送りたい。同時に17日間の大会期間中、306種目で繰り広げられる世界最高のパフォーマンスを存分に楽しみたい。

 心配なのは、開会式当日も頻発した五輪開催に反発するデモである。国内政治の混乱や経済の低迷、テロの懸念、ジカ熱への不安が影を落とす。

 国家ぐるみのロシアのドーピング問題も尾を引いている。世界反ドーピング機関(WADA)が暴いたのは、前代未聞の規模とその悪質さである。結局、当初予定の7割ほどの出場が認められたが、国威発揚のメダル至上主義は厳に戒めなければならない。

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 リオ五輪では、国際オリンピック委員会(IOC)が初となる難民選手団を結成した。地元ブラジルの一つ前に、五輪旗を掲げ、中東やアフリカ出身者で編成する選手団が登場すると、観客席からひときわ大きな拍手がわき起こった。

 スポーツを通して難民問題に取り組む姿勢を示すことの意義は小さくない。

 内戦で混迷を深めるシリアを命懸けで脱出し、ベルギーに渡ったという競泳選手は「私たちは人権を失い、不正に直面している人々を代表している」と語った。五輪出場に希望を見いだした一人である。

 中東やアフリカの紛争地域から欧州に流入する難民が急増する中、世界には6千万人を超える難民・避難民がいる。そのうち五輪に出場したのはわずか10人だが、スポーツへの情熱を持ち続ければ夢は必ずかなう。

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 開会式で印象に残ったのは、民族衣装を身にまとい、スマートフォン片手に笑顔で行進する選手の姿だ。

 入場する一人一人が手にした種が芽を吹き、緑の五輪マークをつくる演出も心打つものがあった。紛争や環境問題をテーマに「共生」のメッセージを発信したのである。

 世界五大陸を五つの重なり合う輪で表現する五輪マークには、平和への願いが込められている。

 排外主義が台頭する時代にあって、「平和の祭典」としての五輪の意味を、いま一度かみしめたい。

最終更新:8月7日(日)17時40分

沖縄タイムス