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初心者でも楽しめる、意外と知らない「山小屋」の世界

TOKYO FM+ 8/13(土) 12:00配信

今年2016年から、8月11日が「山の日」として祝日になりました。そこで今回は、山を楽しむための「山小屋」最新情報をご紹介。クルマで行ける手軽な山小屋から、断崖絶壁に建っている秘境の山小屋、温泉もある山小屋に料理がおいしい山小屋……そんなさまざまな「山小屋」の魅力を、TOKYO FMの番組の中で詳しい方々に教えてもらいました。

◆「山小屋に泊まらないと見えない風景がある!」
~モデル 仲川希良さん

山小屋は主に山の途中で休憩に使ったり、宿泊したりできる施設です。山の麓で山登りする前日に泊まるのも山小屋ですね。何かあったときに駆け込んで非難するための避難小屋もあります。大部屋に布団を並べて寝るような山小屋もありますが、初めての人は個室のところのほうが気が楽かもしれません。

中には600人も泊まれるような山小屋もあります。長野県の北アルプスは燕岳(つばくろだけ)にある「燕山荘」というのですが、その標高は2700m。ご飯もちゃんと陶器の器で食べられますし、ケーキフェアも開かれたりします。でも周囲はアルプスの山々という、なかなか体験できない世界です。

燕山荘のある標高2700mまでは自分で歩いて登るしかありません。一生懸命テクテクと上がっていって「着いたー!」という嬉しさと共に、燕山荘での一晩を楽しみます。燕山荘へ登っていく途中にも「合戦小屋」という山小屋があって、夏になるとスイカを出しているので、ここで水分とエネルギーを補給してから上を目指すのが定番です。

山小屋に泊まるのなら、ぜひ山の朝と夜を体験してください。山は日が暮れると危険なので、基本的に明るい内に下山しなければいけません。でも山小屋に泊まれば、日が暮れていったり夜が明けていく山を体験できます。私は山小屋に泊まるときに歯磨きを外でやるのが大好きです。本当に美しい星空が見られますよ。

それから山小屋は本棚もポイントです。山小屋は長時間過ごす人のために本棚が充実しているところが多いのですが、そこに玄人好みの山岳誌やいろんな人のルポが並んでいたりします。すごくお洒落な画集だったり、読み古したマンガだったり、山小屋によって個性があります。

初めての人におすすめするなら北八ヶ岳の「高見石小屋」。一番早いルートなら2時間ほど豊かな苔の森を散策すると着くので、小屋デビューにはピッタリだと思います。ここは揚げパンがとても美味しいので、それ目当てで行きたいくらい。そしてテラスから眺める星空は最高です。


◆「クルマで行ける山小屋から断崖絶壁の山小屋まで」
~山と溪谷社「ワンダーフォーゲル」編集長 吉野徳生さん

日本には全国で約650軒の山小屋があると言われています。大きく分けると「営業小屋」と「無人小屋」の2種類があって、営業小屋は旅館と同じように泊まれる山小屋、無人小屋は誰もいないので自分で寝袋や食事を用意する山小屋です。営業小屋が350軒くらい、無人小屋が300軒くらいなので、だいたい半々ですね。

経験の浅い人でも比較的行きやすいのは長野県の霧ヶ峰です。八ヶ岳の近くですが、山そのものが険しくないので散歩気分で歩けます。その霧ヶ峰にある山小屋が「ヒュッテ・ジャヴェル」。普通のペンションのような雰囲気でゆっくりと泊まれる山小屋で、歩かずにクルマで行けるのも初めての人には良いと思います。

難易度は高くなりますが北アルプスの「北穂高小屋」は眺めが抜群です。ここは北穂高岳(3106m)の山頂のすぐ下にある山小屋で、断崖絶壁に張り付くように建っています。それでもちゃんと食事も出て、布団で寝られる山小屋です。食材や機材はヘリコプターで運んでいます。

一方、神奈川県の丹沢にある「鍋割山荘」は登山用語で歩荷(ぼっか)といって、数十kgの物資をご主人の草野さんが毎日担いで運んでいます。ここの名物は鍋焼きうどん。皆さん、ランチで食べていきます。鍋割山は標高も高くないので初心者でも登りやすいでしょう。

山小屋に泊まる場合は事前に予約をしましょう。そうすれば山小屋はちゃんとしたサービスを提供できますし、登山者も現地の最新情報を得ることができます。もし全国の山小屋情報をネットで調べようと思ったら「ヤマケイオンライン」をご活用ください。万が一のときに救援を呼べる携帯電話が繋がるかどうかなどの詳細情報も掲載されています。

山小屋のマナーとしてはコンビニ袋を使わないこと。朝、暗いうちから準備を始めて夜明けと共に出発する人もいますが、その時間はまだ寝ている人もいます。そのときにコンビニ袋のガサガサという音はけっこう響くんです。小物を分けて入れるなら専用のスタッフバッグをお使いください。


◆「強風や豪雪に耐える山小屋の構造とは」
~信州大学工学部建築学科教授 土本俊和さん

山は平らな土地がなかなか得にくいので、平らな部分をつなぎ合わせるようにして山小屋を造ったりします。最初は狭くても平らな場所を見つけて、小さな建物を造るところから始まるケースが多いでしょう。石を積んで平らにして土台を造ることもあります。昔は「掘立柱(ほったてばしら)」といって、柱を地面に突き刺して建てていました。

また山小屋は雪や風に耐えるために太い材を使ったり、柱を多めに入れたり、とても丈夫に造られています。金物で補強したり、外側に斜めのつっかえ棒を付けたり、ワイヤーで岩に固定したり、いろんな補強方法がありますが、山小屋にとって特に厳しいのは雪崩です。どんなに補強しても雪崩には耐えきれずに流されてしまうこともあります。

基礎をしっかり造らないと不同沈下といって地面のほうが暴れてしまい、上の建物がグニャグニャになってしまいます。それで基礎工事をやりすぎると「山小屋じゃない」なんて言われたりもしますが、長期的に見たらそのほうが良いのは間違いありません。地面の変形のしかたも平地より山のほうが早いと思います。

明治以降、日本で近代登山が普及し始めたときに、スイスやオーストリアで見たアルプスの山小屋に憧れる人が多かったようで、ヨーロッパ風の山小屋が数多く造られました。下が石積みで上が木造の山小屋がそのタイプです。ログハウス系の山小屋も欧米にはありますが、湿気でやられやすいのか日本ではめずらしいと思います。それから山小屋の屋根に赤が多いのは、霧が掛かっても登山者が見つけやすいとか、ヘリから見ても認識しやすいという利点があるからです。

立山の「室堂小屋」は重要文化財に指定されたほどの歴史的建造物です。棟木(むなぎ)という地面から一番高いところにある水平材を柱が直に支える「棟持柱(むなもちばしら)」という構造は伊勢神宮と同じ。さらに「総柱建て」といって、しかるべき場所にすべて柱があります。これらは雪の重さに耐えるための構造だったと考えられます。

(TOKYO FMの番組「ピートのふしぎなガレージ」2016年8月6日放送より)

最終更新:8/13(土) 12:00

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