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民泊の完全解禁によるホテル市場への影響~宿泊施設の供給過剰は起こるのか?

ZUU online 8月16日(火)18時0分配信

民泊ビジネスが活況を呈しています。

5月19日の「規制改革に関する第4次答申」、6月2日の「日本再興戦略2016」そして6月20日の「「民泊サービス」のあり方に関する検討会の最終報告書」により、Airbnbに代表される民泊(インターネットを通じ宿泊者を募集する一般住宅、別荘等を活用した宿泊サービスの提供)に関する法案が今年度中に提出され、全面解禁される見込みになったからです。

現時点では、旅館業法の認可を取得していない民泊の多くは基本的に違法と思われますが、民泊は儲かるということで、民泊ビジネスはたいへんな活況となっているのです。多くのコンサルタントが生まれ、セミナーは頻繁に開かれ、関連業者も多数起業しています。

数多く誕生した民泊代行サービスの一部のサイトをみると、そこに登録すると最大手のAirbnbはもちろん、欧米系や中国系などの民泊サイトへの登録・翻訳や、鍵の受け渡しを含めた物件管理・清掃やトラブルにも対応し、民泊法案成立後は政府への物件登録も代行するなど、何から何までワンストップで対応してくれる場合もあるようです。

なんて便利なのでしょう。もし保有している空き物件があれば、民泊代行サービスに登録するだけで、あとは成約した後にコストが引かれて入金を待つというイメージでしょうか。

これだけ便利あればホスト(空き物件の保有・賃借者)の登録が進み、民泊ビジネスが活況となるのもうなずけます。しかも、民泊法案では、旅館業法のような認可ではなく、政府への登録はネットでの届出だけですむため、登録はかなりの数にのぼると思われます。

報道によると、2015年にAirbnbを利用した訪日客は138万3千人に達したそうです。現在、中国系などの民泊サイトも急増していることから、全体の民泊利用者数はAirbnbの倍程度に達しているだろうと言われています。現時点ではこれらの民泊のかなりの部分が違法と思われますので、これらが違法ではなく合法になったら、どれほどの民泊がホテル市場に供給され、どれほどの宿泊客が民泊を利用するのでしょう(*1)(*2)。

政府は今年、訪日外国人旅行者数を2015年末の倍の4千万人に増加させるという目標(2015年末比2千万人増)を立てました。この目標に向って、訪日外国人数が平均的に増加するのであれば、2018年中に2015年末比で1千万人の増加が達成されることになります。週刊ホテルレストランによると、2016年後半から2017年に開業を予定しているホテル客室数は、明らかになっているだけでも3万1千室あります。

もし、日本人の延べ宿泊者数が現在と変わらないなら(*3)、これらのホテルの開業により全国で7~8百万人の訪日外国人の受け入れが十分可能と思われます。計画が未公表のホテルやゲストハウスなどを含めると、さらに多くの供給があると思われるため、より多くの外国人を受け入れることができるでしょう。

民泊合法化の最大の理由は逼迫するホテル市場への対策でしたが、活発なホテル投資により、ここ1~2年については、増加が期待される訪日外国人客の一定以上の部分は、現在予定されているホテル計画でまかなえる可能性が出てきました(*4)。

民泊解禁への検討は進みましたが、民泊が完全解禁された場合のホテル市場やホテル投資への影響については、これまで公的な検討会でも具体的な議論は十分になされてこなかったかと思います。

どの時点でどの程度の数の民泊が登録・提供される見通しで、どの程度の日本人・外国人が民泊に宿泊することになり、どの程度の影響をどの都市のホテルマーケットに与えることになるのでしょう。

民泊が完全解禁されたら、安価な宿泊施設の提供により、外国人だけでなく日本人の宿泊需要も喚起される可能性もあると思いますが、そうした見通しも検討されたことはほとんどないと思います(*5)。

日本には居住可能な空き家が820万戸あります。このうち、登録の容易さや便利さから民泊法施行直後に例えば1割が民泊になり、それが365日営業可能になっただけで、ビジネスホテルなどを中心にかなりの影響があると思われます。

民泊は大きな可能性を秘めた、かなりの影響を持つビジネスです。民泊法制化の前に、完全解禁後の民泊の市場の見通しとホテル市場への影響を再度検証する必要があるのではないでしょうか。いったん解禁されたら元に戻すことはできないのですから。

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(*1)訪日外国人旅行者数の前年比増加率の縮小傾向に伴い、外国人の延べ宿泊者数の増加率も縮小傾向にあります。訪日外国人旅行者数の伸びが縮小しているのは、円高の進展やビザ解禁による効果の一巡、途上国を含めた世界経済の不透明さの拡大などもあるかと思われます。しかも、昨年の11月から日本人の延べ宿泊者数(前年比)の減少が始まっています。その結果、2016年第2四半期の国内宿泊施設の延べ宿泊者数(日本人・外国人合計)は前年比で減少しました。前年比での減少は、最近では東日本大震災直後の2011年第2四半期、消費税増税後の2014年第3四半期以来のことです。
(*2)2015年10月頃から外国人の延べ宿泊者数の伸び率が、訪日外国人客数の伸びを下回る状況が続いており、これは円高による滞在日数の減少や、クルーズ船利用者の増加に加え、宿泊・旅行統計に計上されない民泊宿泊者の急増も影響しているのではないかと思われます。2016年6月の外国人の延べ宿泊者数の前年比増加率は+13.1%増(5月は+2.5%増)と、訪日外国人旅行者数の前年比伸び率の+23.9%増(同+15.3%増)を大きく下回っています。
(*3)昨年末より日本人の延べ宿泊者数(前年比)が減少傾向にあります。延べ宿泊者数の85%を占める日本人の減少が続くのであれば、大きな影響をホテル市場に与える可能性がありますがここでは現状程度を想定しています。なお、政府による2020年の訪日外国人旅行者数4千万人もかなり高い目標と言われています。
(*4)東京、大阪、名古屋などの都市では数多くのホテル室数の新設が計画されており、これらの都市の一部では一時的であれ、今後、2017年から2018年にかけて、最近の需給の逼迫状況はかなり緩和されるのではないかと言われています。
(*5)日本人宿泊者数の中期的な動向にも注意が必要と思います。特に2020年を過ぎると団塊世代がしだいに75歳を上回るようになります。75歳を上回ると国内旅行への参加率(行動者率)が大幅に低下するため、国内宿泊需要の減少が続く可能性があります。
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竹内一雅(たけうち かずまさ)
ニッセイ基礎研究所 金融研究部 不動産市場調査室長

最終更新:8月16日(火)18時0分

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