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マンモグラフィーだけの乳がん検診は不十分!? 超音波やMRIの組み合わせが必要

MONOist 8月9日(火)7時25分配信

 シーメンスヘルスケアと相良病院(鹿児島県鹿児島市)は2016年8月8日、東京都内で会見を開き、乳がん検診の現状や、全身検査が可能なPET-MRI同時撮影装置「Biograph mMR」を使った最新の検診手法について説明した。医療保険が適用できると共に定期検診も行われているマンモグラフィーだけでは乳がんを見つけ出すには万全とはいえず、超音波やMRI(磁気共鳴画像診断装置)なども組み合わせる必要があるという。

【マンモグラフィーで見た乳腺濃度の違いやマンモグラフィー感度との関係などその他の画像】

 日本人の死因の第1位となっているがん。女性で最も多いのが乳がんだ。その乳がんを早期に発見する乳がん検診で広く利用されているのがマンモグラフィーである。相良附属病院ブレストセンター 放射線科部長の戸崎光宏氏は「マンモグラフィーによる乳がん検診の重要性は変わらないが、乳腺濃度が高いと乳がんの検出感度が低くなる。アジア人の50歳未満女性の8割は、高濃度乳腺(デンスブレスト)であり、マンモグラフィーだけの乳がん検診では不十分だ」と語る。

 実際に、厚生労働省が実施している大規模臨床試験「乳がん検診における超音波検査の有効性を検証するための比較試験(J-START)」が発表した中間報告では、超音波検査の有効性を示唆する結果が出ている。

 また、欧州では遺伝子検査などから分かった乳がんリスクに応じて、マンモグラフィーのみ、マンモグラフィー+超音波検査、マンモグラフィー+MRIといった個別化検診を行う事例も出ている。マンモグラフィーによる乳がん検診を重視してきた米国でも、マンモグラフィーで高濃度乳腺であることが分かった場合に、そのことを通知し、追加の画像検査を受けるよう受診を進めることを義務付ける法律の制定が各州で進んでいるという。

 戸崎氏が所属する相良病院は「アジアNo.1の乳がん専門病院」を目指して、さまざまな活動を展開している。2015年5月には、シーメンスヘルスケアとの間で、最先端の乳がん治療などを行う女性医療センターの設立・運営に関するパートナーシップの基本契約を締結している(関連記事:鹿児島の病院が歩む、アジアNo.1女性医療機関への道のり)。

 相良病院 理事長の相良吉昭氏は「当院では2016年4月から乳腺濃度を通知するようにしている。そしてマンモグラフィーで検診が十分でないと判断した場合には、必ず超音波検査を受けてもらうようにしている。ただし、超音波検査は自費になるので患者の負担が大きい」と語る。また2016年9月には、マンモグラフィーと超音波診断装置を共に搭載した乳がん検診車を導入し、鹿児島県下の巡回を始める計画だ。

●PET-MRIでアンジェリーナ・ジョリーと同じ“ハイリスク”患者に対応

 乳がんの検査では“ハイリスク”の患者への対応も重要になってくる。乳がんや卵巣がんは、BRCA1/2遺伝子に変異がある場合、年齢を重ねるごとに発症の確率が急激に高まることが知られている。この“ハイリスク”の患者の場合、乳房や卵巣を切除する予防的治療か、MRIなどを使うサーベイランスで対応する必要がある。予防的治療で対応したことで広く知られているのが、ハリウッド女優のアンジェリーナ・ジョリー氏だ。

 国内では、“ハイリスク”であるかどうかを知るための遺伝子検査や、その後の予防的治療やサーベイランスが保険適用外であるため高価にならざるを得ない。「高価だから実施されないので臨床例も少ない。臨床例が少ないと有効性を証明できないので保険適用にはできず、高価なままの状態が続く」(戸崎氏)というのが現状だ。

 シーメンスヘルスケアと相良病院は、2015年5月に提携したパートナーシップに基づき、乳がんや卵巣がんの“ハイリスク”患者を主な対象とする検査装置として、PET-MRIのBiograph mMRの導入を決めた。Biograph mMRは、磁場強度が3.0TのMRIとPET(陽電子放射断層撮影)を同時に行える検査装置である。

 国内のPET検査の複合装置というとPET-CTが一般的だ。ただしPET-MRIは、PET-CTと比べて「軟部組織コントラストに優れ、X線の被ばくがない。MRIとPETの検査時間がほぼ同じなので、検査データの同時収集が可能だ」(シーメンスヘルスケア ダイアグノスティックイメージング事業本部 MR事業部 クリルニカルマーケティングマネージャーの井村千明氏)という。世界で約100台のMPET-MRIが設置されているが、シーメンスヘルスケアの製品のシェアは約80%に達する。

 相良病院が導入するBiograph mMRは2016年10月から稼働を始める。1日当たり8枠で検査を行う予定だ。相良氏は「乳がんなどの術前検査はこれ1台で完了する。検査データの同時収集による早さ、保険適用により3万5000円で検査できる安さは、患者にとって大きなメリット」と説明する。

 また相良病院では、“ハイリスク”患者のサーベイランスへのMRI活用を検討する、文部科学省の科学研究費を用いた研究事業を実施している。「PET-MRIによる臨床例を世界に発信すると共に、国内でMRIを用いた個別化検診を実現する道を開くために貢献したい」(相良氏)としている。

最終更新:8月9日(火)7時25分

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