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「東京五輪への推薦状」第23回:「オレを呼べ!!」U-19代表止めた静学の異色守護神・山ノ井拓己

ゲキサカ 8月12日(金)21時44分配信

 2020年東京五輪まであと4年。東京五輪男子サッカー競技への出場資格を持つ1997年生まれ以降の「東京五輪世代」において、代表未招集の注目選手たちをピックアップ

 SBSカップ国際ユースサッカーの“伝統戦”とも言うべきU-19日本代表と静岡ユースの試合が8月12日、愛鷹広域公園多目的競技場で開催された。後半のアディショナルタイムに入る中で、スコアボードに浮かぶ数字は1-1。PK戦濃厚の中で静岡ベンチは、山ノ井拓己(静岡学園高)をピッチに送り出した。

 静岡の守護神は「『え?』というか、むしろ『PK頑張れよ!』と思っていたので驚いた。正直、準備はしていなかった」と言いつつ、「燃えましたね。直接戦えるチャンスが来たわけですから」と不敵に微笑んだ。

 燃える視線の先にいたのはU-19代表のGK廣末陸(青森山田高)。高校年代ナンバー1のGKと言われる男に対して、山ノ井が持つ気持ちは並々ならぬものがある。自分も同じく1年生から強豪校の守護神として活躍し、実力的にも決して劣っていないという自負がありながら、評価されるのは常に廣末。一緒に練習したのは1年生のときに参加したナショナルGKキャンプのみだが、そこから大きくステップアップしていった廣末に対して、山ノ井に代表からお呼びが掛かることはなかった。

 運もなかった。今年の頭には日本高校サッカー選抜の候補合宿に呼ばれたのだが、「まさかのインフルエンザ」(山ノ井)で辞退を余儀なくされ、アピールの絶好機を失った。「あっち(青森山田)はプレミアなんで直接やる機会もない」と悶々としながら、迎えたSBSカップ。ターゲットは最初から「廣末」である。ところが、第1戦で先発した山ノ井は、ローテーション起用によって第2戦をベンチで迎えることになってしまったのだ。

「もうショックでした。むしろ『他は出られなくていいから日本戦だけでも出してくれよ!』という気持ちだったし、ここで(自分の力を)見せてやろうと思っていたんですけれど……」

 第1戦でPKを1本も止められなかったという事実も悔しさを増幅した。「プレーは良かったんですけれど」と振り返るように好守を連発したが、「PKを1本も止められないようでは」と悔恨の残る出来。それを日本戦にぶつけたかったというのが隠せぬ本音だった。ただ、その熱すぎる気持ちは首脳陣に伝わっていたのかもしれない。PK濃厚の流れとなると、即座に声が掛かった。

「止めなかったら今日の飯は抜きだからな」

 僚友の愛(?)にあふれた声に押されつつ、「飯がないのは嫌だったんですよ」と、U-19日本代表のPK一番手キッカー、FW岩崎悠人(京都橘高)のシュートをストップ。「相手のエースなので、これを止めればチーム的にもガックリ来ると思っていた」という読みどおりに、2番手の名手・針谷岳晃(昌平高)もキックミス。軍配は静岡に上がった。

 日の丸への思いは熱いものがある。リオ五輪の大舞台に静岡学園の大先輩・大島僚太が立っていたことも「めちゃくちゃ刺激になった」と言う山ノ井は、「とにかく一度だけでいいから呼んでみてほしい」と力説する。「呼ばれてそこでダメだったらダメでいいんです。でも同じ舞台で比べてみてほしい。やれる自信はあります」と断言して、自分の推薦状を自分で書きかねない勢いだった。

 圧倒的勝負強さを評価されるビッグセーバーであり、味方に勇気を与えるコーチングも光る守護神は、課題と言われる筋力面についても「伸びしろを残しているということ」とポジティブに解釈。中距離のパスを使ったビルドアップなどプレーのディテールを突き詰めながらレベルアップを図り、「お呼び」が掛かる日を待っている。

 前向き精神の塊のような守護神は、「プロのほうが絶対に成長できるし、大島さんみたいになれる可能性があるのは、プロ」と進路も強気の一択。東京五輪についても「歴史に名を刻めるチャンスだし、あると思っている」と語るユニークな男は、最後にあらためて「ぜひ一度呼んでくださいとお伝えください」と自らをプッシュすることを忘れなかった。

執筆者紹介:川端暁彦
 サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』元編集長。2004年の『エル・ゴラッソ』創刊以前から育成年代を中心とした取材活動を行ってきた。現在はフリーランスの編集者兼ライターとして活動し、各種媒体に寄稿。著書『Jの新人』(東邦出版)。

最終更新:8月12日(金)21時47分

ゲキサカ

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