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【柔道】「メダル12個獲得」日本柔道 本当に復活なのか

東スポWeb 8月16日(火)10時0分配信

 リオ五輪の柔道で日本は男女各7階級で金メダル3個、銀メダル1個、銅メダル8個の計12個を獲得した。これは2012年ロンドン五輪(金1、銀3、銅3)と比べても大きな前進と言える。だが、4年後の東京五輪を考えれば、喜んでばかりもいられない。数々の金メダリストを育て上げた名伯楽で、全日本柔道連盟の元強化委員長でもある吉村和郎氏(65)が今大会を総括。併せて日本柔道への熱いメッセージを送った。

 メダルの数だけで見れば、ロンドン五輪を大幅に上回り、世界に日本の柔道を示せたことは間違いない。吉村氏も「みんな本当によう頑張ったと思う」と一定の評価をする。奮闘した愛弟子・井上康生監督(38)のことも「手探り状態の中、苦しかったことだろう」と思いやった。

 だが、本当の勝負は4年後の東京五輪だ。日本のお家芸の柔道が惨敗したら、元のもくあみ、メンツは丸潰れ。そうならないためにも「今大会の反省は絶対に欠かせない」と吉村氏は声を大にする。

 もともと吉村氏の金メダル予想は73キロ級の大野将平(24)と81キロ級の永瀬貴規(22=ともに旭化成)だった(本紙既報)。大野は順当に獲得。同氏も「万全だった。いろいろな技のバリエーションを出して、外国人を寄せ付けなかった」と絶賛する。一方で永瀬に関しては「技が出せなかった」と残念そう。「他の国際大会で勝っても、それだけ五輪は簡単ではないということ。五輪は『絶対に勝つ』という執念を持った方が勝つ」と“気持ちの差”を強調した。

 同様に女子52キロ級の中村美里(27=三井住友海上)と63キロ級の田代未来(22=コマツ)も悔やんでも悔やみ切れないという。中村については「準決勝で指導で敗れた。五輪に3回も出ていて負け方が悪い。相手は(紛争のあった)コソボの選手。何が何でも勝つという気迫は相手の方が上だった」と見る。田代に関しても「準決勝で命運が分かれた。コソボの選手のように、指導でも何でもいいから勝たないといけない。決勝に行けば負けても銀メダル。行けなければ良くても銅、負けたらメダルなしよ。この差は大きい」と指摘した。その点、78キロ超級の山部佳苗(25=ミキハウス)は「いつも指導を取られたらズルズル負けるけど、気持ちが切れなかった点は成長だろう」と褒めた。

 いい意味で期待を裏切られたのが男子90キロ級のベイカー茉秋(21=東海大)と女子70キロ級の田知本遥(26=ALSOK)だという。吉村氏は「2人はよくやった。決して金メダル候補ではなかったというのがポイント。それだけ思い切って技に入っていったのが良かった」と声を弾ませた。

 その思い切りが不足していたのが男子100キロ超級の原沢久喜(24=日本中央競馬会)だ。絶対王者のテディ・リネール(27=フランス)に組ませてもらえず、相手のペースに付き合ってしまった。「攻めさせてくれなかったのはわかる。だけど、とにかくイチかバチか、釣り手を取りにいかなくてはならない。もちろん投げられることもあるだろう。それで負けても改善点がわかるし、次につながる。だが、指導で負けたら次につながらない」。4年後までに新鋭が台頭してくる可能性も高く、東京五輪で代表権が回ってくるとは限らない。「『次はない』と覚悟すれば、攻められたはずだ」と吉村氏は言う。それは金メダルを獲得できなかった選手全員に共通する課題でもある。

 最後に吉村氏は、今回のメダルラッシュに危機感をあらわにした。

「絶対に喜んだらいかんぞ。金メダルを目指したから、結果的に銅メダルだっただけだ。『銅メダルでも取れてよかったです』と満足しとったら、次は銅メダルすら取れなくなる。確かに世間は褒めてくれるだろう。でも、本当の柔道家ならこれでいいわけがない」

 勝ってかぶとの緒を締める――。それができたかどうかは、4年後にわかる。

最終更新:8月16日(火)10時0分

東スポWeb