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【フェラーリ凋落を問う(1)】開幕戦のポテンシャルはどこへ──独創性を欠いた今季のマシン

オートスポーツweb 8月11日(木)10時0分配信

 フェラーリは大きな期待と新しいデザイン哲学をもって、2016年シーズンをスタートさせた。しかし、今となってはその地位だけでなく、そのキーパーソンであったテクニカルディレクターをも失った。そして今や2番手の地位もレッドブルに奪われ、昨年以下のパフォーマンスに成り下がってしまった。いったい、今年のフェラーリの何がいけなかったのか。そしてこの状況を好転させられることはできるのだろうか。

 2014年にシーズンで1勝もできないという21年ぶりのどん底を経験した後、フェラーリは組織改革を敢行し、ここ2年の成績は上昇傾向にあった。その流れで今シーズンはライバルたちとトップを争えると予想され、勝利、さらにはチャンピオンシップ獲得に向けて邁進していたのは間違いない。

 しかしながら、今年のフェラーリは残念ながらメルセデスのパフォーマンスレベルには到底、達していない。その上で、フェラーリ会長であるセルジオ・マルキオンネがチームに結果を求めているため、マラネロのスタッフたちにのしかかるプレッシャーは高まっている。

 ハンガリーGPでは、2台のフェラーリは宿敵レッドブルの後塵を拝し、また王者メルセデスのペースには遠く及ばなかった。そして、さらに悪い流れが続いて、テクニカルディレクターであるジェームス・アリソンの即時離脱が発表されることになった。

 2014の暗黒時代から、改革後の新しいフェラーリ、そしてその改革を経た現在のフェラーリは、いったいどこで歯車が狂ってしまったのだろうか。まずは、ここまで近年のフェラーリの体制を振り返ってみたい。
 ミハエル・シューマッハ、ジャン・トッド、ロス・ブラウン、それにロリー・バーンがフェラーリの中心を支配していた時代が終わってから、チームは組織内で人材を育成し、昇進させようとする体制にシフトした。これによりチームの中に連続性が生まれ、フェラーリは2007年と2008年にコンストラクターズ・タイトルを獲得。しかし、その翌年から赤い跳ね馬の勢いは衰えていく。

 フェラーリにまったく競争力がなかったとまでは言わないが、今では2台のマシンは常に新リーダーであるレッドブルの後塵を拝すことになった。そんな状況でも、当時フェラーリのドライバーだったフェルナンド・アロンソは2010年と2012年にドライバーズ・タイトル獲得まで、あと一歩というパフォーマンスを見せた。

 V8自然吸気エンジン時代の終盤にはエキゾースト・ブローイング技術の開発に失敗し、現行の複雑怪奇なV6ターボパワーユニットに転換したときには、またしても開発の方向性を見誤った。

 2013年の終わりにロータスから引き抜かれたアリソンは、スタッフを変えるだけでなく、その働き方をも変えるなど、フェラーリ内の技術開発の方向性に変化をもたらした。この改革の一環として、2015年の終わりにはジョック・クレアがメルセデスから移籍してきた。

 今年のマシンであるS16-Hは、ここ数年で最も独創性を欠いたマシンだと言える。前時代的で内向的なコンセプトを拒否しつつ、エアロ、サスペンション、そしてパワートレインのパッケージングにグリッドに並んだ他のマシンの要素を多く取り入れている。

 理論上では、このマシンのデザインが非常にコンペティティブであることは折り紙つきだった。実際、プレ・シーズンテストと開幕戦メルボルンでのパフォーマンスから、今年のフェラーリは勝利を争えるのでは、と期待されていた。

 今年のマシンが前年型と大きく異なっていることは誰もが理解していたため、熟成にはより多くの時間がかかるだろうと予想されていた。しかし、2年間の研究開発により、開発曲線は既に緩やかになっており、フェラーリはライバルよりも多くのポテンシャルを秘めていたと言えた。

 SF16-HはSF15-T譲りのタイヤへの優しさを継承していながら、より多くのダウンフォースとパワーを獲得することができた。そして前年型よりも燃費とエネルギーの回生効率がよいパワートレインを得る一方で、キミ・ライコネンが好むようなフロントの鋭い回頭制を実現している。

 しかし、ターボに関する初期トラブルが相次いでいることは、フェラーリが信頼性確保のためにパワーユニットの出力を下げていることを意味する。低い出力で走らざるを得ないことで、メルセデスとの距離は縮まらないままになってしまった。
(第2回へ続く)

[オートスポーツweb ]

最終更新:8月11日(木)12時2分

オートスポーツweb