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「急がば回れ」は本当か? 実験したら近道の方がめっちゃ快適だった 言葉が生まれた舞台は琵琶湖

withnews 8月16日(火)16時1分配信

 「急がば回れ」。リスクのある近道より、遠回りだけど安全で確実な道を選ぶ方が得策だ、という意味のことわざです。あまり知られていませんが、この言葉が生まれた舞台は、滋賀県の琵琶湖です。本当に今でも「急がば回れ」なのでしょうか。実験した人がいます。(朝日新聞東京社会部記者・原田朱美)

【写真】「急がば回れ」を琵琶湖で実験したときの様子

語源は「船で渡るか、歩くか」

 「急がば回れ」は、琵琶湖の交通手段のことです。
 
 湖の対岸に行きたい時、船で横断すれば近くて早いです。直線距離ですからね。でも、山から吹く突風で転覆する危険がありました。
 
 遠回りでも、湖畔をぐるっと歩いた方が安全です。だから「急がば回れ」。語源って面白いですね。

 「じゃあ、本当に回った方がいいのか、実験しよう!」。

 そう思い立った人がいます。京都橘大学の池田修教授。

 池田教授は、国語教育のスペシャリストです。「国語科を実技教科にしたい」と語る池田教授は、書道学習を極めるあまり、カメの甲羅を入手して彫刻刀で甲骨文字を掘ってみたり、「二階から目薬」などのことわざを写真で表現してみたりと、とにかく行動派。

 「体験して初めてわかることがある。『言葉って面白いなあ』とワクワクします」と池田教授は言います。そして今夏に選んだテーマが「急がば回れ」実験でした。

陸路は4時間

 まずは陸路。
 
 7月18日、学生14人と共に歩きました。出発点は、琵琶湖東岸にある東海道の宿場町・草津。ここが陸路と水路の分かれ道です。

 ちなみに、「急がば回れ」は、江戸時代初期につくれらた笑話集「醒睡笑(せいすいしょう)」に書かれていたのが始まりです。この本の中で、古歌として紹介されています。

 「武士(もののふ)の やばせの船は はやくとも いそがば廻(まわ)れ せたのながはし」

 「やばせの船」は、「矢橋(やばせ)という港から出る船」のこと。「せたのながはし」は「瀬田(せた)という場所にかかる橋」。具体的には、琵琶湖の南端から流れ出る瀬田川にかかる「唐橋」です。つまり古歌は、矢橋から船で行くよりも、瀬田の唐橋を通るルートを選んだ方がいいよ、と具体的に教えてくれています。

 陸路実験は、草津から南下して、その「瀬田の唐橋」を渡り、北上して琵琶湖西岸の大津市の港までの約13キロメートル。江戸時代の人々が歩いたであろう旧道をたどりました。

 踏破にかかった時間は、約4時間でした。

 「暑くて、しんどくて、いやもう大変でした」と、池田教授は言います。たしかに、夏の炎天下、4時間歩き続けるのは苦行です。

 「何があっても、船がいいです。船が出なければ、船を待ちます」。
 
 池田教授は、早くも断言。いやいや、転覆するよりマシかもしれませんよ?

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最終更新:8月16日(火)16時1分

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