ここから本文です

震災から5年間の電力需要、全国で10%縮小するも地域で開き

スマートジャパン 8月8日(月)9時25分配信

 全国レベルの電力の需給調整を担う電力広域的運営推進機関(広域機関)が、震災前の2010年度から震災後の2015年度までの需要の状況を報告書にまとめた。年間の需要電力量は2010年度の1兆66億kWh(キロワット時)から減り続けて、2015年度には10.2%少ない9041億kWhまで縮小した。

【その他の画像】

 震災直後の2011年度に大幅に減少した後、2012年度と2013年度は1%前後の微減にとどまったが、2014年度と2015年度には2%前後の減少率になっている。LED照明をはじめ電気製品の消費電力が着実に小さくなることを想定すると、今後も全国の需要電力量は年2%程度のペースで縮小していく可能性が大きい。

 地域別に見ると、沖縄を除く9つの地域で震災前よりも需要が減少している。震災からの5年間で需要が最も減少した地域は関西で、減少率は13.1%に達した。次いで東京と四国が12.2%減、北海道が10.2%減だった。2ケタの減少率になったのは以上の4地域だが、いずれも震災後に電気料金を値上げしている。中でも関西と北海道は2回の値上げを実施したことが需要の低下を加速させた。

 一方で減少率が最も小さかったのは中部の5.8%である。中部も2014年に電気料金を値上げしたが、他の地域と比べて値上げ幅が小さかったために需要の減少を抑えられたようだ。震災後に電気料金を値上げしていない3つの地域を見ると、北陸が7.4%減、中国が8.8%減、沖縄が1.1%増で、相対的に需要は堅調と言える。

 広域機関は地域別の負荷率も公表した。1年間のうちに最大の需要が発生した日の電力量を100%として、年間の平均需要の割合を算出したものだ。負荷率が高いほど、年間の需要が安定して推移したと考えることができる。電力会社にとっては発電設備の利用率にも影響を与える指標である。

 全国平均の負荷率は2015年度に62.6%まで下がり、震災前の2010年度よりも低くなった。最大需要に比べて年間の電力量が少なくなった結果だ。見方を変えると、最近は利用者が最大需要をさほど意識しなくなったとも考えられる。

 震災直後は夏と冬に発生する需要のピークを抑えて、電力が不足する事態を回避しなくてはならなかった。最近では電力が不足する心配はなくなり、ピークの抑制よりもトータルの電力量を削減する方向に利用者の関心は移っている。今後も負荷率が下がっていく可能性は大いにある。

東京の最大需要が400万kWも上昇

 最新の2015年度の月別の需要を見ると、地域によって傾向に違いがある。沖縄では前年度と比べて夏の需要は減ったものの、秋から春にかけて需要が増えたために、年間の需要電力量が震災前よりも増加する結果になった。1年を通じて気温が高めで、冷房需要を押し上げた。

 一方で北海道は年間を通じて需要が減少した。冬の2月を除いて毎月の需要が減っていて、高めの気温と電気料金の値上げが主な要因だ。関西では夏の8月に前年を上回ったものの、そのほかの11カ月は前年を下回った。全国の需要を合計しても、8月だけが前年から0.8%増加した以外は減少している。特に12月は暖冬の影響が大きく出て8.8%も需要が減った。

 同様の傾向は月ごとのピークを示す最大需要にも表れている。2015年の12月は全国の最大需要が前年から13.6%も縮小した。ただし1月と4月、6~8月の合計5カ月間は前年よりも最大需要が拡大している。夏のピークは上昇傾向にあることがわかる。

 たとえば東京の最大需要は震災直後の2011年度に5179万kW(キロワット)だったのに対して、2015年度は5587万kWまで上昇した。その差は408万kWもある。とはいえ震災前の2010年度と比べれば666万kWも減っているため、需給状況に支障をきたすレベルではない。

 東北でも震災後に一貫して最大需要が増える一方、北海道は減り続けている。北海道は冬に最大需要が発生することも理由の1つだ。そのほかの地域では関西と四国の最大需要が減少傾向にある。残る中部・北陸・中国・九州・沖縄の最大需要は震災後の5年間で大きく変化してない。

夏も冬もピークの時間帯がばらつく

 震災直後には夏の日中と冬の夕方に発生するピークを抑えることが節電対策の基本になっていた。実際に夏は14時台に、冬は17時台に最大需要が発生するケースが多かった。ところが2015年度の各地域の状況を見ると、最大需要が発生する時間帯は変わってきている。

 夏の最大需要は地域によって12時台、15時台、17時台に発生している。北海道・北陸・沖縄が12時台、四国と九州が17時台で、残る5地域が15時台だ。地域ごとに気温が上昇する時間帯の違いもあるが、全体的に冷房需要が遅い時間帯に移ってきた。

 これも節電対策の変化が影響していると考えられる。というのも震災前には各地域で15時台にピークを迎えていたからだ。節電を意識しないで冷房を使っていると15時台がピークになる。無理のない節電対策が家庭と企業に浸透してきたことがうかがえる。2015年度と2014年度に最大需要が発生した日の状況を震災前の2010年度と比べても、時間帯による需要のカーブに違いは見られない。

 冬の最大需要も地域でばらつきがある。午前の10時台にピークになったのが中部・関西・中国の3地域で、午後の18時台は北海道・東北・北陸の3地域だ。東京は珍しく12時台に最大需要が発生した。当日(1月18日)は午前中に雪が降って暖房需要が急に増えたためで、例外的な状況である。

 震災前は各地域ともに冬は18時~19時台にピークを迎えることが多かった。2010年度に最大需要が発生した日も18時台がピークで、需要のカーブは直近の2015年度とほとんど同じ形だ。ただし2014年度は17時台にピークが来ている。節電対策の違いが需要のカーブにも表れている可能性がある。

 こうして見てくると、震災後の電力の需要は単純に減少しているわけではないことがわかる。節電対策の変化や電気料金の増減が影響を及ぼしながら、地域や時間帯によって差が出る。発電・送配電・小売の各事業者は需要の推移をきめ細かく把握しながら、短期と中長期の計画を立案することが重要だ。

最終更新:8月8日(月)9時25分

スマートジャパン