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景気ウォッチャー調査(16年7月)~円高・株安によるマインド面の下押し圧力が和らぐ

ZUU online 8/9(火) 11:40配信

■景気の現状判断DI:4ヵ月ぶりの改善も、景況感は足踏みが継続

8月8日に内閣府から公表された16年7月の景気ウォッチャー調査によると、景気の現状判断DIは45.1(前月:41.2)と4ヵ月ぶりの改善となったほか、参考系列として公表されている季節調整値も43.2と前月から3.3ポイント改善した。ただし、現状判断DIの水準は好不況の分かれ目である50を下回る状況が続いており、景気回復の鈍さを示すものとなっている。

前月調査では、インバウンド需要による押し上げ効果が弱まるなか、英国のEU離脱決定に伴う円高・株安の進展などから、景況感は大幅に悪化した。その後、英国のEU離脱を契機とした金融市場の混乱が収束したことに加え、調査期間(7月25日から月末)にかけて政府・日銀に対する政策期待から、円高・株安に歯止めがかかったことも、景況感の好転につながった模様である。

家計動向関連では、熊本地震による自粛ムードが和らいだことやクリアランスセールによる売上増などが景況感の押し上げに寄与した。企業動向関連では、製造業を中心に円高への懸念が幾分和らいだことに加え、経済対策への期待感が高まったことも景況感の改善につながった。

コメントをみると、円高・株安関連のコメントが前月から減少したほか、熊本地震や英国のEU離脱関連のコメントも減少傾向にあり下押し圧力は和らぎつつある(最終頁の図参照)。一方、年初来の円高を根拠にデフレを懸念する声が一部の業種で聞かれている。

■円高・株安によるマインド面の下押し圧力が和らぐ

現状判断DIの内訳をみると、家計動向関連(前月差4.3ポイント)、企業動向関連(同3.2ポイント)、雇用関連(同3.2ポイント)いずれも前月から改善した。家計動向関連のうち、住宅関連(前月差▲0.1ポイント)を除き、小売関連(同4.7ポイント)、飲食関連(同3.4ポイント)、サービス関連(同4.6ポイント)が大幅な改善となった。

コメントをみると、小売関連では「インバウンドや富裕層の売上が落ちている」などインバウンドの鈍さを懸念するコメントや「英国のEU離脱問題から始まる円高、株安が景気に大きく影響している」(関東・スーパー)など、引き続き円高・株安によるマインド面の下押しを懸念するコメントが寄せられた。

一方、「クリアランスセールが1日に一斉に始まったこともあり、上旬からセール品を中心に好調に推移している。今年は天候にも恵まれ、早めに立ち上がった晩夏物や初秋物の定価商品も、堅調に推移している」(近畿・百貨店)といったコメントのように、クリアランスセールによる売上増が景況感の改善につながった模様である。

飲食関連では、「7月はボーナス支給の影響もあり、来客数も客単価も増えている。特に4~5人のグループで来店する若い客が多い」(東海・一般レストラン)など、ボーナスによる消費増を景況感の改善理由に挙げるコメントが寄せられた。

住宅関連では、「消費税増税の再延期が決まってから、客との商談時間が長くなってきている」(北海道・住宅販売会社)といったように、消費増税延期の影響を懸念する声が聞かれた。

企業動向関連は、製造業(前月差3.3ポイント)、非製造業(同3.5ポイント)ともに前月から改善した。

コメントをみると、「円高の進行による不安感があり、製造業での設備機器への投資は延期になりそうである」(近畿・電気機械器具製造業)とのコメントのように、引き続き円高の影響を危惧する声が聞かれた一方で、「7月は天候に恵まれ、月末まで暑い日がほぼ毎日続き、特に季節商材のエアコン、扇風機、飲料水等の物量が増え、15%ほど輸送量が増えている」(北関東・輸送業)など猛暑続きによる季節商材の需要増を指摘するコメントが多数寄せられた。

雇用関連では、「人手不足から直接雇用の募集が増加している」(南関東・人材派遣会社)といったコメントのように、企業の採用意欲は依然として高水準が続いている模様である。業種別では、「新規求人数及び有効求人数が増加傾向を示している。製造業などでも正社員が増加している」(北関東・職業安定所)とのコメントから、とりわけ製造業の採用意欲の高さが窺える。

■景気の先行き判断DI:2ヵ月ぶりの改善も、先行きの不透明感は拭えず

先行き判断DIは47.1(前月差5.6ポイント)と2ヵ月ぶりに改善し、参考系列として公表されている季節調整値も46.6と前月から6.9ポイントの改善となった。先行き判断DIの内訳をみると、家計動向関連が前月差5.1ポイント、企業動向関連が同6.7ポイント、雇用関連が同6.9ポイントといずれも前月から改善した。

家計動向関連では、「商品売り上げの動向を見ると、主力の衣料品売上が厳しい。また、円高株安で、高額品の売上も厳しくなる」(九州・百貨店)といったように、円高株安によるマインド面の下押しを危惧する声が聞かれた一方で、「金融政策と政府の経済対策により消費が高まると見ている。特に耐久消費財では、客単価や購買指数のアップが期待できる」(南関東・家電量販店)など、経済対策へ期待を寄せる声が多く聞かれた。

企業動向関連では、「当地の主要産業である自動車産業では、円高に対する不安が現実となっている」(東海・輸送用機械器具製造業)とのコメントのように、円高への懸念が根強いことが窺える一方で、「公共工事は現政権のもと3年間順調に推移している。今期は発注額が前年比83%、当社受注も85%と厳しい。政府が28兆円規模の大きな経済対策を打ち出したので、今後に期待したい」(北関東・建設業)など、経済対策への期待感が高まっている様子が見て取れる。

雇用関連では、「企業にヒアリングしたところ、中国経済の減速や英国のEU離脱問題による為替相場の変動に伴い、先行きの不透明感が増している」(近畿・職業安定所)といったように、世界経済の先行き不透明感から雇用環境が厳しくなるなど懸念材料もみられる。

一方、「今月の新規求人数は、前年同月と比べて減少したものの、フルタイム求人を中心に企業の採用意欲は強く、引き続き求人増加が見込まれる」(南関東・職業安定所)など、先行きも企業の採用意欲は堅調に推移することを示唆するコメントが多数寄せられた。

7月調査では、現状判断DIが4ヵ月ぶりに改善したものの、英国のEU離脱決定後の落ち込みの反動による可能性が高い。また、先行きは大規模な経済対策の効果や猛暑による消費増への期待などから、景況感の改善が見込まれているが、こうした押し上げ効果が今後も継続するかは不透明な面もある。このため、景況感が短期的に改善基調に転じることは見込みにくく、当面足踏みが続くことが予想される。

岡圭佑(おか けいすけ)
ニッセイ基礎研究所 経済研究部

最終更新:8/9(火) 11:40

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