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九重親方、巨泉氏死去……がんは「治りにくい病気」になりつつあるのか? 罹患した筆者が解説

ZUU online 8/11(木) 11:40配信

2人に1人がかかると言われる「がん」。これは若者から高齢者まですべて含めた平均のため、20代、30代でも2人に1人がかかるという訳ではない。数字のマジックだ。

しかし実は、筆者も5年前に乳がんにかかっている。無事5年を迎えられたことで安堵していたが、担当医からは「一般的にがんにり患して、再発や転移なく5年たてばひと安心といえるのだが、乳がんの場合は10年見なければいけない」と言われ驚いた。

がんにかかった部位により、経過や生存率に差があるということのようだ。そこで、今年の1月に初めて公表された全がん協の最新データ10年相対生存率を活用し、部位別のがんの実態を見ていきたい。

■つきまとう「がん=死」のイメージ

生存率とは、がんの診断から5年や10年など一定期間後に生存している確率のことだ。がんになった部位や病期(ステージ)、また年齢や性別によっても違いがある。

最近でも九重親方(元横綱・千代の富士)や大橋巨泉氏など有名人の訃報がクローズアップされることもあり、「がん=死」だと思う方もいるかもしれない。

だが、「全国がん(成人病)センター協議会の調査」によると、がんの5年相対生存率(2006年から08年診断症例)は男女計62.1%だ。前回(2003年から05年診断症例)に比べて3.5ポイント上昇している。

■10年生存率に見える「がん」の部位別特徴とは

10年相対生存率(1999年から2002年診断症例)は男女計58.2%。5年相対生存率とほぼ変わりなく6割と意外と高い。

だが2つの生存率を比べることで、同じステージでも部位別生存率に違いがあることが分かる。

筆者が患った乳がんは、「国立がん研究センターがん対策情報センターがんの統計2015」によると女性の罹患数で1位だが、死亡数では5位となっている。

早期のがんであるステージⅠの場合、10年生存率が93.5%と治りやすいがんだといえるが、がんが最も進行しているステージⅣの場合には、5年生存率32.6%のところ10年生存率は15.6%。乳がんは目に見えないような小さな転移をしている可能性があることから全身病とも言われている。やはり10年間しっかりと観察が必要ながんのようだ。

同じように、10年間の観察が必要だと思われるのが肝臓がんだ。肝臓がんは男性に多く、早期発見と言われるステージⅠでも5年生存率57.3%、10年生存率は29.3%と5年を経過しても進行しやすい。ステージⅣともなると5年生存率4.0%、10年生存率は2.5%。ステージが進むとほぼ助からないがんだ。

ただ健康診断で予兆が発見されやすいという特徴がある。脂肪肝など指摘された場合には暴飲暴食に気を付け、毎年の健康診断を欠かさないようにすることで、がんを未然に防ぐことができるだろう。

また健診を受けても早期発見が難しく、進行が速いのが「すい臓がん」だ。ステージⅠの5年生存率は40.5%だが、10年生存率は29.6%で、診断から5年後も観察が必要だ。

またステージⅣの場合は5年生存率1.6%、10年生存率は0.9%、かなり治りにくいがんといえる。ただ急な血糖値の悪化など、体調の変化により早期にがんが見つかる場合もあるようだ。身体の声をしっかり聞くことができれば、治る病気にできるかもしれない。

■やはりがんは治りにくいのか

死亡率が男女ともに1位から3位に入る肺がん、胃がん、大腸がんの場合、早期発見のステージⅠだと5年生存率は順に82.9%、97.2%、99.0%となっており、治るがんと考えられる。

10年生存率を見ても、順に69.3%、95.1%、96.8%となっており、5年と10年に大きな差はないように見受けられる。再発や転移がなければ、5年を経過すれば比較的安心できるがんと言えそうだ。

ただ、ステージⅠからⅡ、ⅡからⅢと進むにつれ、生存率が下がるのは否めない。早期発見ががんを治る病気にする秘訣のようだ。

また原因を事前に知ることで、がんを未然に防ぐこともできるのではないだろうか。肺がんは喫煙が大きなリスクとなっており、胃がんはピロリ菌などの感染が原因と言われている。

生活している地域によっても罹患率に差があるようで、塩分の摂取量が多い東北地方では、胃がんになる人が多いようだ。大腸がんについては、食生活や便秘なども原因の一つだが、乳がんや卵巣がんと共に遺伝による影響も大きい。

■国が集計、分析、管理する「がん登録制度」開始

2016年1月から、国内でがんと診断されたすべての人のデータを国で1つにまとめて集計、分析、管理する「がん登録制度」が始まった。

詳細なデータが膨大に集まり、今後の治療の参考やがんになる原因を知るきっかけになるだろう。

医療の進歩は目覚ましい。今できない治療が明日承認されるかもしれない。「線虫」を使い、尿が発する“におい”によって早期のがんを見つけるという研究も進んでいる。大げさな検査をせずとも早期発見ができるようになれば、ますます「がんは治る病気」になるだろう。

一昔前なら治らなかったような状況でも、治ることのある病気になりつつある「がん」。がんと上手く付き合うことを考え、日頃から仕事やお金に向き合っておくことが重要だ。


辻本 ゆか(CFPR) おふたりさまの暮らしとお金アドバイザー 
大手金融機関にて個人向け営業に従事。その後、乳がんを発症した経験から、備えることの大切さを伝える活動を始める。現在は、子どものいないご夫婦やシングルの方への相談業務も行っている。FP Cafe登録FP

最終更新:8/11(木) 11:40

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