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「幻の貨物新幹線」半世紀残った遺構、来年にも見納めに 東京~大阪5時間半

乗りものニュース 8月14日(日)14時18分配信

北海道がより近かった可能性

 もし、新幹線に貨物列車があったら、東京と北海道・函館の距離はもっと近かったかもしれません。

【画像】地図にも載っている「幻の貨物新幹線」

 2016年3月に新青森駅から新函館北斗駅まで開業した北海道新幹線では、「新幹線」と「貨物列車」が大きな課題になっています。本州と北海道を結ぶ青函トンネル付近で、新幹線と在来線の貨物列車が線路を共用していることから、新幹線はその風圧がすれ違う貨物列車に影響を与えないよう、同トンネル付近で減速運転(140km/h)せねばなりません。つまり、新幹線が“本来の能力”を発揮できていないからです。

「貨物新幹線」があれば、こうした問題は発生しなかったかもしれません。ですがいまも昔も、新幹線に貨物列車は走っていません。

 しかし昭和30年代に「新幹線」が開発された当初、「貨物新幹線」も計画されていました。そしていまもなお、その痕跡が大阪府摂津市内に残っています。

 区間にすると、東海道新幹線の京都~新大阪間です。新幹線の高架橋が一部分だけ盛り上がるように、コンクリートの構造物が設けられています。これが「貨物新幹線計画」の遺構です。

 列車が高速で通過する「本線」と、そこから分岐し、貨物ターミナル駅へ向かう線路を立体交差させるための構造物で、ごくかんたんにいえば「本線から貨物ターミナルへ向かうジャンクションの一部」です。この“ジャンクション”の先には、実際に「貨物新幹線ターミナル」設置を想定した土地も確保されていました。

具体的に計画されていた「貨物新幹線」、その内容

「東京・大阪間の到達時分は、急行旅客において概ね3時間、貨物において概ね5時間30分を目標とすること」

「新幹線」の誕生へつながる、1958(昭和33)年に日本国有鉄道幹線調査会が運輸大臣へ出した答申書には、このように「貨物新幹線」に関する計画が盛り込まれました。そして以後、実現に向け次のような構想が練られていきます。

・新幹線の高速性能を生かし、“箱”単位で輸送する「コンテナ方式」、またはトラックやトレーラーをそのまま列車に乗せる「ピギーバック方式」にする。
・30両編成(電車方式)で最高速度150km/h。東京~大阪間の所要時間は5時間半。
・旅客列車と競合しないよう、東京と大阪を22時以降に発車。翌朝5時までに到着させる。
・線路保守の作業時間を確保するため、週に1回運休する。
・貨物駅は東京と静岡、名古屋、大阪の4か所。

 そして、東海道新幹線の開業翌年である1965(昭和40)年から、東京~大阪間で1日あたり3往復の「貨物新幹線」運行を予定して、用地の買収など具体的な準備を進める段階にまでなります。しかし、東海道新幹線の旅客輸送量が予想を上回り、夜間の保守作業が毎日必要になるなど状況が変化。「いつの間にか貨物列車計画は立ち消えに」(公益財団法人 交通協力会『新幹線50年史』)なってしまいました。また、東京新聞が2013年に報じたところによると、インフレによる東海道新幹線の建設費増大も「断念」の理由とされています。

 もしこのとき「貨物新幹線」が実現していたら、北海道新幹線の状況は現在と変わっていたかもしれません。「夜間運転」「最高速度150km/h」という当初の条件のままでは解決は難しいですが、「貨物新幹線」に半世紀の歴史があったとしたら、また違ったことにもなるでしょう。

 先述した“ジャンクション”の遺構は、このとき確保された大阪の「貨物新幹線ターミナル」へ向かうため、造られたものです。ターミナル設置が予定されていた場所は現在、在来線の大阪貨物ターミナル駅(大阪府摂津市)として利用されています。

 また東京で確保されていたターミナル用地は品川区にあり、その後、東海道新幹線の大井車両基地、在来線の東京貨物ターミナル駅として活用されました。

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最終更新:8月15日(月)23時31分

乗りものニュース

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