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失速するWindows 10 Mobileは生き残れるのか?

ITmedia PC USER 8月10日(水)6時25分配信

 MicrosoftはWindows 10のリリース前に、「2018年度までにWindows 10デバイスの稼働台数を10億台に到達させる」という目標を掲げていた。2016年7月の段階で3億5000万台を突破したものの、このペースでは目標達成が難しいことは同社も認めるところだ。その原因の1つには、Windows 10 Mobileのビジネスにおける誤算がある。

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●Windows 10 Mobileのシェア減少が止まらない

 米IDCが6月1日に発表した調査結果によれば、2016年におけるモバイルOSの出荷台数ベースのシェアは、トップがAndroidで83.7%、次点がiOSで15.3%、そして3位がWindows Phone(Windows Mobile)で0.8%と、既に1%を切っている状態だ。

 AdDuplexが7月20日に公開したWindows Phoneデバイスの最新動向に関するデータによれば、6月時点におけるWindows Phone(Windows Mobile)全体に対するWindows 10 MobileのOSシェアは11.9%しかなく、残りの大部分は79.1%のシェアでWindows Phone 8.1が占めている。

 恐らくはWindows 10 Mobileへのアップグレード対象外となった旧デバイス、それも特にローエンドに近いデバイスの比率が高く、現在のWindows Phone(Windows Mobile)のエコシステムの中心はこの旧デバイスのユーザーが構成しているものと考えられる。

 2014~2015年の時点ではモバイルOS全体のシェアで3%前後を占めていたWindows Phoneだが、シェア減少の原因は2つ考えられる。1つはスマートフォンの販売台数が世界的に伸びているにもかかわらず、Windows Phoneの販売台数が伸びなかったこと。2つ目はMicrosoftの戦略変更により、同社自身がスマホの販売にそれほど熱心ではなくなったことだ。

 AdDuplexのデータによれば、Windows Phone(Windows Mobile)デバイス全体に占めるNokiaおよびMicrosoft製端末のシェアは96.95%と非常に高く、これはサードパーティーによる相次ぐ参入が表明されたWindows 10 Mobile以降でもそれほど変化していない。

 さらに、これらのシェアの大部分は「Lumia 600」シリーズや「Lumia 500」シリーズなどミドルレンジ以下の端末が占めており、競合に比べて安価なモデルを投入することで、ユーザーを獲得する戦略が基となっている。

 実際、この戦略が奏功してイタリアなど特定の国では一時iPhoneのシェアを逆転する現象が見られたのも確かだ。

 一方で、こうした国でもWindows Phone(Windows Mobile)の減少は続いている。Kantar Worldpanel ComTechの最新データによれば、2015年にイタリアで13%のシェアを持っていたWindows Phone(Windows Mobile)は、2016年5月の段階で6%まで急減しており、今後も減少傾向は続くと予想される。

 現在もなお旧OSの動作するデバイスが使い続けられている一方で、買い換えタイミングとなったユーザーのAndroidやiOS(iPhone)への流出が発生しており、これが結果としてWindows 10 Mobileのシェア増加に結びついていないのではないだろうか。

 唯一の例外と呼べるのが日本だ。もともとWindows Phone 8(8.1)でのサードパーティーによる市場参入が停滞し、Microsoft純正であるLumiaの国内展開も行われないままにWindows 10 Mobileでのサードパーティー参入が相次いだことで、一種独特の市場が形成されている。iPhone王国と言われ、Apple製デバイスが市場の過半数を占める日本市場の「ニッチ」に、うまく滑り込めたのかもしれない。

●Windows 10 Mobileのこれから

 Microsoft自身はWindows 10 Mobileの継続サポートを訴えているものの、抜本的なテコ入れ策は期待できないのが現状だ。

 同社の戦略的にも、直接的には利益になりにくいWindows 10 Mobileの普及にリソースを注ぐより、既に市場を確立しているAndroidやiOS向けのアプリやサービスを拡充させ、Microsoft Azureや各種クラウドサービスにユーザーを囲い込んだ方が利益面でもメリットも大きい。

 その意味で、MicrosoftにとってのWindows 10 Mobileは、非常に扱いにくい製品になってしまっていると言える。米Windows Centralの報道によれば、過去1年におけるMicrosoft自身のLumia販売台数が戦略変更以降に急減しており、実質的に同社がハードウェアの開発・販売から手を引き始めているようだ。

 そう遠くないタイミングで世界のWindows 10 Mobile市場は、日本のようにサードパーティー製デバイスが占める状況が再現されるのではないだろうか。

 となると気になるのはウワサの「Surface Phone」だが、仮にこの製品が市場投入されたとしても、宣伝広告塔的な役割の域を出る製品ではないと考えられる。

 現在のMicrosoftの視点は、クラウドを基点にした各モバイルプラットフォームへのサービス提供と、主にエンタープライズ分野でのモバイルニーズ開拓にその主軸が移っている。Windows 10 Mobileはその際の販促ツールの1つであり、「全体としてMicrosoftのサービスやOSが何らかの形で売れればいい」というスタンスだろう。

 デバイス提供元のサードパーティーへの移管とともに発生するとみられる現象が、Windows 10 Mobileデバイスのローエンドとハイエンドへの偏りだ。

 前出のように、現在のWindows Phone(Windows Mobile)市場はミドルレンジ以下、特にローエンドに偏っている。ハイエンドを残すのは高スペックを求めるユーザーが一定層いるほか、「Windows Hello」などの新機能をアピールする必要性によるもので、実質的にローエンドなデバイスが普及のドライバーとなっている。この傾向は今後さらに強くなり、デバイス数でいえばローエンドの層がさらに厚くなっていくと考える。

 もう1つは、これまで存在しなかった「Windows 10 Mobileタブレット」市場の出現だ。2016年春にWindows 10 Mobileのデバイス要件が緩和されて「最大ディスプレイサイズが9型まで許容」されるようになったが、これはIntelがローエンドAtomの市場からの撤退を事実上認めたことで、「今後、安価なWindowsタブレットの市場が消滅に向かうとみられること」へのMicrosoftの対応策だと考えている。

 実際、この動きに呼応するかのように、7型のWindows 10 Mobileタブレットが中国のCUBEというメーカーから発表された。ディスプレイの解像度は1280×720ピクセルと控えめだが、スペックから想定するに、SoCにはSnapdragon 200シリーズを搭載し、本体価格を100~200ドルのレンジに収めているとみられる。

 Windows 10 MobileではPC向けのアプリのほか、Flashコンテンツが使えないという難点があるが、今後はFlash排除の方向性がWeb業界全体として明確に示されており、日本で顕著な「Flash依存サービスの数々」も対応が求められることになるだろう。

 外出先での普段使いには難しくても、自宅の寝室やリビングでもコンテンツの視聴やWebブラウジングなどの用途では重宝するはずだ。7~9型クラスで安価なWindows 10 Mobileタブレットが日本市場に投入される日も、そう遠くないのではないだろうか。

[鈴木淳也(Junya Suzuki),ITmedia]

最終更新:8月10日(水)6時25分

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