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IS に、移民問題に 鍵となるトルコの混乱

ニュースソクラ 8月9日(火)16時0分配信

トルコ 政治不安定で経済も苦境

 トルコで発生したクーデター未遂事件の後、エルドアン大統領による強権政治に対して危惧が募っている。

 7月15日に発生したクーデター事件では200名を超える死亡者が出て、反乱軍で7,500名以上の逮捕者が出た。エルドアン大統領の強権政治に対する不満がクーデターの背景であった。そのエルドアン大統領は非常事態宣言を宣言するとともに、クーデターの首謀者は米国在住のギュレン師と名指しして米国に引き渡しを求めた。

 さらに廃止した死刑制度を復活してクーデター首謀者の処刑をほのめかしたほか、教育界、軍、警察、行政官庁などで6万人に及ぶ追放措置を発表した。教育界で2万人、内務省・財務省で1万人程度が職を追われた。

 ギュレン師は、建国の父アタチュルクが導入した「世俗主義」(政教分離により圧倒的な政治力を有したイスラーム教を公の場から消して民主化を図ろうとするもの)とイスラーム教は共存できるとした穏健なギュレン運動を提唱した。

 その同調者はインテリ層に多く、従って大学教員や、軍事的指導者、官僚などに影響力を及ぼしてきた。エルドアンは今回のクーデター未遂事件を奇貨として公共機関から影響力の大きいギュレン支持勢力の排除を目指している。

 既に元大統領のギュル、経済通のババジャン、最近では首相のダウトオールと続々と表舞台から追放した。エルドアンとしては、さらに今回の大規模追放により憲法改正による強権的大統領制への移行をスムーズに進められる環境を整えたいと見られている。

 このようなクーデター未遂事件後のトルコの政治情勢が一段と不安定化することに欧米諸国は強い懸念を示している。6月にイスタンブール国際空港でのISによる自爆テロで40人以上の死者が出た。トルコはシリアのアサド政権と対立を続けている。

 そのため、米国を主体とする有志連合軍のIS空爆に国内の空軍基地の使用を認めている。クルド人勢力との戦闘も泥沼の様相を呈している。アサド政権を支持するロシアとも対立を深めており、昨年11月に領空侵犯のカドでロシア軍機を撃墜してからロシアによるトルコ制裁措置が取られた。このような混乱に加えて目下、国際政治面で注目を集めているのは難民問題でのトルコの対応だ。

 ギリシャで難民認定されなかった移民をトルコが受け入れる一方、その条件としてEUより難民支援基金として60億ユーロを受け入れること、トルコ国民のEU渡航時のビザ免除を実施することになった。もし、トルコの政治が不安定化すれば、国際政治面での重要課題であるIS掃討、欧州の難民問題解決などの努力が水泡に帰すことになる。欧米のメディアが連日大きくトルコ情勢を伝えているのにはこのような背景がある。

 与党の公正発展党(AKP)を創設したエルドアン首相(当時)はトルコ経済の高度成長を導いてきた。しかし、最近では政治情勢の悪化を背景としたインフレ高進、通貨リラの下落などから経済成長は鈍化してきた。米国の格付け機関S&Pは7月20日、投資環境の悪化などからトルコ国債の格付け(外貨建て長期債)をワンノッチ引き下げてBBに引き下げた。投資不適格債の扱いである。

 トルコと日本は親密な経済関係で知られている。経済悪化をもたらす政治的混迷をいち早く脱してもらいたいものだ。

俵 一郎 (国際金融専門家)

最終更新:8月9日(火)16時0分

ニュースソクラ