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【プレミア開幕展望】チェルシー 知将コンテを迎えチーム再建に向けた第一歩を踏み出す

SOCCER KING 8月14日(日)16時56分配信

 昨季リーグ10位。これはプレミアリーグ前年王者の歴代ワースト順位であり、また4度の優勝を経験してきたロマン・アブラモヴィッチ買収後のチェルシーにとって最低成績でもあった。完全に失墜した権威と勝者のメンタリティーを、何としてでも取り戻さなければいけない。そのための切り札として白羽の矢を立てられたのが、アントニオ・コンテだった。

「アズーリの選手たちは、彼に“ゴッドファーザー”というあだ名を付けていた。彼が話すということは、選手は聞かなければいけないということ。言われた通りのことをやって、口答えをしてはいけない。ただ、選手たちは彼の言葉を聞きたがっていたけれどね」

 コンテの監督像をそう説明するのは、ユヴェントスとイタリア代表でコンテに師事したレオナルド・ボヌッチだ。規律を重んじ、選手には問答無用で戦う姿勢を厳しく求め、常に「相手に嫌がられるチームであれ」と熱っぽく説く。チェルシーが「憎たらしいほど強い」と言われたかつての姿を取り戻すために、うってつけのチョイスと言えよう。

 セリエAでユーヴェを3連覇に導き、この夏のユーロでは「史上最弱」と言われたタレント不足のアズーリを率いてスペインを撃破し、ドイツと互角の戦いを演じられるチームを作りあげた当代屈指の戦術家は、ロンドンでも即座に影響力を発揮している。プレシーズンマッチで積極的に試したのが、イングランド風に言えば中盤フラットの「4-4-2」だが、実質的には攻撃時に両翼が大胆に高い位置を取る「4-2-4」という新システム。サイドアタック重視のアグレッシブなこの布陣は、コンテが指導者として名を上げたシエナ時代からのこだわりで、新天地でもまずはこの理想型を追求することになる。

 そのキーマンとなるのが、王者レスターに3200万ポンドを支払って引き抜いたフランス代表MFエンゴロ・カンテだろう。指揮官が直々に口説き落とし、「すぐにチェルシーの中盤に欠かせない選手になるはずだ」と豪語する小柄なボランチは、無尽蔵のスタミナと機動力でピッチ上のどこにでも顔を出し、昨季プレミア最多のタックル数とインターセプト数をマークした縁の下の力持ち。エデン・アザール、ウィリアン、ペドロ・ロドリゲスのウインガー陣がこれまでより攻撃に比重を置く「4-2-4」では中盤の「2」がピッチの広範囲をカバーする必要が生じるため、カンテはまさに“コンテ流”に必要不可欠な存在なのだ。

 加えて、FWにはジエゴ・コスタの相棒役としてミヒー・バチュアイがやってきた。マルセイユから獲得したベルギー代表ストライカーは、かつて同じルートを辿ったディディエ・ドログバのように、最前線で基準点となれる選手。カンテ同様、こちらも3300万ポンドと移籍金は決して安くなかったが、コンテは思い描くチーム構成に必要な人材を、ここまでピンポイントに獲得している印象だ。

 ただし、この2人に続くビッグディールが聞こえてこない。まだ8月末まで時間はあるとはいえ、開幕直前になってもアルバロ・モラタやラジャ・ナインゴラン、カリドゥ・クリバリに、前述のボヌッチまで、コンテがセリエAで見てきた“意中の男”たちの獲得には至っておらず、ベストな補強ができているとは言えないのが現状だ。長身のセントラルMFルベン・ロフタス・チークや、快足ウインガーのベルトラン・トラオレを2トップの一角で試すなど工夫を凝らしているものの、今のチェルシーは4-2-4を貫くにはいささか戦力バランスが悪い。そのため、テストマッチではセスク・ファブレガスやオスカルといった既存戦力がプレーしやすい従来型の「4-2-3-1」も試運転しており、現時点ではそちらの方がチーム全体の収まりがいい。当面は2つのシステムを併用しながら戦っていくことになりそうだ。

 とはいえ、就任会見で自らを「テーラー(仕立て屋)」と称したコンテは、「選手の個性を尊重しつつ、クラブに相応しいドレスを用意したい」と抱負を語ったように、ただ選手を自分の型に当てはめるだけの指導者ではない。理想を追いつつも抱える選手の適性に応じて微調整を重ね、最終的にはチームにピッタリの最適解を見つけ出す。そんな卓越した戦術眼と柔軟性を持ち合わせた指揮官だ。その過程で4-2-4を諦めるかもしれないし、ユーヴェとアズーリで最終的に採用した3バックを試す可能性だってあるだろう。特に今シーズンの前半戦は、トライ&エラーの連続になるかもしれない。

 それでも、すでにコンテ流のベースは見えている。スタートの形が「4-2-4」「4-2-3-1」のどちらであろうと、局面に応じて最終ラインが3枚、4枚、5枚と自在に可変し、ボールを持てば後方でつなぎながら、鋭い縦パスを合図にワンタッチ、ツータッチのコンビネーションでスピーディーに崩しきる。そんな基本のアプローチは形が見えてきている。

 プレシーズン終盤のテストマッチでは、レアル・マドリード戦(2-3負)、ミラン戦(3-1勝)、ブレーメン戦(4-2勝)と撃ち合いのゲームが多く、守備に関しては指揮官も「改善の余地あり」と認めている。だが一方で、随所に見られた素早く、かつ迫力のあるアタックには手応えを語っており、概ね満足している様子だ。

 また、選手たちのコメントを見ても、意欲的にコンテの教えに取り組んでいる様子が伝わってくる。

「戦術練習は緻密だし、フィジカルトレーニングはハード。これまでとは次元が違う。これまでの常識は通用しない。全セクションで100%の力が要求されるんだ」

 これはバチュアイのコメントだが、他の選手たちも似たような声を残しており、ハードでも明確にやりたいサッカーの方向性が提示されているからこそ、選手たちはやりがいを感じられるのだろう。もはやジョゼ・モウリーニョ体制末期からあったような“マンネリ感”や暗いムードは一掃され、身振り手振りをまじえたコンテの熱血指導やイチからの健全なポジション争いも含め、チームに漂ういい意味での緊張感が感じ取れる。

 それだけでも、昨季の1年間で完全に空中分解してしまったチームを再建する第一歩としては上出来だろう。ユヴェントスでも、アズーリでもそうだったように、メンバー構成やシステムを試行錯誤する時期が少なからず必要だから、鮮烈なスタートダッシュは見られないかもしれない。それでも、「まだ小さな火かもしれないが、轟々たる炎にしていきたい」というコンテの言葉通り、チームに“青い火”はたしかに灯ったし、燃え上がる準備はできている。

 欧州カップ戦がない新政権1年目。まずはトップ4返り咲き、あわよくばタイトルレース参戦が、新生チェルシーの目標である。

(記事/Footmedia)

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最終更新:8月15日(月)16時28分

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