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子どもを医者にしたいのですが…親の思いだけでなく本人の意思も大切に

ベネッセ 教育情報サイト 8/9(火) 12:01配信

【質問】
夫が内科医で、長男も医者にしたいという思いが強く、猛勉強させています。でも、長男は勉強が好きではなく、特に理数系は苦手です。音楽や運動が好きで、将来その方面に進みたいようです。わたしとしては、子どもには好きな道を進んでほしいという気持ちもありますが、以前流行した勝ち組・負け組という言葉を思い出すと、収入面からもやはり医者を目指させたほうが良いのかと思ったりもします。
(宇宙人ママ さん:小学4年生 男子)

親野先生からのアドバイス

宇宙人ママさん、拝読いたしました。

親として子どもの幸せを願い、勝ち組にさせたいとか、収入も良く安定した仕事に就かせたいという気持ちはよくわかります。今回のご相談では「医者にしたい」ということですが、公務員にしたい、一流企業に入れたい、弁護士にしたいなど、多くの親御さんたちが多かれ少なかれ同じような考え方をしています。でも、親のこういう思いが強くなりすぎると子どもは大変です。子どもの幸せを願ってのことなのに、結果的には子どもを不幸せにしてしまうことがよくあるのです。親の思いだけでなく、本人の意思、性格、才能、向き不向きなども、よくよく考えてあげる必要があると思います。

自分自身でやる気もなく、性格的にも才能的にも向いていない、そういう仕事に就いたとして、果たして幸せでしょうか? たとえそれが、高収入で安定していて、社会的ステータスが高かったとしても、毎日嫌々やっているとしたら幸せとは言えないのではないでしょうか? 私は、医者だから勝ち組だ、弁護士だから勝ち組だ、国家公務員のキャリア組だから勝ち組だ、一流企業に入ったから勝ち組だ、などという分け方自体がおかしいと思います。勝ち組・負け組という言葉は好きではありませんが、あえて使って言うなら、職業によって勝ち組・負け組が決まるのではなく、その職業の中に勝ち組・負け組が存在すると思います。

毎日患者と接するのが苦痛で仕方がないという医者や、依頼者の話を聞くのが好きになれない弁護士では、勝ち組とは言えないでしょう。そういう状態では不幸せですし、努力もできないし成果も上がりません。反対に、世間的にはそれほど高い評価でなくても、本人がやる気満々で、性格的にも才能的にも向いていて、毎日楽しく働いているなら勝ち組と言って良いのです。

そういう状態なら毎日楽しいですし、一生懸命がんばれるので成果も上がります。そうすれば自然に収入アップにもつながります。
そう言うと、「そんなうまくいくとは限らない。そんな簡単なことではない」という声が聞こえてきそうです。親としては収入のことはかなり気になると思いますし、もちろんこれは大事な要素ですから、考慮に入れる必要があります。生活していくためにはある程度の収入は必要ですし、ましてや家族を養っていくことも考えれば疎かにはできないことです。

でも、今の世間は「年収、年収……」と言いすぎると思います。
年収が高ければ幸せというわけでないのです。年収だけが職業選びの唯一の価値になってしまっては判断を誤ると思います。
それに、長男を医者にしたいということですが、今の世の中は先行きが不透明ですから、今良い仕事がずっと良いとは限りません。

聞いたことがあると思いますが、歯医者や弁護士の数が多すぎて年収も下がっているそうです。つい最近のニュースでは、公認会計士の数も多くなりすぎたとのことです。そして、絶対つぶれないと思われていた大企業も、つぶれる時代です。こういったことは、どんな職業にも起こり得ることだと思います。
それに、そもそも子どもの人生は子どものものです。
親の思いを押しつけていると、子どもは自分の人生を自分で主体的に切り開いていくことができなくなります。ずっと親に言われるままに生きてきて、30代で一流企業を退職して自分探しを始めたという人もいます。
私は、子ども自身が自分でやりたいことを見つけて、それに向かってがんばっていくという人生であってほしいと思います。
そういう人は、仕事でもプライベートでも、いつもやりたいことがいっぱいあって、つねに生き生き輝いています。
自分の人生を自分でつくりあげていく、これこそ人間として生きることの価値そのものです。
そこにこそ人間の尊厳があるのです。

私ができる範囲で、精いっぱい提案させていただきました。
少しでもご参考になれば幸いです。
皆さんに幸多かれとお祈り申し上げます。

ベネッセ 教育情報サイト

最終更新:8/9(火) 12:01

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