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【テニス】錦織 流れを変えた“巌流島”作戦

東スポWeb 8月16日(火)6時0分配信

【ブラジル・リオデジャネイロ14日(日本時間15日)発】96年ぶりの快挙だ! テニスの男子シングルス3位決定戦で、世界ランキング7位の錦織圭(26=日清食品)が同5位ラファエル・ナダル(30=スペイン)を6―2、6―7(1―7)、6―3で破り、悲願の銅メダルを獲得した。第2セットは2ブレーク先行から逆転される大苦戦となったが、トイレ休憩を巧みに利用する“巌流島作戦”も見せ、日本テニス史に新たな1ページを刻んだ。

 1920年アントワープ五輪男子シングルスの熊谷一弥、同ダブルスの熊谷、柏尾誠一郎組の銀以来のメダル。錦織がついに偉業を達成した。最後はサーブでボディーを狙うと、ナダルは返せない。勝利が決まり、錦織は両手を上げて感無量の表情を見せた。

 客席で見守っていたチームのもとに駆け寄り、植田実監督(59)らと喜びを分かち合った。「日本のために頑張るっていうのはすごく心地いいというか、楽しかったですね。たくさんの方に応援していただいたので本当に楽しめた五輪でした」。日の丸を受け取ると、誇らしげに掲げてファンの歓声に応えた。

 五輪にすむ魔物が首をもたげた。第1セットを先取し、第2セットも2ゲームでブレークを奪って一気に試合を決めると思われた。ところが、ここからナダルの逆襲に遭う。勝負どころで痛恨のダブルフォールトを犯すと2ゲームをブレークバックされて、まさかのタイブレークに突入。しかも1―7と圧倒された。

 試合の流れは完全にナダル。錦織は心を折られてもおかしくない状況だ。勝負の分かれ目になったのは、最終セット前の「トイレットブレーク」だった。10分近く時間を使った錦織に対し、コートで待っていたナダルはイラ立ちを隠せない。いったんイスに戻り、ヒザを小刻みに震わせる。錦織が戻ると、観客も大ブーイングを浴びせたほどだったが、うまく気持ちも“すっきり”させた。

 第4ゲーム、錦織は足元にボールを沈めてナダルのサービスゲームを奪取。ナダルは第6ゲーム前に錦織のトイレが遅かったことを審判に抗議したが、もはや後の祭りだった。その後の錦織はストローク戦を中心に主導権を握り、ナダルの反撃を封じ込めた。

 GAORAテニス中継解説者の佐藤武文氏(45)は「最初からナダルの打つペースが速かった。左右に振られた時も強打してしまう。その分、オープンコート(スペース)ができたので、錦織選手はうまくそこを突いた。ナダルは疲れもあって、短期決戦で終わらせたい気持ちがあったかもしれない」と分析した。

 一方で、錦織のファインプレーを称賛する。「ナダルはATPツアーの感覚から『トイレはこれくらいの時間で戻ってこなくちゃいけない』と思った。でも、五輪はITF(国際テニス連盟)の管轄なので、それほどせかされることもない。錦織選手は自然にやったことだけど、気持ちもリセットできた」。ATPツアーの規定では「トイレットブレーク」は最大5分と厳格だが、ITFに時間の制限はない。錦織はまるで佐々木小次郎を下した宮本武蔵のように相手を焦らせた。

 今五輪は治安やジカ熱の問題により、トップ10のうち5選手が欠場した。それでも銅メダルには大きな価値がある。錦織は「タフな試合を競り勝てたのは経験値としていいものになった」。今後の4大大会初制覇、そして東京五輪金メダルに向けても弾みがつく結果となった。

最終更新:8月16日(火)7時19分

東スポWeb