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大渕弁護士に懲戒処分 弁護士の報酬体系はどうなっているのか?

ZUU online 8/9(火) 7:10配信

東京弁護士会が8月2日、依頼人から着手金を不当に受け取ったとし、大渕愛子弁護士に対し業務停止1カ月の懲戒処分を行ったことを公表した。そもそも弁護士はどのような報酬の取り方をしているのか。

■報酬の計算は「着手金・報酬金方式」が主流

一般的な弁護士報酬の計算方式は、大きく分けると「着手金・報酬金方式」によるものと、「時間制報酬方式(タイムチャージ方式)」によるものがある。

「着手金・報酬金方式」とは、弁護士報酬を着手段階と終了段階の2段階で請求するものである。

まず事件の依頼を受けた着手段階で「着手金」を受け取る。「着手金」は、事件の結果に関係なく、弁護士が手続きを進めるために着手時に受け取るものだ。報酬とは別であり、後で報酬の一部に充当される手付金とは異なる。

その後、事件が成功に終わった場合、事件終了の段階で請求するのが「報酬金」である。成功というのは一部成功の場合も含まれ、その度合いに応じて請求するが、完全な不成功(裁判でいえば全面敗訴)の場合は請求しない。

弁護士が事件を引き受ける場合、「着手金・報酬金方式」で引き受けることが最も多い。「着手金」・「報酬金」の相場は、日本弁護士会連合会(日弁連)がアンケート結果を公表しているほか、2004年に廃止された過去の日弁連の弁護士報酬基準を参考にして決めることが多い。

このような2段階方式は、依頼人・弁護士双方のリスク回避につながる合理的な報酬制度と言えよう。依頼人にとっては、最初に弁護士報酬を全額支払ってしまったのでは、その後にその弁護士がきちんと仕事としてくれるかどうか不安がある。他方、かといって成功した際の報酬金しかないのでは、弁護士は仕事をしたのに報酬をもらえなくなるかもしれないという不安を抱えることになる。

■タイムチャージ方式や顧問料方式もある

企業法務を行う弁護士などに比較的広く利用されている計算方式が、「時間制報酬方式(タイムチャージ方式)」である。依頼された事件の処理に必要とした時間に弁護士の1時間当たりの単価をかけて弁護士報酬を計算する方法である。

1時間あたりの相場としては、1~3万円程度から、著名弁護士の中には10万円以上を請求する者もいる。

この方式の問題点は、時間をかければかけるほど報酬が増えてしまう点である。1時間でさっと処理できる仕事を2時間も3時間もかけてゆっくりやれば報酬が増える。またその仕事を行うのに要する時間の妥当性の判断も難しい。しかも弁護士は多数の仕事を同時並行で行っているのであり、本当にその弁護士がその時間をその仕事に費やしたのかを依頼人が確認することも難しい。

このほか、顧問料と言って、企業や個人と顧問契約を締結し、その契約に基づき継続的に行う一定の法律事務に対して毎月請求するものもある。継続的に法律事務の依頼を受けるような場合に利用されている。

以上のほか、弁護士は依頼人に対し、実費として事件処理のため実際にかかる費用を請求する。裁判を起こす場合でいえば、裁判所に納める印紙代と予納郵券(切手)代、記録謄写費用、事件によっては保証金、鑑定料などがかかる。出張を要する事件については交通費、宿泊費、日当を請求する。

■なぜ大渕弁護士は懲戒処分を受けたのか?

今回大渕弁護士が懲戒処分を受けた事案では、大渕弁護士が依頼人から着手金を受け取ったこと自体は、前述のの「着手金・報酬金方式」に従って報酬を受け取ったものであり、問題がないようにも思える。それにもかかわらず懲戒処分の対象となった理由は、依頼人が日本司法支援センター(法テラス)の代理援助制度を利用していたからだ。

代理援助制度とは、経済的に困窮している者が法的トラブルにあったときに、法テラスが弁護士費用等の立替えを行う制度である。弁護士が法テラスの代理援助制度を利用して受任する場合には、名目如何にかかわらず、法テラスから支払われる着手金・報酬金・実費以外に金員を受領してはならないことになっている。

これを認めたのでは、代理援助制度の趣旨が損なわれてしまうからだ。すなわち、経済的に資力の乏しい者でも法的サービスを受けられるように援助するという趣旨が損なわれてしまうということである。弁護士は、依頼人から直接報酬を受け取るのではなく、法テラスから報酬を受け取る。

東京弁護士会の決議によれば、大渕弁護士は依頼人の女性から養育費請求の依頼を受けた際、法テラスから受け取る金額とは別に、引き受けた際に約束した着手金の不足分や5ヶ月分の顧問料として、合計17万8500円を受領したという。しかも依頼人の女性が返金を求めたにもかかわらず応じず、弁護士会役員の説得でようやく返金したという。

このような行動を取った理由は、代理援助制度を利用した場合、弁護士は法テラスが認定した金額以外の金員を受領できないというルールを、東京弁護士会の副会長から説明を受けるまで、大渕弁護士は知らなかったからだという。このような法テラスのルールは、法テラスを利用する弁護士ならば当然知っておかなければならないことであり、「弁護士の品位を失う非行があった」とされ懲戒処分の対象となるのは真っ当な判断と言えよう。

大渕弁護士には、今回の件を真摯に反省して頂き、品位と誇りを持った弁護士として復活してもらいたい。(星川鳥之介、弁護士資格、CFP(R)資格を保有)

最終更新:8/9(火) 7:10

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