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「シン・ゴジラ」を音楽界随一のゴジラマニアなアーティストが観に行った!【みんなの映画部】

M-ON!Press(エムオンプレス) 8/8(月) 18:07配信

Base Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。今回は、公開直後から話題を呼んでいる庵野秀明総監督の『シン・ゴジラ』。上映直前には異常なテンションとなっていた熱血円谷特撮男児・小出部長は、この新作とどう対峙したのか!?
※ほのかにネタバレが含まれていますので、劇場で作品を観てからお楽しみください。

パンフレットに夢中な映画部員たちはこちら

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活動第28回[後編]「シン・ゴジラ」
参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子(チャットモンチー)、世武裕子

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■「どんなゴジラとして登場したか」が大きなポイント

──「シン・ゴジラ」、さらに深掘りということで(笑)[後編]のスタートです。

小出 ちょっとネタバレに触れてくるところなんですけど、今回は「どんなゴジラとして登場したか」というのが大きなポイントだと思うんですよ。

世武 怪獣感はなかったね。

小出 そうなんだよね、不思議と。

世武 本当、全然なかった。

福岡 構図としてはやっぱり「エヴァ」やん。だからむしろ使徒っぽかった。なんていうか、何かの象徴という感じがした。

世部 そうそう、人間を映している象徴。本当に人間が原因でゴジラが出てきて、人間が作った核のせいで死なない怪獣になっているのに、それをまだ武力や核で倒そうとするっていう……。

たぶんこれまで人間は何回もチャンスをもらえたのに、バカなことを繰り返しちゃってきたんだよね。だから「その過ちにいいかげん気づいてくれ」っていう熱い気持ちが作品に込められている。

やっぱりあきらめちゃダメだっていうか。あきらめたらもう自分たちは終わりじゃん、っていう切羽詰まった感じがすごい伝わってくる。

小出 そう。初代がそうだったように、本当に“今、出現するべくして出現したゴジラ”という感じがするんだよね。

福岡 これが実写であり得るというのがほんまにすごいなと思った。

世武 いやぁ、庵野さんすごいよね。

小出 やっぱりずっとゴジラに通底する精神性というのは、最初にゴジラを撮った本多猪四郎監督のイズムというか。戦争や、人間の愚かさについての警鐘。あるいは悲哀。それは何度も形を変えてシリーズの歴史の中で描かれてきたんだけど、今回、庵野さんはそこを踏まえつつ、ちゃんと自分の映画にしている。

先人へのリスペクトはいろいろ見られるけど、軽薄なオマージュというものは全然していないんですよ。そこもすごいと思う。あと今回のゴジラは描き方がちょっとドキュメンタリータッチだったじゃない?

世武 そうね。

小出 相当、現実を意識した災害シミュレーションにもなっていて、ゴジラという未知の巨大生物が発生した場合、どういう風に国は対処していくのかというのが頭から順を追って描かれている。それはやっぱり本多猪四郎監督も初代ゴジラでやっていたことなんだよね。

初代ゴジラが出てきたときには、この事実を他の諸外国に言うのかどうかというのが議題となって、いや国際問題に発展しかねないからまずは国内で押しとどめましょうっていう意見が出てくるんだけど、いや、それはちゃんと公表すべきだ! っていう反対意見も出て国会が割れるわけ。近い描写が「シン・ゴジラ」にもあったじゃない?

世武・福岡 うんうん。

小出 あとは初代ゴジラでは、山根博士という人が出てきてゴジラを生物として研究しようとする。

世武 いたいた(笑)。

小出 ゴジラを倒そう、駆逐しようと自衛隊や国防の人たちは言うんだけど、その前にこんな巨大生物、謎の生命が現れたということをなぜ研究しないのかっていうことを生物学的なアングルから言うわけですよ。

そして、同じように「シン・ゴジラ」では、国は駆逐の道を探るけどアメリカを巻き込んだ核使用問題に発展してしまい、研究チームはゴジラの進行を止めるためにその生体を最後まであきらめずに解明しようとする。目標は同じはずなのに対となっているふたつの作戦の進行がスリリングですよね。

だけど、彼らは敵を倒すためにひとつになるのではなく、「こんな状況でもひとつになれた」ということに感激するじゃない? そこに日本人としての在り方を考えさせられました。この作品のコピーである“現実対虚構”と書いて“ニッポン対ゴジラ”は伊達じゃないですよ。

そして俺の頭をずーっとかすめてたのが、“見たか「インデペンデンス・デイ」!”ってこと(笑)。

福岡 でもちょっと似たシーンがあったよ。米軍の強力な攻撃に日本側が感心しちゃって、「やっぱアメリカすげーな」っていう。そのすぐ後でゴジラに火を吹かれたけど(笑)。

──火に油を注いじゃったっていう(笑)。力に力で対抗することの無益さ、負のスパイラルってやつを一発で表現してましたね。

小出 「核を使うか使わないのか」っていう瀬戸際の描写に関しては、1984年版「ゴジラ」(監督:橋本幸治)にもあって。

核使用を迫る米ソに対して、国のトップたちも「しょうがないかー」みたいな空気になる。でも、時の総理大臣が「日本国憲法には非核三原則がある」と。核を持たず、作らず、持ち込ませずっていうのがあるから、「こういう時だからこそ順守したい」と言い切るんです。

「一度でも使ってしまえば抑止力としての均衡が破れ、世界の破滅に繋がる。それが核というものです」と。これはビル・プルマンの演説に匹敵する名演説ですよ(笑)。

福岡 もう「インデペンデンス・デイ」に聞かせてやりたい(笑)。

世武 真逆だよね。あんな簡単に核! 核! って。

■長谷川博己さんと石原さとみさんのことが今回で大好きになりました

世武 私、別に鉄道オタクでもなんでもないんだけど、新幹線を作戦で使うところ、あれはもう日本の、特に東京のリアリティじゃない? 単純に「最高!」って思っちゃった(笑)。

──プラレール持っている子供はゴジラフィギュアでやってるよね。

世武 そうそうそう!(笑)

小出 あれはもう庵野さんの趣味なんじゃないかな。きっと自分であれを見たかったんだと思う(笑)。

福岡 たしかに(笑)。あとさ、役者さんもすごく良かったよね。

小出 そう! 個人的に「進撃の巨人」ではネガティブな印象を持ってしまった長谷川博己さんと石原さとみさん、このおふたりのことが今回で大好きになりました(笑)。

世武 わかります(笑)。でもなんで同じ役者さんでこんなに印象がまったく変わるのかというと、やっぱり演出なんだよ。

──ここまで変わるか!? っていうぐらいだよね。「シン・ゴジラ」は石原さとみさんの代表作になると思います。

小出 庵野さんの作品に出てくるハーフやクオーター系日本人の実写版がついに出てきた。

世武 うんうん、本当にそう。

福岡 アスカ・ラングレー出てきた(笑)。

小出 名前も「カヨコ・アン・パタースン」だし、アスカ派の僕は大変うれあしかったです(笑)。いや~、映画ってホントにいいものですね。

福岡 出ました、決め台詞!

世武 本当、とっても良い映画でした。今日はありがとうございました!

TEXT BY 森 直人(映画評論家/ライター)

※小出部長によると、ラストシーンの屋上は、これまた原爆の話でもある映画「太陽を盗んだ男」のラストシーンの屋上でもあるとのこと。また、Base Ball Bear「エレクトリックサマー」ミュージックビデオのロケ地でもあります。

最終更新:8/8(月) 18:07

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