ここから本文です

ボカロP×参考書のコラボ 異例のヒット

オリコン 8月13日(土)7時0分配信

 学習参考書『MUSIC STUDY PROJECT ボカロで覚える中学歴史』『~中学理科』が、教育書籍としては異例の大ヒットとなっている。近年、学習教材とエンタテインメントとのコラボレーションの例は多々あるが、教育産業はエンタメとのコラボのどこに魅力を感じているのだろうか。

縄文時代の物語を歌にした「縄文炸裂ガール」(下画像)

■コラボ企画でまず考えるのは「普遍性」

 教育系出版社の最大手である学研プラスが、4月に発売した学習参考書『MUSIC STUDY PROJECT ボカロで覚える中学歴史』『~中学理科』が、累計発行部数32万部突破(7月末現在)と教育書籍としては異例の大ヒットとなっている。

 教科の重要項目を歌詞と映像に盛り込んだ、PV映像付きボカロ曲を各10 曲収録した同書。楽曲の作詞作曲には、小説化や映画化もされた「脳漿炸裂ガール」のれるりり、「イナメトオル」名義でシンガー・ソングライターとしても活動する40mPなど、全12組の人気ボカロPが担当。人気曲の「千本桜」の替え歌も収録されており、PV映像も、ニコニコ動画などで活躍する絵師や動画師が制作している。近年、学習教材とエンタテインメントとのコラボレーションの例は多々あり、今や書店の参考書売り場はアニメ・コミックコーナーさながらの華やかさだ。この背景には少子化という課題に直面した、教育業界の工夫と取り組みが伺える。『ボカロで覚える~』を開発した同社小中学生事業部の八巻明日香氏も、今まで参考書に手を伸ばしたことのない中学生をターゲットに、近年さまざまなエンタメ・コンテンツとのコラボを模索してきたという。

 昨年はアパレルブランドの「CECIL McBEE」とのコラボで“オシャレで可愛い”参考書を開発し、シリーズ3冊合わせて累計発行部数17万部のヒットとなった。そのほか、ディズニーやスター・ウォーズとのコラボによる学習教材も開発している。

「一般に参考書は、価格を高く設定できないため、数年にわたり売れることを想定しています。そのため、コラボを企画するときにまず考えるのは、コンテンツにある程度の普遍性が備わっているかどうかということです。ボカロは、いまや数年前のブームを超え、若い世代に定着したカルチャーとなっていますので、その点においても十分条件を満たしていました。卒業ソングの定番となったボカロ楽曲もあるほどですから」(八巻明日香氏/以下同)

 作詞作曲は、いずれも若い世代に認知度の高いボカロPに依頼。歌詞については盛り込んでほしい用語を伝えつつも、基本的にはボカロPの世界観に任せたという。

「親御さんがお金を出すものなので、度の過ぎた残酷描写やセクシー描写が入らないようにチェックはしました。しかし逆に教材だからと萎縮して、お行儀良くなりすぎるとコンセプトから外れてしまう。中学生たちに「これは自分たちの歌だ」と思ってほしかったので、ボカロPさんの世界観を生かしてどんどんはっちゃけてくださいとお願いしました」

 教材という硬いイメージを覆したスタイリッシュな映像と中毒性あふれた楽曲は、ターゲットである中学生のみならず幅広くボカロファンに刺さり、オリコン“本”ランキングでも総合TOP10入りを果たした。

「最近、芸人のエグスプロージョンさんが「本能寺の変」をネタにされていましたが、中学教科というのは、誰もが共有できる、つまりエンタメにも盛り込みやすい“究極のあるあるネタ”だと思うんですね。また、エンタメの最大の力は、人の心を動かせることにあると思っています。学習もまた、心が動けば意欲も湧くし、暗記モノであれば記憶に残るというメリットがあるので、今後もさまざまな形でエンタメ業界さんのお力を借りられればと考えています」

 多くの要望に応えて、今後はシリーズ続編として数学と英語の発行が決定。また高校生向けの参考書も予定されている。(文/児玉澄子)
(コンフィデンス 16年8月15日号掲載)

最終更新:8月13日(土)7時0分

オリコン