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白く滑らかな木肌の動物たち 彫刻家・土屋仁応さんが新作

カナロコ by 神奈川新聞 8月8日(月)16時5分配信

 滑らかな白い肌に澄んだ瞳。横須賀出身の彫刻家、土屋仁応(よしまさ)(39)が生み出す木彫りの動物たちは、静かなたたずまいで見る者を魅了する。そんな繊細な作品13点と他の4人の作家たちの作品33点が並ぶ「木々との対話」展が、東京・上野の東京都美術館で開催中だ。動物の形を通してイメージを追いかける土屋に、創作への思いを聞いた。

 ネコやシカといった実在の動物もいるが、ほとんどが空想上の動物を作品にしている。「犬は安産、羊は温かさや眠れないときに数えるもの、キツネはだます。そういった何かのシンボルとしての動物に興味がある。イメージが先にあるので、動物の形を借りた象徴彫刻といえるかもしれない」と土屋。

 ライフワークとして取り組んでいるのが、中国神話に登場する神獣、麒麟(きりん)だ。シカに似た姿で竜のような顔。善政が行われ、世の中がいい時に姿を現す。新作の「麒麟」は高さ130センチを超える大作だ。

 「今の世がふさわしいかどうかは別として、現れてほしいという願いを込めている。円空がたくさん木彫りの仏像を作ったように、いっぱい作っていきたい」

新しい試み
 同じく大型の作品となる新作の「獅子」では、新しい試みを行った。今まで作ったことがない、歯をむき出した怒りの表情だ。

 「ここ最近、力強くて一歩踏み出すような表現に引かれている。実は制作中に、飼い犬が末期の病で体調が悪く、歯を見せて苦しそうな顔をすることがあった。その表情を一生懸命生きようとしているんだと変換したい気持ちもあった」

 さらに、これまで行ってきた白で着色した陶器のような肌ではなく、ほとんど着色をせずに木目を生かした肌に仕上げて獅子の荒々しさを表現してみた。

 たてがみには、学生時代に平安時代の獅子像を模刻した体験を生かした。「獅子のぐりぐりした渦巻き模様には、呪術的な意味が込められていて、生命の象徴でもある。いつかやってみたいと思っていたことを、取り入れてみた」

仏像に学ぶ
 東京芸大の彫刻科を経て木彫の技をきちんと学びたいとの思いから、大学院では文化財修復の技術を学んだ。1年間、平安時代の仏像をひたすら模刻し、当時の技術の高さを体感できたことが大きな経験になったという。

 「ずっと昔に亡くなった人で名前も残さないような職人だが、模刻することで作った人が感じられた。木を通して教えてもらっている感じ」

 木は生命力のある素材だが、木の中から彫り出すというのは大げさだという。「昔の仏像でも、例えば腰のひねりを強調するのに木を二つに切るなど、素材として割り切って捉える側面があった。モチーフを決めてサイズ、ポーズ、と頭を冷やしながら冷静にやる部分は必要」という。

 「彫っていくと木が生きていた時間が感じられる。誰も見たことのない表面が現れる。何十年、何百年もかけて成長していった時間。それに釣り合うような仕事をしないといけないなと思う」
 


 同展は10月2日まで。祝日を除く月曜休館。一般800円、65歳以上500円、大学・専門学校生400円。問い合わせは同館電話03(3823)6921。

最終更新:8月8日(月)16時5分

カナロコ by 神奈川新聞