ここから本文です

いま職場で“若き老害”が増えている

ITmedia ビジネスオンライン 8月9日(火)10時40分配信

常見陽平の「若き老害」論:


 突然だが、あなたは「老害」と聞いて、誰を想像するだろうか?

【すべての画像はこちら】

 職場の経営陣や上司、政界や経済界のドン、テレビのコメンテイター、近所の商店街や町内会を仕切っている人など、連想する人はさまざまだろう。

 個人的には、「朝まで生テレビ!」で議論の主導権を握り続ける田原総一朗氏や、「サンデーモーニング」で「喝!」や「あっぱれ!」を叫ぶ張本勲氏の華麗なる老害芸に圧倒されている。ゲストを呼びつつ、自分の方が圧倒的に喋る「徹子の部屋」における黒柳徹子氏にもだ。ここ数年ヒット曲がないにも関わらず、紅白歌合戦に呼んでもらえる演歌歌手なんかにも老害感があると思う。

 もっとも、電波の向こう側にいる人たちというのはあくまで「老害芸」であり、ほぼ無害である。庶民が「老害」を目撃するのは、あくまで職場を始めとする各種コミュニティーにおいてだ。

 「老害」を辞書で調べてみると、次のように表記されている。

・「企業や政治の指導者層の高齢化が進み、円滑な世代の交代が行われず、組織の若返りがはばまれる状態」(大辞林)
・「企業や政党などで、中心人物が高齢化しても実権を握りつづけ、若返りが行われていない状態」(デジタル大辞泉)

 「高齢者」が「若返り」を阻んでいることが、もともとの意味だ。一般的には、「自分より年上の嫌いな人、苦手な人」くらいの意味で使われているのではないだろうか。

 しかし、この「老害」だが、具体的に何歳くらいのことを指すのだろう? いま「老害」の概念が変化してきている。いわば「老害」の「若年化」ともいえる問題だ。これを私は「若き老害」と名付けたい。この連載ではこの、職場にはびこる「若き老害」という現象を読み解くことにする。

●なぜ老害の若年化が起こっているのか

 「世代」が細かくなってきている上、世代内での格差も進む。人材マネジメントも変化し、年齢に関係ない抜てきが行われるようになる。一方、仕事の進め方も変化する。会社だってビジネスモデルが変わっていく。結果として「若き老害」たちが出現しているのだ。

 職場における年齢構成の変化、組織内での仕事の任せ方、昇進・昇格のスピード、成果主義の広がり、健康や美容のメソッドの進化――などにより私たちの「加齢」のルールは、変化している。

 単純に年齢と共に成長したり、老いていくわけではなくなっている(もちろん、年齢が物理的に減ることはありえないが)。精神的加齢、肉体的加齢、社会的加齢、組織的加齢のルールが乱れた状態になっていると言えないだろうか。

 それこそ、B'zの稲葉浩志氏やMr.Childrenの桜井和寿氏はいつまであのルックス、芸風なのか。「40男」「中年」のSMAP中居正広氏はいつまで「中居君」と呼ばれるのか。嵐のメンバーも30代にも関わらず「櫻井君」「二宮君」と呼ばれるのは無理がないか――これもまた、「加齢」のルールが崩壊した状況を物語るものである。

 芸能界にはいじりたいネタが他にもいっぱいあるが、この業界というのはあくまで「キャラ」を「演じる」世界だから良い。問題は、職場の件だ。企業においても、加齢のルールは乱れつつある。

 前述したように、人材マネジメントのルールが変わったこと、年齢構成の変化などからである。雇用形態の多様化も影響を与えている。年齢より見た目もやることも若い(下手したら、幼い)人もいる一方で、年齢は若いのに「老害化」している社員が出現している。いわば「若き老害」とも言える人たちだ。

 自らが広義の「ゆとり教育世代」であり言われもない差別や偏見の対象となるにも関わらずさらに少し下の世代を見下す者、上場前に入社したが故にあとから来た社員を見下すベンチャー企業社員、同じく20代の若者が創った会社がそのまま10年くらい時間が経ち、若いオジサンだらけの組織になっている例などだ。

 採用が少ない年に入社したが故に、若い割には出世して、老害と化している場合もある。さらには、企業がビジネスモデルを大きく変更したことで、新しい商品・サービスについていけていない人たちもそうだ。

 これら若き老害たちによくある行動(あるある例)としては、

・自分の小さな成功体験を大きく語り、俺は若い頃凄かったと言い出す(伝説になるのが早すぎ)
・『俺の頃は……』と自分の新人時代を語りだす(勤務し始めて数年であるにも関わらず)
・企画書の書き方を細かく指導する(自分のパワポ技の凄さをアピールする。一方で後輩が色やフォント、アニメを使いすぎると叱りだす)
・自分も成長しなくてはいけない立場なのに「あいつも成長してきたな」的な話をする。

 などだ。あなたの職場にもいないだろうか。

●「老害」に年齢は関係ない

 もともと「若き老害」というのは、TBSラジオ「文化系トークラジオ Life」の中で、私が言い始めた言葉だった。別ルーツ説をあとから聞いたこともあるが、私はそれらの存在を知らず2012年後半くらいから、番組の中で使い始めた。

 若いという言葉と、老害という真逆の言葉をネタにしたわけだ。年齢からすると考えが古く、何でも新しいことをやっているふりをする意識高い系が苦手だったので、こう名乗った。下の世代の壁になり、上の世代にも厳しく当たるという、自分の武闘派の姿勢を物語るものでもある。おかげ様で、私のキャッチフレーズとしては定着し、いくつかの連載のタイトルにもなった。Tシャツまで作って、おかげ様で120枚売れた。プロレスラーやバンドのグッズ並みの売れ行きだった。

 たまにラジオ番組などでは「お前も、もう若くないだろ」という声もいただいたが、「老害業界」の中では最年少くらいなので、それは違うと反論してきた。

 しかし、自分自身、「老害」の概念が変わり始めていることについて、あまりに不勉強だった。私よりもっと若い20代後半から30代前半の「若き老害」も職場に増え始めてる。

 そう。もはや、「老害」に年齢は関係ないのだ。

(常見陽平)

最終更新:8月9日(火)11時35分

ITmedia ビジネスオンライン

TEDカンファレンスのプレゼンテーション動画

地球外生命を宿しているかもしれない1つの惑星と3つの衛星
地球外にも生命はいるのでしょうか?NASA(アメリカ航空宇宙局)の惑星科学部門の部門長であるジェームズ・グリーンと一緒に、地球外生命を宿していそうな場所を太陽系内の中で探してみましょう。 [new]