ここから本文です

「世界初8Kカメラによるロボット支援内視鏡手術の撮影」杉本真樹医師に聞くロボット、テクノロジー

SENSORS 8月9日(火)10時38分配信

NTT東日本関東病院の泌尿器科 杉本真樹医師・泌尿器科部長 志賀淑之医師らのグループは、今年8月上旬、8Kカメラによるロボット支援内視鏡手術の撮影に世界で初めて成功した。手術術式は前立腺がんに対するロボット支援腹腔鏡下根治的前立腺摘除術である。SENSORSでは今までもVRや3Dプリンターを活用する杉本医師を追っていたが、今回医療現場に8K映像が与えるインパクトを伺った。

【元記事】杉本真樹医師に聞くロボット、テクノロジー

注意:施設の倫理委員会と患者の承認を経て取材および資料素材を提供頂いた。

筆者が今まで触れた高精細の“8K スーパーハイビジョン(SHV:Super Hi Vision)“コンテンツはオリンピック中継を代表とする放送業界が提供するエンタメ、報道映像が多かった。SENSORSでも8K笑点について取材をし、この8月からNHKでは8Kコンテンツの試験放送が始まっている。また、デジタルサイネージ業界では8Kは文字が読みやすいので案内板として積極的に利用するとの話も伺ったことがある。今回杉本医師から8Kは医療現場にも大きなインパクトを与えると聞き、詳しく教えてもらうことにした。

8Kが手術効率を高める

--ロボット支援内視鏡手術の8K撮影成功おめでとうございます。そもそもの質問となりますが、8K撮影が医療現場に与えるインパクトを教えてください。

杉本: 医療は一分一秒を争う現場です。外科医は一秒でも早く、出血部位を判断し止血したい。医療はスピードが求められます。また、医療は患者の体に潜むごく僅かながん細胞や腫瘍などを発見し処置するミッションがあります。実際の医療現場では0.01mm単位で精密に患者の病態を把握し、対応することが求められます。 この「素早く患者の細部まで把握し対応する」際に8K高精細カメラがとても重要になります。
既にご存知の方は多いと思いますが現在の医療現場では、患者の体に負担をかけず正確に手術するためにロボットアームが利用できるようになってきています。開腹せずに腫瘍を摘出可能な腹腔鏡手術なども多くの病気で可能になりました。このロボット支援内視鏡手術の際には患者の体内をカメラで撮影、モニターに表示しながら手術を行っていたのですが、今回この映像に8K撮影技術を利用することで手術効率が高まることを実感しました。

--なぜ8K映像が手術効率を高めるのでしょうか?

杉本: いままでのハイビジョン(2K)の画素数は約200万画素(1920×1080)なのですが、8Kの画素数は約3300万画素(7680×4320)なので、圧倒的に解像度が高いのです。これはまるで0.01mmの毛細血管が一本一本、鮮明に把握できるようになるのです。これは何を意味しているかというと、手術のアプローチ方法が変わります。いままでは複雑に重なりあう血管一本一本を把握しきれずに手術中に「出血したら如何に早く止血するか?」が医師に求められていたのですが、一本一本の血管が把握できるようになれば、出血を未然に防ぎながら手術することが可能になります。つまり患者の体への負担が軽減できるようになります。画素数だけではなく色の表現範囲を表す「広色域」も8Kは素晴らしいので、赤のグラデーションが滑らかに見えるようになります。数字で言うとハイビジョン2Kの階調表現が8bit(256段階)なのが、8Kだと12bit(4096段階)なのですが、ロボットでは、赤のグラデーションが肉眼で確認するより鮮明に8K映像として確認できるので、血管と脂肪の境界がくっきりと見えます。がん細胞を取り除く際に、どこまでを切断すれば良いのかなどの判断の正確性に繋がり、無駄な手術操作が少なくなります。

--8Kの魅力として立体的に見えるというのも聞いたことがありますが、このメリットも活かせますか?

杉本: 内視鏡の映像が8Kだと、カメラが離れた位置にあっても広い範囲にフォーカスが合うので, より立体的な奥行きが把握できるようになります。腫瘍の位置や周辺臓器の関係性もしやすくなります。いままでは内視鏡自体を移動して、確認しながら手術していましたが、8Kならカメラの位置を固定してもくっきり広範囲が表示できます。また、内視鏡の鮮明で立体的な映像を手術執刀医とアシスタントなどの全員で大きなモニターで確認できるので、その意味でも確実性が高まります。

1/2ページ

最終更新:8月9日(火)11時53分

SENSORS