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企業規模でみるシステム運用管理のアウトソーシング方法

ITmedia エンタープライズ 8月9日(火)10時24分配信

 中小企業と大企業の間では、会社の規模に応じたITシステム規模の大小の違いだけでなく、ITシステムの選定、採用や運用方法にも違いがあります。アウトソースの方針を決めるアプローチ方法も同様で、大企業と中小企業では取り得る方策が違います。まずは、中小企業での適切なアプローチから説明します。

※前回の記事はこちら

●中小企業でのアプローチ

 SOHO(スモールオフィス・ホームオフィス)や個人事業主など、非常に小規模な企業を除いて、一般的な企業では複数の業務システムが稼働しています。

 標準化にあたって手を付ける順序に特別な決まりはなく、前回ご紹介したように、手を付けられるところから初めてよいでしょう。ただし、中小企業はシステム数が少なくても、IT担当者も少ないことが一般的です。途中で日々の業務の負荷が大きくなって作業に遅れが発生したり、動きが取れなくなることも往々にしてあります。

 このように少ないリソースで標準化を進めるには、SLAやアーキテクチャといった方針が必要です。この連載の第1回で紹介したデータ種別の分類をもとに、まずは一つのシステムやプロジェクトに注力してパターンを経験し、その後に他のデータについても同様に分類を進めていくことで、混乱を防ぎながら着実にプロジェクトを進められます。場合によっては、SIerや同業他社がもつベストプラクティスをそのまま参考にするのも方法です。

 進め方のもう一つのアドバイスは「検討時間の制約」です。日々の業務や運用はなくなりませんので、あまり投資余力や担当者の対応時間に余裕がない状況も十分に考えられます。この場合はコストと時間のそれぞれの現状を見比べ、投資への制約が大きいなら「重要度から検討」し、時間への制約が大きいならば「手の付けやすいところから検討する」と、上申なども含めて比較的スムーズにいくことが多いようです。

 重要度から検討する例を挙げると、製造業では設計や生産管理といった製品自身に関連する業務システム(重要度が高いもの)からスタートし、その後に販売管理や人事給与・経理といった業務システム(重要度が比較的低いもの)に落とし込んでいく、といった方法があります。

 手を付けやすいところから検討する例では、逆に人事給与や社内情報システムといった利害関係の調整が社内だけで済む/少なくて済むものから始めることもあります。こうすることで、後回しが多発したり、検討しても何も決まらなかったりといった状況を極力少なくすることができます。

 大企業よりシビアな経営環境にある中小企業では、しばしIT投資が後回しにされてしまいます。しかし、新しい技術を導入したり、何らかの変更を加えたりするという検討は一時的に負荷が高い業務ですが、後回しにすればするほど、現行の運用と新しい運用の間に大きなギャップができてしまい、さらに対応が難しくなります。

投資を後回しにするということは、業務効率を改善できないといった「プラスになるものの実装が遅くなる」だけでなく、「将来のIT変更に対するリスクを高める」というデメリットも伴います。コストの抑制、または削減と同時にリスクについても選択していることをきちんと認識すべきです。

●大企業でのアプローチ

 一方、大企業にとっての適切なアプローチは中小企業の場合と少し異なります。システムの数が多く、種別も多岐にわたるため、一つずつ順次実施するようなアプローチでは、同じ内容の検討や無駄な作業が多数発生してしまいます。この場合、社員か外注か、委託かは別として、ある程度の数のIT担当者がいることが一般的です。

まずはそもそもの業務・データの洗い出しに注力し、全体のアウトラインを作成してから始めるべきでしょう。超大手企業がIRなどで公開している中期経営計画レベルまでは不要ですが、業務間の連携、格納場所や格納方法、ポリシーの整理までを一度行うと、その後の更新、メンテナンスも含めて非常に使いやすい基礎資料になります。

 この資料を作成する際、一般的なベストプラクティスでは、大企業の複雑な業務環境としては部分最適になってしまうことも多くあります。よほど急いで対応しなければいけない場合を除き、この段階ではベストプラクティスと言えども、検討のスタートラインとしての参考にとどめたほうが良いでしょう。

 これらの手順を経て標準化のアウトラインができれば、あとは前回紹介した要件に応じた技術を調査・検証し、実装していくことになります。こうなれば、まずは付き合いのあるSIerやITベンダーから情報を聞きつつ、それ以外のいくつかの情報元からの情報を少し加味するだけで、かなり効果の高い改善策が、標準運用やポリシーに沿った形で実装できるでしょう。

 前回と今回でITシステムの運用管理を外部委託する際の方針の決め方について、マネージドサービスプロバイダー(MSP)を主眼に置いて紹介しました。以前からのMSP以外に、最近ではクラウドを活用する企業が増えてきたこともあり、主にパブリッククラウドを提供している事業者そのものや、パブリッククラウドを活用したサービスを提供する事業者のことをMSPと区分してクラウドサービスプロバイダー(Cloud Service Provider、CSP)と呼ぶようになってきています。

 選択肢が多くなることは競争の発生を意味し、ユーザー企業にとっては非常によいものですが、選ぶ対象が増えれば検討が長引いたり、別の方式を検討する時に新しい課題が出てきたりします。

 次回は一般的になってきたクラウドを活用してデータ管理を行う場合について、従来のオンプレミスやデータセンターへ単純に預けて利用する時とは違う点や、注意すべき点を説明します。

●執筆者紹介・森本雅之

ファルコンストア・ジャパン株式会社 代表取締役社長。2005年入社。シニアストレージアーキテクトおよびテクニカル・ディレクターを経て2014年5月より現職。15年以上に渡って災害対策(DR)や事業継続計画(BCP)をテーマに、データ保護の観点からストレージを中心としたシステム設計や導入、サービス企画に携わる。現在はSoftware-Defined Storage技術によるシステム環境の近代化をテーマに活動中。

最終更新:8月9日(火)10時24分

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