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「伊藤忠の会計に不適切な部分がある」と指摘した米国ファンド「グラウカス」とは

ZUU online 8/13(土) 12:10配信

「伊藤忠商事の決算書において一部不適切会計がある」--。

米国のグラウカス・リサーチグループが7月27日レポートを公開し、「伊藤忠商事は会計上一部不適切な部分があり、昨年に日本にて不正会計問題が発覚した東芝のように、財務報告訂正を行う必要がでてくる可能性がある」との見解を述べた。

これにより同日株価は1136円となり、年初来最安値を更新した。

伊藤忠は同社Webサイト上で、「弊社は適切に会計処理を行っており、会計監査法人の承認も得ている。そのためグラウカスとは見解が異なる」というリリースを出しており、抗戦の構えだ。

今回はこの指摘された「不適切会計」の内容とグラウカスの正体に迫ってみる。

■問題となった「不適切会計」とは?

今回の分析において約40ページに渡るグラウカスの分析レポートが公開されているので、内容を見ていきたい。

問題とされているのは投資に関係する会計だ。一つ目がコロンビアにおける炭鉱事業の持分だ。こちらは出資先のジョイントベンチャー契約と呼ばれる、合弁会社(複数の企業が資本を出し合い設立した会社)設立における区分を不適切に変更したということで指摘されている。

一方で伊藤忠はIRにて「14年度に行われた契約見直しにより承認権が消失したため区分変更を行った」という主張を行っている。

2点目が中国の政府系である中国中心集団CITICにおける業務資本提携においてコチラを連結会計に取り込むことにより、収益を20%過大評価したという指摘である。

また3点目が中国の食品および流通企業「頂新」の持分区分を変更することにより特別利益発生を行ったタイミングが疑問だ、という指摘だ。この部分に関しても伊藤忠は「14年度に持分を一部売却し、株主間の協定書も改定を行ったため適切な区分変更だ」という意見を述べている。

これらを見ると分かるように、いずれの部分も投資に関する区分変更と、それに伴う収益の増減であり、伊藤忠商事の本業ビジネスに与える影響は限定的だ。また伊藤忠商事も「会計に関しては「監査法人トーマツより(今回指摘された部分も含めてすべて)適正だという評価を出されている」と主張している。

またBloombergが発行したニュースリリースによると、グラウカス以外の証券アナリストも「(市場の反応は)一時的なものであると考えられる。指摘された部分は解釈の問題であり、不正な会計処理であるとまではいえないと感じる」という旨のコメントを残している。

■狙いは「信用棄損による値下がり?」空売りファンド「グラウカス」

そもそも今回レポートを発行した「グラウカス」とはいかなる集団なのか。

「グラウカス・リサーチ・グループ」は米国の投資ファンドで、行う投資手法は「空売り」だ。

信用取引により空売り(株価が下がったほうが儲かる)ポジションを取り、収益を挙げる。今回の伊藤忠のように「会計上問題がある」と思われる企業を探し出して売りを仕掛け、レポートの公開や株主総会での問題提起を行うことで株価を下げ、収益を出すというスキームだ。

こういった手法は金融商品取引法において制定されている「風説の流布」に抵触する可能性もあり、非常に厳しい目線にさらされている。

風説の流布とは「合理的根拠のない情報により有価証券の価格を変動させる」行為を指し、法人等の代表者や従業員などが違反した場合、7億円以下の罰金刑が課せられる。

米国などでは近年、SNSなどにより風説の流布を行い株価操縦をすることが問題視されており、こういった手法が日本に「輸入」されてきた形だ。

今回の場合、レポートによる指摘が「合理的根拠があるのかないのか」という非常にグレーな部分が総論の対象となり、会計問題の“見解”を述べただけだと主張されれば強くは出にくい。

またこういった「厳しい目で会社会計を分析する」という団体が目を光らせることで、経営者が不正会計を行いにくくなるというプラスの要因もあるため、一概に悪とは言い切れない部分もあり、問題は複雑だ。

伊藤忠の問題がどういった形で決着するにせよ、「不正会計の監視役」が日本に上陸したことで、いままでの「グレー」だった会計手法を明朗化し、自浄作用を強化するきっかけとなる企業もでてくるだろう。今後の流れに注目したい。


土居 亮規 AFP、バタフライファイナンシャルパートナーズ

最終更新:8/13(土) 12:10

ZUU online

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