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フィリピン「麻薬戦争」の犠牲、積み上がる死者の山

AFPBB News 8月10日(水)12時14分配信

(c)AFPBB News

【8月10日 AFP】にぎやかな街路では銃で撃たれて倒れた血まみれの人々が放置され、空き地には切断遺体が遺棄されている――ロドリゴ・ドゥテルテ(Rodrigo Duterte)大統領が麻薬撲滅戦争を掲げて就任して以降、増える一方の死者数に、フィリピンのスラム街には恐怖が広がっている。

 ドゥテルテ氏は今年5月、圧倒的支持を得て大統領に選出された。半年以内に社会から麻薬と犯罪を撲滅すると公約し、そのためならば何万人でも犯罪者を殺害すると宣言。実際、ドゥテルテ氏の就任以来すでに数百人が死亡している。

 インターネット上では、テレビカメラの照明の中、血だらけの夫の遺体を抱きしめて泣き叫ぶ若い女性の写真が、人的犠牲を象徴するイメージとして話題を集めた。警察の張った黄色い非常線の向こうから、通行人がこわごわと様子を見守っていた。

 殺害されたのは、三輪タクシーの運転手だったマイケル・シアロン(Michael Siaron)さん(30)。バイクで乗り付けてシアロンさんを射殺した男たちは、ボール紙で雑に作った札に「麻薬密売人」と書き残していった。しかし、「夫は無実だった。誰かを傷つけたことなど一度もなかった」と妻のジェニリン・オライレス(Jennilyn Olayres)さんは強く反発する。

 フィリピンの警察当局は今週、ドゥテルテ大統領が就任宣誓を行った6月末からこれまでに麻薬絡みの容疑者402人を殺害したと発表した。この数字には、自警団とみられる武装グループに殺害された人数は含まれていない。

 一方、フィリピン最大のテレビネットワークABS-CBNによると、5月の大統領選以降に殺害された人数は603人に上り、うち211人が身元不明の武装集団によって殺されたという。

■暗躍する自警団、「メロドラマ」と大統領

 警察は麻薬密売人の地下拠点と疑う場所に次々と一斉摘発を行っており、ほぼ毎晩のように死者が出ている。当局は、血だまりに伏せた容疑者の遺体の傍らには拳銃が転がっているとして、逮捕に抵抗した証拠だと主張している。

 麻薬撲滅運動に同調したとみられる自警団による殺人も後を絶たない。夜、人通りのない通りや空き地で、顔を梱包用テープでぐるぐる巻きにされボール紙製の「麻薬密売人」と書いた札を首から提げた遺体が見つかるケースが相次いでいる。

 ドゥテルテ大統領は就任後初の施政方針演説で、自らの麻薬撲滅運動を擁護。射殺されたシアロンさんを抱き締め嘆き悲しむオライレスさんの写真について、まるで15世紀の芸術家ミケランジェロ(Michelangelo)が彫刻した聖母子像「ピエタ(Pieta)」のようだと評し、十字架にかけられて死んだキリストを抱く聖母マリアになぞらえて「メロドラマ」と形容した。

 オライレスさんによれば、亡くなったシアロンさんも大統領選でドゥテルテ氏に投票した1600万人以上の有権者の一人だったという。

 殺害された人々の妻や親族たちが現場で泣き崩れ失神する中、各地の警察署には続々と麻薬常用者や密売人らが自首してきている。警察発表によると、出頭者の数は56万5806人に上っているという。映像はフィリピン・マニラの路上で射殺されたマイケル・シアロンさんの葬儀など。7月29日撮影。(c)AFPBB News

最終更新:8月10日(水)14時38分

AFPBB News