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「ガス自由化」課題積み残したまま終わった制度設計

ZUU online 8月16日(火)9時10分配信

2017年4月の都市ガス小売り全面自由化を控え、経済産業相の諮問機関・ガスシステム改革小委員会(委員長・山内弘隆一橋大大学院教授)が進めてきた制度設計議論が終わった。ひと足早く2016年4月に完全自由化された電力と同様に、市場開放の枠組みが定まったわけだ。

しかし、国内が送電線網で結ばれている電力と異なり、都市ガスの導管は大都市を中心に国土の一部しか敷設されていない。新規参入は首都圏や京阪神に限定されそうな状況で、大都市と地方の格差が大きな問題にあらためて浮上しそうだ。

■二重導管規制の緩和をめぐり、ガス、電力業界が論戦

ガスシステム改革小委員会は、料金規制の撤廃と東京ガス <9531> 、大阪ガス <9532> などガス大手が持つ導管の担当部門を別会社にする法的分離を決めたあと、2015年8月から制度の詳細設計に入った。

経済産業省・資源エネルギー庁によると、決定したのは

◎ 液化天然ガス基地を既存利用業者と同一条件、同一料金で新規参入業者が利用可能とする
◎ 小売り全面自由化後の経過措置料金規制は、都市ガス利用率が50%を下回るなど解除要件を満たしても、特別な事情があれば解除を見送る
◎ 電力会社が強く望んでいたアパートやマンションなど集合住宅への一括供給は認めない
◎既存の導管が敷設されている地域で各社が新たに導管を敷く二重導管の規制を緩和する
◎導管整備では、天然ガスの利用拡大などを考慮し、計7ルートの費用便益分析を進める

--などだ。ガスシステム改革小委員会は市場の開放を進め、新規参入を促すことを主眼に方針をまとめたが、一括供給は安全確保の点、経過措置料金規制の解除はガス料金の不当な値上げを防ぐことを考慮して判断した。

このうち、最も議論が白熱したのは二重導管規制だった。大幅な規制緩和を求める電力業界とシェアを守りたいガス業界の意見が真っ向から対立、会議は紛糾を重ねた。

二重導管がこれまで規制されてきたのは、導管整備済みの地域で各社が新たに導管を敷くと、設備投資が過剰になってガス料金にはね返る恐れがあるからだ。しかし、電力業界は発電用に購入した熱量未調整のガス販売を計画している。ガス大手が熱量を一定に調整して販売しているガスと成分が異なり、同じ導管で供給できないものだ。

二重導管規制をどこまで規制緩和するかで、電力業界が都市ガスに参入したあとのシェアが左右される。このため、電力、ガス業界とも譲る気配を見せなかったが、経産省は託送供給量の一定割合以下の販売量を上限として二重導管敷設を認める方針を打ち出し、「3年4.5%」の上限値で決着した。

■都市ガスの導管敷設は国土のわずか5.7%

都市ガス小売りの自由化は1995年から段階を踏んで進められてきた。特定のガス会社が一定の地域に都市ガスを独占販売してきた体制を見直し、消費者が自由にガス会社を選べるようにするのが狙いだ。

日本の都市ガス料金は米国の2倍近くに達するなど、先進国で突出して高い。資源エネルギー庁ガス市場整備課は「市場に健全な競争を導入し、適切な料金にしたい」と考えてきた。

既に電力や石油販売、LPガス(液化石油ガス)販売会社などが参入の構えを見せ、電力の自由化と同様に本格的な競争時代に突入するようにも見える。

だが、電力と都市ガスで大きく状況が異なることがある。電力は全国に送電線網が既に整備されているのに対し、都市ガスの導管が敷設されているのは国土全体の5.7%。整備済みの導管網は首都圏など大都市部に集中し、東京-名古屋間でさえ導管で結ばれていないのが実情だ。

国内ざっと200の都市ガス会社のうち、4割は外部と導管がつながっていない。こうした地域に新規参入するとなれば、タンクローリーなどでガスを運ばざるを得ないため、参入業者はコスト面で大きな負担を背負うことになる。

このため、導管網が整備済みの大都市では、既存業者と新規参入業者の競争時代に入るが、未接続の地域では「すぐに競争が激化することはない」(島根県松江市ガス局)とみられている。地方はもともと人口が少ないうえ、人口減少が深刻な地域が多い。新規参入に二の足を踏む業者が出ても不思議ではない。

■大都市と地方の料金格差は最大3.7倍

地方はこれまで都市ガス料金の格差に苦しめられてきた。資源エネルギー庁が2013年にまとめた報告によると、料金が最も安いのは関東地区で、北海道、中国・四国、九州・沖縄地区が高くなっている。価格差は最大3.7倍。関東なら1カ月5000円で済むガス料金が、地方では1万8500円になることもあるわけだ。

1996年に小売りが完全自由化されたLPガスも、三大都市圏を抱える関東、近畿、中部・北陸地区の料金が全国平均を下回るのに対し、北海道、東北、中国・四国、九州・沖縄地区は全国平均を上回っている。

首都圏や京阪神で新規参入業者が相次ぎ、都市ガス小売価格が下がったとしても、競争の乏しい地方でこうした影響が出るとは考えにくい。関東や甲信越では地方自治体が持つ公営ガスの民間譲渡に向けた動きが見られるのに対し、導管のつながっていない地域ではそうした動きが出ていないのもこのためだ。

市場開放は望ましいことだが、大都市の住民しかメリットを享受できないのでは、効果は半減してしまう。導管網の整備など新規参入を後押しする方策を急ぎ、進めなければならないだろう。

高田泰 政治ジャーナリスト
関西学院大卒。地方新聞社で文化部、社会部、政経部記者を歴任したあと、編集委員として年間企画記事、子供新聞などを担当。2015年に独立し、フリージャーナリストとしてウェブニュースサイトなどで執筆中。マンション管理士としても活動している。

最終更新:8月16日(火)9時10分

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