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【相模原殺傷事件】見えてきた警察と措置入院の境界の問題

福祉新聞 8月8日(月)10時6分配信

 神奈川県は7月29日、県立の障害者支援施設「津久井やまゆり園」(相模原市緑区)での殺傷事件を受け、黒岩祐治知事をトップとする再発防止検討対策本部を設置した。当面の対応として8月中旬までに正確な事実関係を把握し、関係機関との情報共有の在り方などを検証する。併行して同施設の機能回復への取り組みを支援する。事件当時157人いた入所者は、2日9時現在で90人。他施設への移動、自宅への帰宅が進んでいる。

 県は指定管理者として同施設を運営している「かながわ共同会」(米山勝彦理事長、厚木市)に事件の経過報告を求める。黒岩知事は本部設置にあたり、「どこに課題があったのか、徹底的に洗い出す」と話した。

 事件は7月26日未明に発生。同施設の元職員、植松聖容疑者(26)が入所者を刃物で刺し、19人が死亡、26人が重軽傷を負った。容疑者は今年2月、同施設への犯行予告を書いた手紙を衆議院議長宛てに提出した後、同施設を退職。自傷他害の恐れがあるとして措置入院となり、3月に退院した。

 政府は7月28日、措置入院と解除の判断の在り方、退院後の継続的な支援体制などを検討する関係閣僚会議を開いた。警察や関係団体との情報共有も検討課題とする。

 安倍晋三首相は会議で「施設の安全確保の強化、措置入院後のフォローアップなど必要な対策を早急に検討し、できることから速やかに実行に移してほしい」と指示した。

 ■警察と医療の境界

 一方、事件発生から時間がたつにつれ、警察と措置入院の境界の問題も見えてきた。

 横浜市では7月27日、市内の無職の男が障害者施設(都筑区)の破壊を予告する匿名メールを磯子区内の福祉施設に送信。届け出を受けた神奈川県警は29日、威力業務妨害の容疑で男を逮捕した。

 メールには「この施設の法人は今ニュースになっているやまゆり園の被疑者と変わらない」と書かれていた。このメールは、第三者を経由した点で植松容疑者の手紙と同じだが、容疑がかけられた。犯行計画を詳細に記した手紙が罪に問われない不自然さを目立たせる格好となった。

 植松容疑者の措置入院を決めた相模原市は1日、記者団に対し、「手紙の内容は当市では詳細に把握していなかった。犯行のがい然性が高いのであれば、その段階で警察が逮捕できなかったのかと思う」(精神保健福祉課)としている。

 また、措置入院の狙いは本人に医療を提供することであり、犯罪抑止ではないということも強調した。この点について大阪府内の精神科病院のソーシャルワーカーで、日本精神保健福祉士協会の柏木一惠会長は「精神科医療に社会防衛を期待されても困る。そもそも今回のケースが措置入院とする対象だったのか疑問だ」と話す。

 「強制医療の必要性があったとは思えない。仮に措置すべき症状があるならば、疾患の特性にもよるだろうが、一定期間後に措置入院から医療保護入院、任意入院に切り替えるのが普通だ」としている。容疑者が薬物依存症であるかのような報道もあるが、同市は「依存症という診断はしていない」と否定している。

 ■気持ち共有する場

 措置入院という事実が繰り返し報道されると、精神疾患と事件の間に因果関係があるかのような論調になり、世の中の精神障害者は落ち着かなくなる。

 そのことに危機感を抱いたNPO法人地域精神保健福祉機構(コンボ)は1日、「気持ちを共有する場」をホームページ上に設けた。10日正午まで書き込みを受け付け、31日まで記述内容を公開する。不安な気持ちなどを吐き出せる場が必要だと判断した。

 2001年の大阪・池田小児童殺傷事件の際、容疑者に措置入院歴があること(後に詐病と判明)が取り沙汰された。その結果多くの精神障害者の気持ちが落ち込み、自殺者まで出す事態になったとする調査報告もある。

 DPI日本会議など五つの障害者団体は2日、記者会見を開き、措置入院の見直しの検討は障害者への差別や偏見を助長する恐れがあるなどと訴えた。

最終更新:8月8日(月)10時6分

福祉新聞