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選手もツイート・シェア禁止? 「アンブッシュ」マーケティングはオリンピックの終わりの始まりか

ZUU online 8/12(金) 18:41配信

日本人勢のメダルラッシュで盛り上がりをリオオリンピック。そして盛り上がる東京オリンピック・パラリンピックへの準備と期待。オリンピックは依然としてサッカー・ワールドカップと並ぶ世界最大のイベントだ。だがこれに水を差す事件が起こっている。

■オリンピック選手でさえツイートは禁止?

米国オリンピック委員会(USOC)は開幕したリオオリンピックの開催前に、オリンピックにまつわる企業のソーシャルメディア投稿を禁止したと報じられた。

一部選手のスポンサー企業などに宛てた通知では、ゲームの結果をつぶやいたり、IOCなどの公式アカウントの発言をリツイート、シェアしたりすることも禁じたという。オリンピックなどの用語やハッシュタグはUSOCが米国で商標登録(ちなみに「Tokyo2020」も商標登録されている)。

選手を応援するツイートなどでこれらのガイドラインに抵触すると、最悪ではメダルはく奪もある、と警告されている。これに選手の一部が猛反発し、有名選手の批判ツイートなども飛びかった。7種競技のケリー・サザートン選手は「自分のスポンサーから『グッド・ラック』と言われただけで失格するかもしれなくて、薬物使用はOKなのか?」と皮肉交じりでツイートしたほどだ。

■公式スポンサーの権利はもっともだが……

オリンピックの公式スポンサー契約は数百億円単位といわれて、開催までの複数年契約だと数千億円にのぼる。当然そのような高額なスポンサー料を払えるのは、コカコールやマクドナルド、VISAなど世界的な大企業に限られている。

これらのスポンサー企業は基本的には1業種1社に限られており、オリンピックの商標である名称やロゴの使用はもちろん、それらを連想させる広告やマーケティング活動で独占的に使用する権利を持っている。東京オリンピックも同様に、非公式企業の便乗商法への対応は非常に厳しい。

東京五輪組織委員会の方針によると、東京2020大会におけるスポンサーは、オリンピック・パラリンピックに関する商標やロゴの知的財産の使用権の見返りとして、多額の協賛金を拠出しており、この資金が、大会の安定的な運営及び日本代表選手団の選手強化における大きな財源となっている。

オリンピック・パラリンピックマークなどの無断使用、不正使用ないし流用は「アンブッシュ・マーケティング」と呼ばれ、IOC、IPC等の知的財産権を侵害するばかりでなく、スポンサーからの協賛金などの減収を招き、大会の運営や選手強化等にも重大な支障をきたす可能性がある--としている。

■アンブッシュ・マーケティングは徹底的に取り締まる

アンブッシュとは「待ち伏せ」意味で、オリンピックやワールドカップなどのイベントにおいて、公式スポンサー契約を結んでいないものが無断でロゴなどを使用したり、メディアや会場の周辺で便乗して行なったりする便乗商法や便乗広告を指す。

この方針と通達を受けて、JOC(日本オリンピック委員会)が便乗商法の疑いに関するリストを各所に通知した。それに基づいて、広告審査機構(JARO)はアンブッシュ・マーケティングとなる恐れがあると懸念している表現例を公表している。

・東京オリンピック・パラリンピックを応援しています。
・祝2020年開催
・祝2020年オリンピック・パラリンピック開催決定
・2020年にはばたく子供たちを応援
・東京で未来の夢を実現
・オリンピック開催記念セール
・2020円キャンペーン
・祝・夢の祭典
・祝・東京決定!
・7年後の選手を応援しています
・「東京」「2020年」の使用(セット・単体ともに)

ご覧のように、アウトになる表現例は非常に広範囲に及んでいる。

■JAROは腰が引けている?

JAROにはすでに、さまざまな業種の広告主から問い合わせが寄せられているという。日本では知的財産権への理解は進んでおり、無断で「オリンピック」にまつわる直接的な文言やオリンピックマークを使用してはいけないことは大半の事業者に認識されている。

だからこそ、JOCやIOC(国際オリンピック委員会)から使用の差し止め要請や損害賠償請求を受けるリスクをできるだけ避けて、「直接的な文言を使用せずになんとか東京開催決定を祝う表現を入れることはできないか」というのが相談の主な趣旨である。

結論からいえば、いかなる文言を使用しようとも、これらのガイドラインに抵触しそうな表現はアンブッシュ・マーケティングに該当するおそれがあると判断されかねない。

だがこのガイドラインのポイントは、単に使用する文言のみでオリンピックを想起させるかどうかを判断するわけではなく、タイミングや状況などから総合的に判断されるとされている点だ。

例えば「おめでとう東京」といった表現は、東京でのオリンピック開催が決定した直後では問題となったが、1年後や2年後に同じ表現が問題となるかどうかはわからない。判断が恣意的になされる可能性がある。はたして、誰がどうやって判断するのだろう?

だが考えてみると、IOC やJOCもオリンピックは世界最大のスポーツの祭典としているにも関わらず、それを祝ったり応援したりすることすらも禁止するのは行き過ぎではないだろうか。特にガイドラインの「東京」「2020年」の使用をセット・単体ともに抵触の可能性あり、というのはいくら何でも厳しずぎる。無理筋だ。総合的に判断するといわれても普通、「2020年だけで危ない」とはならないだろう。

これらは使用権の侵害や訴訟リスクを最大限に避けるためのJAROの過敏な対応と思われる。要は腰が引けているのだ。JAROに問い合わせてみても明確な回答は得られないだろう。応援はもちろんいけない。祝うのも駄目。東京で夢を実現なんてもってのほか。そう言われれば人々はオリンピックにまつわる表現や、極端な話、ツイートさえも避けるだろう。

■「シェア型」に変わるべき

1984年のロサンゼルス大会から本格化したオリンピックの商業利用。これはいかに「オリンピック」という巨大なブランドをマーケティングするかということだった。だがそのモデルは20世紀の「囲い込み型」であり、急速に発達したSNSに代表される「シェア型」という現代にはあわなくなってきている。

このままいけば、オリンピックは公式スポンサーだけのものになってしまい、誰にも歓迎されないものになってしまいかねない。

今からでも遅くはない。東京オリンピックではいまの時代にふさわしい情報の拡散と体験・感動のシェアを志向するべきだ。いまどきバズられないイベントなど価値はないだろう。

実はロンドンでもリオでもIOCの要請により、アンブッシュ・マーケティング規制法を時限立法で作っている。これが通常の知的財産権よりも強いオリンピックの表現への規制が行われている。

これから日本でもこのような時限立法が議論される可能性があるが、過剰な制限によって、場合によっては肝心のイベントとしての盛り上がりを削ぎ、期待されている経済波及効果をも押し下げかねない。(ZUU online 編集部)

最終更新:8/15(月) 10:44

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