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「再考」はあっても「後退」は考えられぬ世界の主要中銀

Bloomberg 8月10日(水)16時35分配信

このごろあれこれと思案を巡らす主要国・地域のセントラルバンカーにとって唯一、思い描くことがないのは「後退」の一言だろう。

日本銀行の黒田東彦総裁のケースを考えてみよう。いずれの主要中銀よりも、リフレのための非伝統的な刺激策の領域に踏み込んだ日銀は、薄れつつある政策効果についての「総括的な検証」を行うことにしたが、黒田総裁は9月の金融政策決定会合で緩和縮小の結論を下すことだけはないとしている。

米カンザスシティー連銀が今月終盤、ワイオミング州ジャクソンホールで開催する年次シンポジウムでも、同じような難問について世界のセントラルバンカーらが議論を交わすことになるだろう。

各国政府は、過去数年にわたり成長を制約してきた財政緊縮策を見直しつつあるが、日本や欧州はおろか、米国についても財政面からの景気てこ入れはせいぜい小幅なものにとどまり、長期的な解決には力不足となりそうだ。その結果、各国・地域の中銀は自らが講じている刺激策の拡充を引き続き迫られることになる。

HSBCバンクのグローバル・チーフエコノミスト、ジャネット・ヘンリー氏(ロンドン在勤)は「セントラルバンカーは過度の負担を強いられていることに髪の毛をかきむしり、構造改革の必要性を強調しているが、さじを投げたと受け止められてはならないことを分かっている」と指摘。政策当局者は「あらゆる手を尽くしたとのシグナルを発することに細心の注意を払う必要がある」と語った。

こうした指摘の背景の1つには、中銀が緩和の手綱を緩めているとの感触を得れば、市場が敏感に反応することが挙げられる。7月21日には黒田総裁が「ヘリコプターマネー」を否定していたと報じられ、円相場が急伸した例などが想起される。

もう1つには、当局者として失敗を認めることができないという事情がある。

日銀は2%のインフレ目標達成に向け、バランスシートを国内総生産(GDP)の80%余りに拡大。この数字は、同様に量的緩和(QE)を実施した米連邦準備制度や欧州中央銀行(ECB)を大きく上回る。

黒田総裁の下での日銀のデフレ脱却の取り組みは当初、一定の成果があったが、2014年の消費税率引き上げの影響が弱まり、原油相場が下落基調をたどり始めると日本の消費者物価指数(CPI)は伸び悩み、今年に入ってはおおむね低下の傾向にある。

原題:Rethink Won’t Mean Retreat for Central Banks Chained to Stimulus(抜粋)

Christopher Condon, Jeff Black

最終更新:8月10日(水)16時35分

Bloomberg