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【プレミア開幕展望】マンチェスター・C 真のビッグクラブへカリスマ指揮官の改革に注目

SOCCER KING 8/13(土) 20:38配信

 マンチェスター・シティにとって、待ちに待ったシーズンだ。元バルセロナのチキ・ベギリスタインとフェラン・ソリアーノをフロントに入閣させ、“根回し”を始めた2012年からの悲願がようやく実を結び、とうとう念願だったペップ・グアルディオラがクラブにやってきたのである。

 ペップに求められるのはタイトル獲得だけでなく、攻撃的で美しく、斬新かつ革新的なフットボールをピッチで表現することだ。バルサとバイエルンがそうだったように、世界中のファンの視線と関心をこのチームに集め、マンチェスターからプレミア全体、ひいてはフットボール界全体に波及するような“革命”を起こすことを、クラブは期待している。資金力があり、ただ強いだけでなく、誰もが夢中になるような真のビッグクラブに成長していくために、希代のカリスマ監督は呼び寄せられたのだ。

 今夏のプレシーズンマッチを見ると、前線の選手が以前よりも積極的にフォアチェックをかけるようになり、ボールを失ったら即座に奪い返しにいくトランジションの速さや、ショートパスを駆使して丁寧にボールを回し、試合を組み立てる姿勢などが意識づけられているのがよくわかる。チームはすでにグアルディオラの色に変わりつつある。

 とはいえ、バイエルン戦(0-1)、ドルトムント戦(1-1)、アーセナル戦(2-3)と、強豪ばかりと戦ったテストマッチではまだまだイージーミスが多く見られ、内容も結果もイマイチだった。“穏健派”で練習も戦術もシンプルだったマウリシオ・ペジェグリーニ前監督の指導に慣れていた選手たちは、ハードかつ緻密な新監督の指示や戦術、トレーニングにまだ適応しきれていない印象だ。

 グアルディオラ自身も、就任から日が浅く、しかもユーロ2016の影響で主力選手の合流時期がバラバラだったこともあり、まだ現有戦力に最も適したシステムや起用法を決めかねている節がある。ひとまずはテストマッチで主に採用した4-3-3と4-2-3-1をベースに戦うことになりそうだが、一方で新機軸の3-4-2-1を試した試合もあり、開幕後も様々な実験をしていくことになるだろう。

 個々の選手起用についても同様だ。左サイドバックのアレクサンドル・コラロフやセントラルMFのフェルナンドをセンターバックで試すなど、さっそく“ペップ流”の片鱗が見てとれる。練習ではファビアン・デルフもセンターバックでプレーしているようだし、ヤヤ・トゥーレもバルサ時代にこの位置を経験済み。開幕後もアッと驚くコンバートがありそうで、その中で大きく化ける選手が出てくるかもしれない。

 ただ、新体制で守備陣の軸になっていくのはジョン・ストーンズで決まりだろう。お隣の赤いクラブがワールドレコードの移籍金でポール・ポグバを獲得した数時間後、シティもまた、プレミアのDFで歴代最高額となる4750万ポンドでエヴァートンから22歳のイングランド代表センターバックと6年契約を交わした。シティの声明にあったフレーズを借りるなら、彼は「21世紀のボールプレー型センターバック」。凡ミスが散見する守備は改善の余地ありだが、自陣から攻撃の第一歩となるくさびのパスを出す能力はプレミア屈指で、ドリブルでの持ち運びも含めて他のイングランド人DFにはない近代的な資質を持っている。まだ若く守備は向上できるし、現時点でも守備のミスで失点が1つ増えたところで、彼を起点に始まる攻撃で得点が2つ、3つと増えることをペップは信じている。主将のヴァンサン・コンパニが故障がち、ニコラス・オタメンディやエリアキム・マンガラが真価を発揮できずにいる守備陣で、新鋭がどんな影響力を発揮するか注目だ。

 ストーンズ以外の新戦力を見渡しても、ここまでの補強はまずまず順調といえる。昨季終盤に負ったケガの影響で開幕には間に合わないのは残念だが、ペップと相思相愛でドルトムントから加わったドイツ代表の司令塔イルカイ・ギュンドアンはポゼッションサッカーのキーマンになるだろう。スペイン代表FWノリートも、バルサ時代に師事したペップの哲学をスムーズに体現できる存在だ。さらにシャルケから獲得したドイツの逸材レロイ・ザネが若さとスピードで攻撃陣を活性化し、来年1月からは「神童」と呼ばれ、現在はリオ五輪にも参加しているブラジル人アタッカーのガブリエウ・ジェズスの合流も“内定済み”である。

 金満クラブにしては、やや地味に映るニューフェイスたちかもしれない。それに「足技に長けたGK」「アグエロに次ぐスコアラー」など、他にもアップデートしたい領域があるのも事実だろう。ノリート以外はテストマッチなしで開幕に臨むため、それぞれ適応に時間を要するおそれもある。それでも、未来を見据えた若手を多く見出し、意図や目的も明確で“名より実”の選手補強はグアルディオラらしく、彼ら新加入組が攻撃の二枚看板であるセルヒオ・アグエロとダビド・シルバを助け、ケヴィン・デ・ブライネやラヒーム・スターリングのさらなる成長を促す刺激剤になれば面白い。

 実際、レギュラーの座をめぐる競争は熾烈である。主力の座を約束された選手はアグエロとシルバ、それに「10のポジションをこなせる」と指揮官に柔軟性を絶賛されてお気に入りとなったフェルナンジーニョくらいか。残りの選手たちは、数年以内にチャンピオンズリーグ優勝という究極目標に向けてペップが思い描くプロジェクトに相応しい選手であることを、この1シーズンでしっかり証明しなければいけない。その緊張感がうまく作用し、選手個々の成長や戦術理解のスピードが加速すれば、新生シティの理想型は案外早いうちに見られるかもしれない。

 ただ、過度な期待は禁物だ。今季はあくまでも、改革の始まりとなる1年である。いきなり欧州制覇を「ノルマ」にできるほど完成度の高いチームになるとは思えず、新体制1年目のターゲットとしてより現実的なのはプレミアリーグの王座奪還だろう。

 そのプレミアでは、開幕戦からサンダーランド、ストーク、ウェストハムといわゆる“プレミアらしい”古典的だがパワフルなチームとの連戦が組まれている。ここでイングランド・フットボールの洗礼を浴びることになるか、それともペップが持ち前の戦術眼を発揮してこれを退けるのか、その行く末が楽しみだ。

「私はプレミアリーグがどれほどハードかわかっている。私がやりたいフットボールを、イングランドでやるのが難しいと言う人がいるのも知っている。だが、私はこう自問自答する。『それがどうした? トライしたいから、私はここにいるんだろ?』ってね」

 黒船のごとくプレミアリーグにやってきた革命家はそう語り、新たな挑戦に確固たる自信をのぞかせている。

(記事/Footmedia)

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最終更新:8/13(土) 20:38

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