ここから本文です

「北斗」つながりに想いを込めて『北斗星』が公開される

レスポンス 8月9日(火)11時45分配信

2015年8月に上野~札幌間の寝台特急『北斗星』が運行を終了してからおよそ1年が経った。現在は運行を支えた車両の大半が廃車されてしまったが、8月7日、北海道北斗市の茂辺地(もへじ)地区で、JR北海道に所属していた2両の『北斗星』用車両の公開が始まった。

[関連写真]

この2両は、北斗市の有志による「北斗の星に願いをプロジェクト推進委員会」が、インターネット募金(クラウドファンディング)により保存を実現したもの。ほかに、北海道倶知安町のタクシー会社や千葉県の有志が保存の意向を表明していたものの、費用などの問題で折り合いがつかず、最終的にクラウドファンディングを活用して動いた北斗市の有志が実現にこぎつけた。北斗市と『北斗星』は「北斗」つながりであること、『北斗星』が現在の道南いさりび鉄道を走行していたことなどが、保存へ動き出すきっかけにもなったという。

クラウドファンディングが成立し、保存が決定した4月27日以降は、保存先となる旧茂辺地中学校グラウンドで設置作業が進められ、7月5日にはJR北海道苗穂工場から移送されてきたロビー室と1人用B寝台個室「ソロ」の合造車「スハネ25 501」とコンパートメント式のB寝台車「オハネフ25 2」の設置が完了。7月31日には一般公開に先がけて支援者を対象にしたお披露目セレモニーが開催された。

そして迎えた公開初日の8月7日、筆者も道南いさりび鉄道を利用して、セレモニーに伺った。旧茂辺地中学校は、道南いさりび鉄道茂辺地駅を出て、駅前の道を直進、T字路を左折してまもなくのところにある。ゆっくり歩いても5分程度の至近だ。遠目からは、蝉が鳴く広々としたグラウンドの奧にポツンと佇む2両の客車に不思議な感じがしたが、近づいて見ると、平らなグラウンドに設けられた立派な軌道の上に鎮座する青い車体に、現役と見紛うばかりの迫力を感じた。

「北斗の星に願いをプロジェクト推進委員会」の代表で、地元で米穀店を経営している澤田導俊さんの話によると、旧茂辺地中学校の土地は北斗市が所有しているが、『北斗星』保存に際しては市が無償で提供してくれたという。「もし、それがなければこのプロジェクトは実現しなかった」と言う澤田さん。隣接する体育館も含めての活用をこれから模索していくという。

一般公開は10時からで、スハネ25形の後部には車内入場用の階段デッキが設けられていた。車内は土足厳禁のためスリッパに履き替えて入場する。スハネ25形、オハネフ25形ともにほぼ現役当時の内装が保持されており、スハネ25形のロビー室には飲料水自動販売機が、飲料の見本が入ったまま残されていた。さすがにビデオ上映用のモニターや電話室の公衆電話機は撤去されていたが、現役時を知る見学者が「ここでよくビデオを見ていましたよ」と往時を懐かしむシーンも。

車両銘板やエンブレムといった外観備品も、譲渡時にそのまま付いてきたという。実は、昨年8月、同じくクラウドファンディングにより保存されることになった711系電車は、一部の備品が外された状態で譲り渡されたそうだが、今回は、JR北海道の配慮でそのようなことはなかったという。B寝台の通路側に設置されている非常用のハンマーにまで「保存車両のため取り外し厳禁」という貼り紙がしてあったほどだ。ただし、外観備品は盗難の怖れがあるためすべてを取り外し、スハネ25形にあったエンブレムはレプリカが取り付けられている。取り外した備品は別の場所でまとめて公開することも考えているという。

車内を見回してみると、やはり、現役当時のままの状態は、マニアにとってもありがたいと感じる。意外と乗車している時には気がつかなかった部品や掲示も見ることができるからだ。スハネ25形の反対側には川を見渡せるテラスも設けられており、開放感は抜群。ここならちょっとしたパーティなども開けるし、写真を愛好する筆者としては、車両を手前に置いた星空撮影にも使えるのではないかと感じた。

保存場所には立派な軌道が敷設されているが、盛土やバラスト部分は有志の手によって施工し、専門的な技術が必要なレールの敷設は、JR北海道の関連会社である北海道ジェイアール物流が足かけ3日で施工したという。軌道部分はかなり嵩上げして設置されたため、車両の足回りを目線に近い状態で見渡せるようになっている。マニアにとってはたまらない状態だが、これはそのようなことを意図したわけではなく、車両内から川を見渡せるようにしたためだという。いわゆる「鉄道マニア」が参画していないプロジェクトであるとはいうものの、結果的にはマニア心をくすぐる演出もなされているようだ。

1500万ほど集まった資金のうち、950万ほどが車両の移送費とレールの敷設代で消え、クラウドファンディングの手数料を除くと残りは100万程度。これらは車両の補修などに充て、以後はさまざまな収益事業を展開して『北斗星』の保存活動を支えていきたいと言う澤田さん。その一環として、道南いさりび鉄道に函館方面から婚活列車を走らせ、途中、『北斗星』車両に寄り、催しを行うことを考えているという。現時点で複雑な電気回路を作動させられないため、「せめて照明だけは点けたい」と、公開開始の翌日には早くもJR北海道まで出向き、技術的な指導を仰ぐという。

当日は周囲に道南いさりび鉄道のブースがあるだけだったが、1時間が経過して30人程度の見学者が訪れたというから、注目度はまずまずといったところだろうか。公開は11月上旬までを予定しており、8月は14、21、28日に行われる。公開時間は10時から15時まで。駐車場はあるが可能な限り道南いさりび鉄道を利用してほしいということだ。

《レスポンス 佐藤正樹(キハユニ工房)》

最終更新:8月9日(火)11時45分

レスポンス

いかにして巨大イカを見つけたか
人類は水中撮影を始めたときから巨大イカ(ダイオウイカ)を探し求めてきました。しかしその深海の怪物を見つけることは難しく、今まで撮影に成功したことはありませんでした。海洋学者であり発明家でもあるエディス・ウィダーは、ダイオウイカの初の撮影を可能にした知見とチームワークについて語ります。