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リターン40%のファンド戦略……個人投資家が学べるポイントとは?

ZUU online 8/12(金) 19:09配信

右を見ても左を見ても、先進国はどこも低金利。投資先に悩みながら世界情勢を眺める投資家は少なく無いだろう。低金利かつ不安定な相場の中で、40%のリターンを出すファンドがあると聞けば、個人投資家も使える手法か気になるところ。高リターンを出す「ターム・プレミアム」戦略を紹介しよう。

■ヘッジファンドのパフォーマンスは年々下がっている

専門調査会社ユーリカヘッジによると、2016年のヘッジファンドのパフォーマンスは6月までで1.02%。2013年の9.23%から、2014年の4.82%、2015年の1.63%と年々低下傾向にあることが分かる世界的にリスクオフで債券が買われる一方で、株式のパフォーマンスがさえないことが主因だ。 ヘッジファンドは運用フィーが2%程度と高いこともあり、運用成績の悪いヘッジファンドは解約が増えているようだ。

運用難の中、今年上半期(1-6月)のヘッジファンド運用成績ランキングで、シンガポールのクオンテッジ・キャピタルグループのヘッジファンドが注目を集めている。クオンテッジ・グローバル・ファンドという一般的にはまだまだ無名のファンドが40%のリターンを上げているのだという。6月単月で12%のリターンを上げているのだ。

■リターン40%のファンドの正体とは?

クオンテッジ・グローバル・ファンドは、基本的にマクロ系のクオンツモデルのヘッジファンドだ。クオンツモデルとは、金融工学や数理学をつかってコンピュータによるシステムトレードをするファンドだ。様々なコモディティ、先物などのデリバティブを駆使しているようで、CTA(商品投資顧問)とも言えるだろう。同社は2006年にシンガポールで設立、ポートフォリオ・マネジメントを大学で教えていた教授や、元保険数理士が運用している。投資対象であるユニバース(組み入れ候補の銘柄の集合)は、債券・株・商品のデリバティブなど広範囲に及び、160の商品に投資できるようになっている。1銘柄は5%以下にすることで、分散投資を計っているようだ。

ヘッジファンド・リサーチ(HFR)によれば、類似した戦略を対象とするHFRIマクロ・システマティック・ダイバーシファイド指数は6月に4.4%上昇、年初来で4.5%上げている。ヘッジファンドの戦略の中では、パフォーマンスが悪くないものだが、クオンテッジのリターンはずば抜けている。

同社はポジションの詳細は公表していないが、様々なポジションを持つ中で、今年の好成績をたたき出したのは、ターム・プレミアム戦略のようだ、と顧客向けの運用報告書の中で答えている。高リスクの長期債を買い持ちにしつつ、短期債を売り持ちにする戦略が奏功しているようだ。

■「ターム・プレミアム」戦略とは?

この戦略は基本的には、短期債と長期債利回りの金利差(スプレッド)の拡大、縮小に賭ける取引だ。

具体的に円債で説明しよう。マイナス金利導入前である2015年末、短期債(3ヶ月)の利回りは-0.04%程度、長期債(10年)の利回りは0.27%程度だった。そのスプレッドは0.31%だ。

0.27- (-0.04) =0.31

現在短期債は-0.28%程度、長期債は-0.18%程度まで低下しており、そのスプレッドは0.10%まで縮小している。

-0.18 -(-0.28) =0.10

「ターム・プレミアム」とは、長期債を保有するときに上乗せされる金利のことを指す。そこで、短期債と長期債を残存期間と最終利回りで表した、イールドカーブがどうなるかに投資するのが「ターム・プレミアム」戦略である。表し方としては、フラット化(寝る)、スティープ化(立つ)というのだが、「 寝る」「立つ」というのはグラフの曲線が寝ているか、立っているかを意味している。

今回で言えば、金利差が0.31%から0.10%と小さくなったので、イールドカーブがフラット化したということになる。フラットに賭けたポジションをもっていれば、利益となる。クオンテッジはこういったトレードを様々な国の債券でやっていたと考えられる。

仕組みは簡単だが、クオンテッジのパフォーマンスからすると、かなりのレバレッジを賭けていることが想像できる。では、個人でもターム・プレミアム戦略を実践することは出来るのだろうか?

■個人に応用するなら、長期債投資が理にかなう?

イールドカープの動きに賭けることは個人でも出来る。ただ詳細で説明したとおり、現在だと、スプレッドが縮小してせいぜい0.2%程度。デリバティブを駆使して、レバレッジを賭けないと40%もの利回りを達成することは難しいだろう。金利のデリバティブに投資するには資金量も必要であり、期日もあるので個人向けとはいいづらい。 リターンが高くなる可能性がある分、リスクも大きい。

実際、クオンテッジでさえ、ファンドのボラティリティは開示されているだけでも、かなり高い。2015年の同社のパフォーマンスはマイナス18%、特にアジア通貨危機の様相を示した2015年8月には月間で16%の下落となっている。それが今年は40%のリターンと考えれば、かなりのボラティリティだ。 もちろん、2016年上半期は世界市場の動きが激しかったので、その情勢に同ファンドの戦略が、うまくはまったということがあるだろう。

個人が参考にできるとしたら、Brexitのような不透明感が広がる場面だろう。リスクオフで株が売られ、債券が買われる局面が続くなら、超長期国債や低格付の国や企業の長期債券を買うことが、ターム・プレミアム戦略に近い考え方になる。通常、長い目で見る単価値上がりまでの期間が、買い注文が集まることで短くなるため、債券価格が安い状態で年限の長い債券に投資することが、ターム・プレミアム戦略の考え方に沿うからだ。

ただ、格付けの低い国や企業はデフォルト・リスクも高く、流動性も低い。すでに長期債の利回りも低下傾向だ。また、超長期国債などは直接個人が購入できないため、投信などで持つことになる。ただ、個人が安易に勝負するような戦略ではないことは、肝に銘じておきたい。 基本的には、債権利回りがマイナスまで低下している状況だと、株を長期で買うことの方が投資原則にはかなっている。


平田和生(ひらた かずお)
慶應義塾大学卒業後、証券会社の国際部で日本株の小型株アナリスト、デリバティブトレーダーとして活躍。ロンドン駐在後、外資系証券に転籍。国内外機関投資家、ヘッジファンドなどへ、日本株トップセールストレーダーとして、市場分析、銘柄推奨などの運用アドバイスをおこなう。現在は、主に個人向けに資産運用をアドバイスしている。

最終更新:8/12(金) 19:09

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