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「徳島へ島流しはイヤ」、消費者庁移転は官僚の抵抗で結論3年先送り

ZUU online 8/10(水) 12:40配信

地方創生に向けた政府機関移転の一環として徳島県が提案していた消費者庁移転の可否判断が、3年後に先送りされることになった。政府は試験移転の結果を踏まえて8月末までに判断する方針だったが、官僚の抵抗を突破できず、結論を先送りしたとみられる。

政府機関の地方移転で中央省庁の移転決定は、京都府へ移る文化庁だけ。政府の研究、研修機関も全面移転は2件しかなく、掛け声倒れとの批判が上がっている。地方創生の前に立ちはだかる官僚の壁はあまりにも高かった。

■新拠点を徳島に新設、移転を引き続き検討

「政府機関の地方移転は大変意義がある。(消費者庁移転については)河野太郎前消費者行政担当相の考えをしっかりと受け継いでいく」。内閣改造で新たに就任した松本純消費者担当相は、記者会見でこう打ち出した。

河野前消費者担当相は7月末、消費者庁の全面移転を当面見送り、代わりに消費者庁の新拠点「消費者行政新未来創造オフィス」を徳島県内に新設、引き続き移転について検討していく方針を示した。

松本消費者担当相は会見で8月中に新拠点の基本方針が政府から示されることを明らかにしたうえで、「この3年間で一気に(事態が)進まないかもしれないが、1つひとつ丁寧に(検討作業を)進めていく」と述べた。

また、河野前消費者担当相は退任の会見に臨み「大臣が交代しても方針はぶれない。今後の3年間で外部環境が変わる中、しっかりと作業を進めてほしい」と政府の方針が変わらないことを強調した。

■相次ぐ移転見送りに自治体から反発の声

政府機関の地方移転は、地方創生策の柱の1つとして政府が鳴り物入りで打ち出した。政府機関の一部を地方へ移し、東京一極集中に歯止めをかけるのが目的だ。民間企業の本社機能地方移転や地方移住の推進を呼びかけるのに当たり、政府自らが率先して地方へ移る覚悟を示す狙いも込められていた。

政府が中央省庁や研究、研修機関の移転先を募ったところ、首都圏の1都3県と鹿児島県を除く42道府県から中央省庁7機関を含む合計69機関に対する提案が寄せられた。しかし、研究、研修機関で移転が決まったのは、計23機関にとどまった。

このうち、ほとんどが一部移転や自治体との連携強化。全面移転となると、広島県に移転済みの酒類総合研究所と大阪府が提案した国立健康・栄養研究所だけだった。

中央省庁では、文化庁の京都府移転が決まったが、北海道と兵庫県が提案した観光庁、大阪府と長野県が手を挙げた特許庁、大阪府が誘致を進めた中小企業庁、三重県が希望する気象庁は移転が見送られている。

徳島県が誘致する消費者庁と和歌山県が提案した総務省統計局は、試験移転や人材確保の見通し検討のため、8月末まで結論を先送りするとしていた。

相次ぐ移転見送りに自治体の間から反発の声が続出した。群馬県の笠原寛企画部長(当時)は県議会で「各省庁の本気度はいかがなものか」と疑問の声を上げた。長野県の阿部守一知事は「踏み込んだ対応とならなかったのは大変残念」とのコメントを発表している。

■試験移転でも官僚は問題点を再三強調

徳島県での試験移転は3月と7月にあった。3月は板東久美子長官(当時)ら10人が神山町の神山バレー・サテライトオフィスコンプレックス、7月は板東長官、全9課の課長級ら40人余りが徳島市の徳島県庁で勤務した。

通常の業務をテレワークで進めるだけでなく、ウェブ会議システムで東京・霞が関の消費者庁記者会見室と結び、報道陣とのやり取りを実験した。さらに、徳島市のホテルと東京、鳥取県庁をテレビ会議システムで結び、人や環境に配慮した消費行動「エシカル消費」に関するパネルディスカッションも行った。

しかし、3月の記者会見ではしばしば音声が途絶える深刻なトラブルが発生、東京の報道陣と板東長官の間でスムーズなやり取りができなかった。情報の漏えいを防ぐ保秘システムが未整備なこともあり、板東長官ら官僚側は慎重に言葉を選びながら、移転に問題が多いことを繰り返し強調した。

官僚側の抵抗と歩調を合わせたように、消費者庁の外郭団体や消費者団体が移転阻止を訴える抗議行動を相次いで開催した。国会対応や各省庁との連携が難しく、行政処分の対象となる悪質業者が圧倒的に関東に多いことなど、考えられるありとあらゆる理由を掲げている。

河野前消費者担当相が退任会見で「反対のための反対が相次ぎ、消費者行政と地方創生の中身の議論がなかなかできなかった」というほど抵抗はすさまじかった。官僚にとって徳島はまるで島流しだったのかもしれない。

政府の方針が官僚の抵抗で掛け声倒れに終わるのは、竹下内閣の政府機関地方移転や橋本、小渕、森の3内閣が進めた省庁再編でも見られた。そのたびに政府は国民から強い批判にさらされている。移転判断の3年先送りには、現時点で見送りと結論し、世論の批判を受けるのを避ける思惑が透けて見える。

政府が地方移転の範を示せなかったことで、民間企業の本社機能移転にもブレーキがかかる可能性は否定できない。政府は本気で地方移転を進めようとしたのか、そんな疑問が生じても不思議でないほど今回の地方移転は中途半端な結果に終わった。

高田泰 政治ジャーナリスト
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

最終更新:8/10(水) 12:40

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