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神奈川の海、守り続け 横浜水上署

カナロコ by 神奈川新聞 8月15日(月)14時37分配信

 横浜港の玄関口、横浜港大さん橋国際客船ターミナル(横浜市中区)前にある横浜水上署。その名の通り、管轄エリアの97%は海上と河川だ。外国客船や観光船などがひっきりなしに航行する中、神奈川の海の治安を守ろうと、職員らが海上で日夜巡回し、人命救助などの事件事故対応に尽力している。

 「夏休みに入った今が海上の繁忙シーズンです」と話すのは交通地域課の太田博文さん(52)。横浜港内で船舶のかじを切りながら、ペアを組む見張りの職員と周囲を見渡す。近くを観光船、プレジャーボート、タグボートが次々と横切っていく。

 車のような制限速度がない中で事故の危険性はないか、他の船の航行状況に目を光らせる。象の鼻パークなどの岸壁から身を乗り出して釣り糸を垂れる太公望に注意を促すことも。国際会議が多く開かれる横浜とあって、テロ警戒のために不審船の取り締まりなども行う。

 横浜水上署は1868(明治元)年に水上見張所として発足。99年に警察署の統廃合に伴い、水上警察として設置された。現在の建物は1984(昭和59)年に建てられた。船舶は水上バイクを含め10隻を所有。川崎港と江の島の2カ所に船舶連絡所を構え、事件事故などの突発対応に備えている。

 一方、管轄区域3%の陸地では横浜赤レンガ倉庫や横浜コスモワールドなど観光スポットを抱え、犯罪や交通指導の取り締まりなどに当たっている。

 操船業務を担うのは交通地域課の技術職員。普段は横浜港や川崎港、根岸湾などを巡回。水難事故や船舶同士の衝突事故などの一報が入れば、捜査員も同乗して現場に急行する。このほか、海上パレードなどのイベントや訓練を行うために船を操縦する「船舶特務班」がある。

 横浜水上署によると、日々の巡回とは別に、昨年1年間に犯罪の取り締まりや人命救助などで船舶を出動したのは約240件。管内の商業施設や観光施設で窃盗事件などが発生した場合、船で海上から捜査を行うこともある。他の警察署からの派遣要請も珍しくない。5月に加賀町署管内の山下公園で男が女性を投げ落とした事件の際には、派遣要請を受け、女性を救助した。

 観光地ならではの操船上の悩みもある。夜の航行時には、横浜・みなとみらい21(MM21)地区のまばゆい夜景が灯火の色と似ているため、他の船との距離感がつかみにくいという。
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 太田さんは航海士に憧れて東海大学海洋学部(静岡県)へ。卒業後は愛知県の民間物流会社に就職し、約10年間、外国航路で船を操縦した。「経験を生かしつつ、人のためになる仕事がしたい」と97年に神奈川県警に入庁した。「毎日の仕事は地味だが、自分でも人の命を助けられるというやりがいがある」と語る。

 2010年に横浜で開かれたAPEC(アジア太平洋経済協力会議)首脳会議では全国の警察から派遣された応援部隊を束ねた。今年5月下旬に三重県であった先進7カ国(G7)伊勢志摩サミットには横浜水上署の他の隊員とともに派遣され、会場周辺の海上警備に当たった。「リアス式海岸なので地形が複雑で、警察人生で一番難しい操船だった」と振り返る。

 後輩の指導も行う約20年のベテランでさえ、「自然が相手なので操船は何年たっても勉強が必要」という。天候が悪い中での人命救助などの際は海上保安庁などと連携することもある。

 夏季シーズンを迎え、同署では海水浴場の沖合を巡回するなど事故予防の啓発活動も強化している。太田さんが懸念しているのはプレジャーボートなどの衝突事故だ。「横浜港では船の往来が多く、慣れていないと操縦で慌てかねない。スピードを落として、見張りをつけていれば防げる事故は多い」と安全な航行を呼び掛けている。

最終更新:8月15日(月)14時37分

カナロコ by 神奈川新聞