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【川崎大輔の流通大陸】タイ、オートリースビジネスの魅力

レスポンス 8月9日(火)11時30分配信

タイに好影響をもたらすといわれるアセアン経済共同体(AEC)が昨年末にスタートした。タイでオートリースビジネスを行っているSUMITOMO MITSUI AUTO LEASING & SERVICE (Thailand)、通称SMATの代表取締役社長である原邦武氏に、タイにおけるオートリース市場の現状と今後の展望について話を聞いた。

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◆変化するタイ自動車ビジネス

2015年末から、アセアン経済共同体(AEC)がスタートした。そしてこのAECの主導権を握ることを期待されているのがタイ。地理的優位性を生かし、周辺国のメコン地域に工場を誘致して、その陸路でのハブとなることでチャイナプラスワンならぬ、タイプラスワンの動きを生み出そうとしている。以前はコスト低減のための製造業の進出が多かったが、サービス業の進出へとシフトしてきている。まさに獲得すべき市場としての進出である。

自動車アフターマーケットは、既存のある程度成熟した自動車市場に新しい商品やサービスを提供していくことになり、これからのタイ自動車ビジネスにおいて中心的な存在になっていくと個人的に考えている。そこで今回注目してほしいのが、自動車金融のオートリースビジネスだ。新車市場の拡大によって自動車金融のマーケットの拡大が加速する。一方でオートリースがなければ拡大スピードは遅くなる。自動車市場拡大に強い補完関係を持っているビジネスといえる。


◆タイで活躍する日系オートリース企業

2003年にSMATは設立した。株主は、スミタイインターナショナルリミテッド、住友三井オートサービス(株)、住友商事タイ(株)だ。事業内容として、ビジネス顧客へのリース、及び車両のメンテナンス、修理などを行っている。タイのオートリース市場の規模は15万~16万台であり年々拡大をしている。

タイにおけるリース会社の種類としては大きく3種類あり、1. 銀行傘下(金融会社で整備はディーラーに外注)、2. 自動車メーカー傘下(トヨタ、ホンダ系などで整備は自分たちのディーラーで行う)、3. その他商社グループなどで設立した独立系企業(SMATなど)がある。

SMATのメイン顧客は、グレーターバンコク内の工場にある日系企業である。「日系企業としての日本でのやり方、手厚いサービスをそのままタイに持ち込んだ。顧客層の現地進出日系企業が求めるサービスに合致していた」と原氏はいう。信頼、安心を武器に現地進出日系企業へオペレーティングリースを提供できる大きな強みを持って、スピーディにビジネスを拡大してきた。

リース会社の成功のポイントは、定期点検を行い大きなダメージになる前に修理を行うことで、リースアップ(中古車)の市場価値をいかに高く維持できるかが大事である。タイでは年間5万から6万kmの走行距離を走り日本と比べかなり長い。そのため特に注意が必要だ。3年から5年ほどで、入れ替えるタイミングとなりリースアップ車両をオークションに出し車両を換金している。オークション会社でもメンテナンスがしっかりしたリース会社の中古車は他(ほか)より高く買値がつくことが多い。リース会社にとって中古車の市場価格は非常に重要となっている。


◆課題は中古車市場価格の把握

「中古車の市場価値をしっかり把握していくことが大事。現在は、オークションからの情報しかないのが課題だ」と原氏は指摘する。2015年のタイ国内の新車販売台数は前年比9.3%減の79万9594台で、3年連続で前年実績を下回った。

タイでは、2011年の洪水によって自動車の供給が追い付かず、新車販売台数が急激に落ち込んだ過去がある。政府は市場を回復させる目的もあり2011年にファーストカーバイヤー施策を打ち出し、意図的に新車流通を増加させた。供給が需要を上回り、2014年ごろのオークション相場による中古車市場価格は、前年比で30%以上価格が急落。2015年に入り下げ幅は縮まり、2016年に入ってピックアップなどの車両はようやく上向き傾向になってきた感がある。

市場調査会社のフロスト&サリバンでは、2016年のタイ国内の新車販売台数が前年比で1.3%減の78万台になると予測しており、新車市場の後を追い中古車市場も調整局面へ突入していくため、市場価格の動向を常に注視する必要があると考えている。


◆SMATにおける今後の展望と市場の魅力

タイマーケットにおける顧客ターゲットとして3つのステップに分類できるだろう。ステップ1が日系、ステップ2が欧米系、ステップ3が地場系、となる。現在のSMATでは日系が多くを占めているが、今後は日系企業以外への対応も必要となってくるだろう。

「今までは新規投資の日系企業が多かったが、これからは既存企業に対して付加価値のある営業、更に今後は非日系企業への対応をしていきたい」と原氏はいう。前述したように新車販売台数が2012年以降連続して下がっている。しかし、80万から90万台の販売台数が本来のタイの実力であり、悲観的要素はないという専門家の意見も多い。原氏は「リース化率が高くないため、日本のオートリース市場と比べてタイはまだ伸びしろが大きい」とタイでのビジネスの魅力を語る。

タイの自動車市場の調整が完了に至るまでには少し時間が必要ではある。しかし、「アジアのデトロイト」として、自動車産業を代表とする日系企業の一大集積拠点としての重要性は大きい。タイのメコン地域との統合は、CLMV(カンボジア・ラオス・ミャンマー・ベトナム)へのアクセスポイントを提供し、膨大なマーケットポテンシャルが生み出されるだろう。

現地のニーズに合わせて商品、サービスを柔軟に変化させ、信頼されるためのビジネスインフラを構築することで、タイのオートリースビジネスには大きな魅力ある市場といえる。


<川崎大輔 プロフィール>
大手中古車販売会社の海外事業部でインド、タイの自動車事業立ち上げを担当。2015年半ばより「日本とアジアの架け橋代行人」として、Asean Plus Consulting LLCにてアセアン諸国に進出をしたい日系自動車企業様の海外進出サポートを行う。アジア各国の市場に精通している。経済学修士、MBA、京都大学大学院経済研究科東アジア経済研究センター外部研究員。

《レスポンス 川崎 大輔》

最終更新:8月9日(火)11時30分

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