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「日本を超スマート社会に」-経団連・榊原会長に聞く“新・産業革命 ソサエティー5.0の世界”

日刊工業新聞電子版 8月10日(水)12時27分配信

 イノベーションを原動力に、豊かで活力ある未来社会の実現を模索する動きが官民で広がる。取り組みを支える日本発のコンセプト「ソサエティー5.0」の位置付けや、どう実現するかを榊原定征経団連会長ら3人の経済人に聞く。


――経団連は日本版第4次産業革命をソサエティー5.0と称し、21世紀型経済成長をけん引するビッグプロジェクトと位置づけています。どんな未来を描いていますか。

 「ソサエティー5.0は経済発展と社会課題の解決の両立を目指す日本発のコンセプト。IoT(モノのインターネット)やビッグデータ(大量データ)、人工知能(AI)、ロボットといった革新技術を活用し、産業の生産性を高めるとともに日本を超スマート社会に変革する挑戦である」

――ドイツの「インダストリー4.0」など諸外国の戦略との違いは。なぜ「5.0」なのですか。

 「ソサエティー5.0の特徴は、広く経済社会全体を捉え、産業の生産性向上だけでなく、生活の利便性の向上や少子高齢化、環境・エネルギー問題など社会課題の解決を視野に入れた取り組み。欧米のコンセプトに比べスコープが広い。『5.0』か『4.0』かは技術進歩をどんな視点で捉えるかの違い。産業の発展段階で捉える『インダストリー4.0』に対し『ソサエティー5.0』は快適な暮らしの実現に向けた社会の発展段階との位置付けだ。狩猟社会、農耕社会、工業社会、情報社会に次ぐ『第5』の超スマート社会であるから『5.0』と称する」

――実現に向け産業界の「胎動」を感じますか。

 「強く感じる。先月開催された経団連の夏季フォーラムでは各社の取り組みや産学官連携の成果について紹介がなされた。国内企業に閉じない連携や破壊的イノベーションに果敢に挑むことでビジネスチャンスを獲得できるといった議論も深められた」

――経営者からは、オープンイノベーションの重要性や協調領域の戦略的拡大を指摘する声が相次ぎました。

 「同感だ。産学官連携を活性化する戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)や革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)などの取り組みは継続と拡大を求めたい。いずれもソサエティー5.0の実現に寄与する政府研究開発プログラムであり、優れた成果が表れている」

――政府への期待は。

 「まずはソサエティー5.0を、政府が目指す国内総生産(GDP)600兆円実現に向けた成長戦略の中核に位置付けるべきだ。経団連が4月にまとめた提言では、ソサエティー5.0の実現には省庁、法制度、技術、人材、社会受容の『五つの壁』を指摘した。政府はそれら壁の突破に向けた環境整備を求めたい」


【記者の目/規制改革踏み込めるか】

 榊原会長が指摘する「五つの壁」。まず乗り越えなければならないのは省庁の壁だ。ソサエティー5.0が包含するテーマは多岐にわたるため、検討の場もそれだけ多くなる。政府全体の司令塔となる官民会議が設置され近く初会合が開かれるが、分野横断的な施策や規制改革に踏み込めるかがカギとなる。(編集委員・神崎明子)

最終更新:8月10日(水)15時11分

日刊工業新聞電子版