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米政府、キメラ研究への助成を解禁へ

ギズモード・ジャパン 8月15日(月)23時10分配信

ライオン+ヤギ+ヘビの誕生を後押し!?

キメラとは伝説の生物であり、ドラクエではその翼を投げるとワープできたりしましたが、単なる想像上の存在ではありません。たとえば病気の研究のためにヒトの細胞を注入されたマウスなどもキメラのひとつであり、リアルに存在して、役立っています。そうした研究をさらに後押しし、また倫理的な議論も深めるべく、米国国立衛生研究所(NIH)は人間と動物の合成に関する新たなガイドラインを提案しています。

でもこのガイドライン、すんなり出てきたわけじゃありません。NIHが2009年に出した人間の幹細胞研究に関するガイドラインでは、人間と動物の細胞の合成自体禁止されていました。さらに2015年には、NIHから新規のキメラ研究への助成金も1年間凍結されることになりました。でも今彼らは従来の厳しい方針を転換し、新たなガイドラインの草案を作って、いくつかのキメラ研究に資金提供すると言っているんです。ただし条件があります。

新ガイドラインでは、人間の細胞を霊長類の初期段階の胚に注入する研究は助成金対象から除外しています。それから、人間の細胞が大きく影響する可能性がある動物の繁殖も禁止です。つまり、人間ライクな動物の誕生は避けたいということです。NIHはこう書いています。

“ 生物医学研究者たちは、人間の生態や病気の進展について重要な知見を得るべく、人間の細胞を含む動物モデルを作り出し、数十年も利用してきた。たとえば人間の腫瘍細胞は定常的にマウスの中で育てられていて、がん症状の過程の研究や、治療法の検討に使われている。また再生医療進展のために、人体においてあらゆる組織になりうる多能性細胞をげっ歯類に取り込み、その能力を評価することは一般的に行われている ”

NIHは、助成対象の研究をレビューして倫理面も含めて検討する内部委員会を作ると言っています。

「今回の変更によって、NIHの研究コミュニティはこの有望な科学分野を責任ある姿勢で前進させられるものと確信しています」NIHのサイエンスポリシー担当副所長、Carrie D. Wolinetzさんは言っています。

このガイドラインでキメラが解禁されるからって、いわゆるマッドサイエンティストがライオンとヤギとヘビをくっつける、みたいなことが許されるわけじゃなさそうです。このガイドラインが対象としているのは、人間の幹細胞を動物の胚に注入し、その胚を育てて人間の病気のモデルを作ったり、新薬を試したりといった研究です。将来的には、人間に移植できる臓器も作れるものと期待されています。

Natureによれば、このガイドラインへの専門家の反応には賛否あるようです。たとえばカナダのダルハウジー大学で生態倫理学を専門とするFrancoise Baylisさんは、まだ多くの課題が残っていると指摘しています。いわく、キメラとは人間でも非人間でもない第3のカテゴリの動物として考えるべきなのに「何事もなかったかのように非人間として扱っている」ことはおかしいのです。たしかに、何かの拍子で人間の脳を持ったネズミができてしまったら、そのネズミは本当にネズミなのかとか、そういうことなんでしょうね。

NIHのWolinetzさんによれば、こうした微妙なところはまさに委員会で議論されるべき課題とのことで、いろいろとまだこれから、という感じです。このガイドラインについてはこれから1カ月ほどパブリックコメントが受け付けられた後、正式に確定する予定です。

source: NIH via Nature
Carli Velocci - Gizmodo US

最終更新:8月15日(月)23時10分

ギズモード・ジャパン

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