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なぜ、外国によくある「超巨大看板」は日本で見かけないのか

ITmedia ニュース 8月15日(月)8時43分配信

 大きな広告看板のことを「ビルボード」と呼びます。それをさらに大きくし、ビルの壁面を丸ごと覆うようなものを「ビルラッピング」とも呼ぶのをご存知でしょうか。今回は、ビルを丸ごとラッピングするほどの巨大広告の印刷と、海外で見つけたビルラッピングのちょっと違った使い方などを紹介したいと思います。

【画像】超巨大看板と対比すると人がアリのよう

●おとなり中国は建物もでかければ広告もでかい

 やはり人口世界一(13億人)の中国は看板も大きいです。北京や上海、大連などの都市を歩いていても、印刷された看板のサイズには目を見張るものが多いです。横幅20メートル、高さ10メートルの看板が多く見られるほか、ビル一棟が丸ごと映像ビジョンになっている大迫力なものも存在します。

 のぼり旗のサイズも7メートルを超えるものもあり、日本では考えられない高さです。これは2階建ての家の屋根の高さに相当し、ただ地面に「置く」という感覚ではなさそうですね。

 ただ、このような巨大印刷物は、最初から巨大な姿で生まれるわけではありません。巨大印刷物の印刷幅は5メートルが最大。つまり、幅5メートルで印刷したものをつなぎ合わせて、1枚の大きな広告幕を作っているのです。

 しかし、横幅が何十メートルにもおよぶ看板の印刷に用いるのに、なぜ印刷幅は最大5メートルなのでしょう。それは、印刷する素材の最大幅が5メートルのロール素材(巻物)だからです。しかも最近では、この巨大広告に使う印刷素材の主流は3.2メートルや1.3メートル程度に狭くなってきています。

 なぜ印刷素材の幅が狭くなってきているのか――それは、素材製造と、何より運搬が大変だからです。海外で見かける巨大広告は、コストや効率性を考慮しながら作られていることが分かりますね。

●日本であまり見かけないビルラッピング その理由は……?

 日本でも最近、「痛車」のようなカーラッピングや「トレインラッピング」と呼ばれる電車の車体広告を見かけることが多くなってきました。しかし、先ほど紹介したビルラッピングは日本ではあまり見られません。

 その理由は、日本の都道府県には「屋外広告物条例」というルールが存在するからです。

 景観を維持しながら広告や看板を掲出しないと、街は美しさからほど遠い“無法地帯”になってしまいます。屋外広告物条例は、街の景観を維持するために各自治体によって定められているものです。

 代表的な条例内容としては、面積、つまり看板の大きさの規定が挙げられます。例えば東京都では、壁面に取り付ける広告看板は100平方メートル以下で、壁面面積の10分の3以下、高さは52メートル以下に抑えなければなりません。

 このほか、同じ広告を複数に分割して見せる場合は5メートル以上の間隔を設けなければならないなど、細かいルールもあります。日本でビルラッピングをあまり見かけないのは、景観とのバランスを考慮した結果だったのですね。

●巨大印刷が「景観」を守る? スペインで見かけた粋なはからい

 さて、再び視点を海外に戻してみましょう。スペインはバルセロナ、観光名所としても有名なこの街に、面白いビルラッピングがありました。

 有名建築家のアントニ・ガウディによって1910年に建てられた「カサ・ミラ」は、世界遺産になっています。その内部は博物館となっていますが、入居者も今でもいます。その歴史的な建物の向かい側に、気になる「巨大印刷物」がありました。

 巨大印刷物の正体は「建築現場の養生シート」。養生シートは落下物やホコリなどから周囲の通行人、建物、車を守るほか、騒音防止にもなるなど、建築現場でとても重要な役割を持っているのですが、この写真にある養生シートは見た目が一味違っていることが分かるでしょうか。

 この建物は恐らく修繕工事中だったのでしょう。無地の養生シートでは見た目が味気なくなってしまうところを、中に建っている実際の建物のビジュアルが印刷してありました。

 巨大な印刷技術は、広告を「目立たせる」だけでなく、建築現場の周りの安全や街の景観を「守る」という役割も担っているようです。

著者:霄洋明(おおぞら・ひろあき/Hiroaki Ozora)

 日本HP大型プリンターエバンジェリスト。ワイドフォーマット事業本部に所属し、大型のインクジェットプリンターのソリューションアーキテクトを担当。

 東京都中野区出身。学生時代は総合格闘技と彫刻(木彫・塑造)に熱中。大型インクジェットプリンタ黎明期ともいえる1996年頃にアルバイト入社した画材店で大型プリンタと出合う。

 その後、広告代理店で、屋外/交通広告・商業施設装飾・サイン計画などに関わり、企画ディレクション・制作施工管理を経験。2010年より 日本HPに入社。デジタル印刷を活用したサイン・ディスプレイとインテリアデコレーションの企画・制作・施工の知見を生かし、HP Latex・UVプリンタ(業務用大型プリンタ)の市場・用途開発を担当。現在は、デジタル印刷技術によってサイン・ディスプレイ業界、インテリア業界、印刷業界をつなげるハブとなってお客様の事業領域拡大を支援することがテーマ。

最終更新:8月15日(月)8時43分

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