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日本兵を癒した幻のアイドル雑誌 軍発注のグラビアが心の支えだった

BuzzFeed Japan 8月15日(月)6時0分配信

戦時中、軍部が発注していた兵士専用の雑誌がある。

「慰問雑誌」と呼ばれたその誌面を飾るのは、戦時でも輝きを失わないアイドルたちのグラビアだ。【BuzzFeed Japan / 籏智広太】

「皇軍の皆々様 どうも有難う」などと甘く語りかける、彼女たち。雑誌を貪るように読んだ兵士たちは、ブロマイドを切り取り鉄兜に貼った。そして、投書欄に思いを寄せる手紙を書いた。

6年かけてそれらの雑誌を研究し、著書「兵士のアイドル」にまとめた横浜市立大院共同研究員の押田信子さんは言う。

「アイドルは、時代を映す鏡でした」

創刊号を飾ったアイドルたち

最大で200万部が発行されていた慰問雑誌。陸軍には「陣中倶楽部」、海軍には「戦線文庫」と軍ごとに分けられていた。

製作を担っていたのは、実際に娯楽雑誌をつくるプロの編集者たち。「陣中倶楽部」は大日本雄弁会講談社(いまの講談社)が制作を、「戦線文庫」は文藝春秋社(いまの文藝春秋)の実質的子会社・興亜日本社が出していた。

軍部はそれぞれ発行と監修を担っていた。その費用は、国民から集められた兵士を慰問するための募金から捻出されていた。

戦時中の慰問雑誌や文学者の研究をしていた押田さんは2010年、出版社の地下に眠っていた全77刊ある「戦線文庫」の一部と出会った。

1938年に出版された「戦線文庫」。創刊号から毎号続いたグラビアは華々しい。原節子、李香蘭(山口淑子)、高峰秀子……。女優、歌手、芸者、ダンサー。当時、世間の注目を浴びたトップスターたちが集っている。

「アイドルたちが生き生きとした顔で写っていて、びっくりしました。表紙も鮮やかで、劣化していなくて。この眠れる美女たちを目覚めさせて、あの戦争ってなんだったのかを振り返りたいと思ったんです」

そう語る押田さんに、膨大な資料を見せてもらった。切り取ればブロマイドにもなるグラビアに添えられた、アイドルたちからのメッセージも魅力的だ。

「無事ご凱旋下さいます様に。私お迎へに参ります」「お体にお気をつけになつてーー」「私の水兵さん萬才」

アイドルの連絡先として、住所まで載っているものまである。

「お暇な折にはお手紙下さいませ」

それだけではない。雑誌の中身は、いまの青年誌にも劣らない。艶やかな女性を描いたイラスト、芸能ゴシップ、大衆小説や映画情報、漫才や落語など、さまざまな娯楽コンテンツで満ちている。

押田さんは、そんな慰問雑誌の特殊性として「女性にフィーチャリングしていること」をあげる。しかも、「アイドル」として雑誌が取り上げたのは、いわゆるスターたちだけではなかった。

「戦場の兵士の心の拠り所となったのは、最初のころは銀幕の女性たちでした。ところがだんだんと町や農村、漁村の『働くお姉さんたち』にシフトしていく。同時に文壇の女性たちやアナウンサーなど、文化人たちにも広がりました」

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最終更新:8月16日(火)11時50分

BuzzFeed Japan

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