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金融庁が地銀に大ナタ? 地銀の体質改善迫るべく「新指標」導入して評価へ

ZUU online 8月8日(月)6時10分配信

金融庁は、地方銀行が融資先の地元企業に十分な経営支援をしているのかを評価する指標を導入する。

主力行として取引している企業のうち、担保を取らずに融資している件数や経営状態が改善した事例を数値化して地域経済への貢献度を把握、金融仲介機能を改善するのが狙いだ。

政府が成長戦略の柱に据える地方創生には、地銀の積極的な貢献が欠かせないが、金融庁は十分な働きができていないとみている。地銀が体質改善し、地方創生に貢献できるよう大ナタを振るう思惑も見え隠れする。

■客観的なデータで地域貢献度を把握

金融庁関係者の話によると、指標となる項目は50以上ある。このうち、無担保融資の件数、利益率や生産性など経営が改善した取引先数など5項目については、すべての地銀に算出を求める。

残りの項目には、M&A(企業の合併や買収)の支援数、取引先への人材育成支援件数、取引先への平均接触頻度などが含まれる予定。各地銀が地域の実情に合わせて複数の指標を選ぶ仕組みにする。

金融庁は年に1回、各地銀から報告を受け、客観的なデータとして各地銀の地域貢献度を把握する。金融庁関係者は「あくまで地銀との対話に役立てるもので、数値の改善を要求する意図はない」としているが、新たな監督行政の柱として導入するもようだ。

金融庁は島根県の山陰合同銀行 <8381> や北海道の北洋銀行 <8524> など地銀大手にたたき台を示し、銀行経営を適切に評価できるか協議したうえで、6月末の「金融仲介の改善に向けた検討会議」で素案を配布した。近く各地銀に指標を通知する。

■続々と登場する地銀の地方創生事業

政府が地方創生を最重点施策の1つとして打ち出して以来、地銀は地方創生担当部署や窓口を設け、地方創生と前向きに取り組む姿勢を見せ始めた。

百五銀行 <8368> 、北国銀行 <8363> など東海、北陸の地銀6行が広域観光の連携協定を結んだのをはじめ、地方自治体や地元大学、経済団体、観光団体などと連携協定を締結する例が相次いでいる。

千葉銀行 <8331> は頭取を委員長とする「地方創生・地域活性化委員会」を設置するとともに、地方創生融資制度を設け、地域活性化事業を後押ししている。八十二銀行 <8359> は購入型クラウドファウンディングで事業者支援を始めた。鹿児島銀行は農業法人設立の意向を示している。

このほか、大学発ベンチャー企業向け投資ファンドへの出資、地方創生や移住、定住の支援セミナー開催、地方創生をテーマにしたテレビ番組の提供をするところもあり、各地銀のWebサイトを見ると、まさに地方創生花盛りといった感じだ。

■融資姿勢に取引企業の根強い不満

しかし、取引企業の反応は良くない。金融庁がまとめた「企業ヒアリングとアンケート調査」では、不満の声が相次いで寄せられた。

調査は2015年10月以降に全国約3200社を対象に実施した。経営相談では1200社以上がメインバンクに「全く相談したことがない」と答え、地元企業の支援が十分に進んでいないことが分かった。相談しない理由で最も多かったのは「あまりいいアドバイスや情報を期待できない」。地銀が地元企業から信頼されていない実態も浮き彫りになった。。

中でも厳しい声が集中したのが、地銀の融資に対する姿勢だ。自由意見で地銀の融資姿勢を評価してもらったところ、批判的な声が良い評価をする声の13倍以上に達した。

具体的な回答を見ても、「地銀が自主的に社長と専務の個人保証を外してくれた」など評価する声はごく一部。

◎ 経営状態が最も悪く、本当に融資が必要な時期に助けてもらえなかった
◎ 事業内容より担保や保証ばかりに目が行っている
◎ 地銀側の都合に合わせた融資提案しか聞いてもらえない
◎ 業界の情報に疎く、全く頼りにならない

--などと地銀に対する恨み節ともいえる声が並んでいる。

地方創生の優等生といわれる岩手県紫波町の紫波中央駅前再開発事業で生まれた公民連携の商業施設オガールプラザや、広島県尾道市のまちおこし事業も最初は、なかなか融資が決済されなかった実態がある。

■不良債権処理に追われた時代と変わらぬ体質

金融庁は地銀が地方創生への貢献を通じ、自らも持続可能なビジネスモデルを打ち出すべきとする方針を掲げているが、多くの地銀が企業の事業内容を見ずに担保や保証ばかり気にして、地元企業との間の溝を深めてしまっているようだ。これでは不良債権処理に追われた時代と少しも変わらない。

地方は今、少子高齢化の進行と若者の流出で深刻な人口減少に苦しんでいる。しかし、徐々に進んでいくもので、人口減少が始まったばかりの地方都市にいると、それほど大きな切迫感はない。

このため、地銀の担当者にとってリスクが伴い、手間のかかる事業は後回しになりがちだという。だが地銀が今、地方の新しいビジネスを育てなければ、近い将来そのつけが戻ってくる。金融庁関係者は「金融庁が危機感を持つ理由はそこにある」と指摘する。

持続可能なビジネスが生まれれば、雇用が生まれて地域経済が活性化する。若者の流出にも一定の歯止めがかかるだろう。地方創生は企業と金融の協調なしに進まない。金融庁の新指標導入は地銀に自らの変革を迫っている。


高田泰 政治ジャーナリスト この筆者の記事一覧
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

最終更新:8月8日(月)6時10分

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