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【漢字トリビア】「山」の成り立ち物語

TOKYO FM+ 8/12(金) 11:50配信

「漢字」、一文字一文字には、先人たちのどんな想いが込められているのか。時空を超えて、その成り立ちを探るTOKYO FMの「感じて、漢字の世界」。今回の漢字は「山」。八月十一日は、新たな国民の祝日「山の日」。山に親しみ、山の恩恵に感謝するこの日、全国各地の山で記念行事が行われました。今回は「山」に込められた物語を紹介します。

「山」という漢字は、高い山々が連なる形を描いた象形文字。
中国にある山の多くは地殻変動や水の浸食によってできたため、「山」といえば通常は峰が連なった形のことを示します。
たとえば富士山のように高い山がひとつそびえ立つのではなく、山々が左右に連なっている形が「山」という漢字になりました。

日本は、山が国土のおよそ七割を占める「山の国」。
山はいつもそこに横たわり、ふもとの人間を見下ろしています。
遠く凍てつく冬の山、芽吹きを抱く春の山。
青葉が茂るにぎやかな夏、豊かな実りを連れてくる秋。
死と再生を永遠にくりかえす山に、いのちの巡りをつかさどる神々が降り立ちます。
清らかな雪解け水、美しい玉や石、獣に果実、きのこに薬草。
山は、畏れを感じて仰ぎ見るものであると同時に、その懐に分け入れば、さまざまな恵みを与えてもくれます。
そのお礼にと、人々は山で祭祀芸能を奉納しました。
山で精神を鍛錬し霊力を身につけた者たちが、里の人々を救済する「修験道」は、日本独特の山岳信仰の形です。
「やまと(大和・倭)」という日本の呼び名がありますが、これは「やまひと」、つまり「山の人」を意味するという説もあるようです。

ではここで、もう一度「山」という字を感じてみてください。

朝、東の山の端から輝く太陽を生み放ち、夕方には西の山の端に呑み込んで、翌日にまた、生み放つ。
いにしえの人々は、その力強い姿に感銘をうけて、「山」という文字を手元に刻みつけたことでしょう。
日々、山へ向かって手をあわせた彼らの想いは、ご来光に思わず手をあわせる私たちに受け継がれています。
今年から国民の祝日になった「山の日」。
敬虔な気持ちで山を遠くながめるもよし、山道を踏みしめ、いのちのうごめきを感じるもよし。
私たちはみな、山に育てられてきた山の子・山の人なのだと、あらためて思い出す機会です。

漢字は、三千年以上前の人々からのメッセージ。
その想いを受けとって、感じてみたら……、
ほら、今日一日が違って見えるはず。


*参考文献
『常用字解 第二版』(白川静/著 平凡社)
『山岳信仰 日本文化の根底を探る』(鈴木正祟/著 中公新書)
『山岳信仰と日本人』(安田喜憲/著 NTT出版)
『山の霊力 日本人はそこに何を見たか』(町田宗鳳/著 講談社選書メチエ)

(TOKYO FMの番組「感じて、漢字の世界」2016年8月6日放送より)

最終更新:8/12(金) 11:50

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