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【柔道女子】70キロ級金メダル・田知本遥 恩師がくれた「不動心」

東スポWeb 8月12日(金)7時1分配信

【ブラジル・リオデジャネイロ発】女子70キロ級の田知本遥(26=ALSOK)が金メダルを獲得。女子初の金メダルとなった。世界の頂点に立ったが、下馬評は決して高かったわけではない。しかし、五輪にかける秘めた思いは熱くほとばしっていた。

 決勝でアルベアル(コロンビア)に合わせ技で一本勝ちした田知本は「ロンドンの悔しさを返せた。充実した日になりました」と会心の笑みを浮かべた。

 7位に終わったロンドン五輪後の2014年、やりがいを見いだせず、一度は引退を覚悟。大会に優勝して現役を続行したが、昨年2月の国際大会でドーピング規定違反となる市販の風邪薬を服用するミスを犯す。全日本柔道連盟から警告処分を受けた田知本は「五輪を口に出せない。夢さえ持てない」と絶望の淵をさまよった。さらに今年4月、姉の愛(27=ALSOK)がリオ切符を逃す。田知本は気持ちを切り替えることができない。市販薬騒動でドン底にいた時、寄り添ってくれたのも姉だった。

 そんな時、支えてくれたのは東海大の恩師・佐藤宣践氏(72)だ。田知本は「不動心」と書かれた色紙を手渡された。これで迷いは吹き飛んだ。その後、通っていた治療院で偶然、松井秀喜氏(42)の著書「不動心」を発見する。発売時に一度、読んでいた田知本は「改めて読むと松井さんの言葉が響いてくる。共感できる部分があった。自分の感じていることが書かれていた」。

 自分の柔道を貫くことが、田知本の「不動心」だった。ロンドン後、取り組んできたのは練習メニュー、日程を自分自身で考えること。外国人に対抗するためには筋力を強化した。「お姉さんが出れなくていろいろ悩んどったからね。姉妹で出たいという夢があったから。でも、そういうものを断ち切って、自分のことだけをもう一度考えて『不動心』という気持ちでやってごらんという気持ちで色紙を渡したんです」。佐藤氏の願いはしっかりと届いた。

 騒動で指導不十分として自身も処分を受けた女子代表・南條充寿監督(44)は「薬の件があって、そこから人間的に成長した。それまでは勝てばいいでしょ、という行動が見られたが(騒動後に)これからが評価だという話をしたら、涙を流して聞き入っていた」と振り返る。苦難を乗り越え、金メダルを手繰り寄せた。

☆たちもと・はるか=1990年8月3日生まれ。富山県出身。7歳から柔道を始め、小杉高時代から国際大会で活躍。東海大では2011年世界選手権(3回戦敗退)、12年ロンドン五輪に出場(7位)。13年世界選手権にも出場(初戦敗退)。姉の田知本愛は78キロ超級のトップ選手。得意技は大内刈り。168センチ。

最終更新:8月12日(金)7時17分

東スポWeb