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【相模原事件】障害者襲った大量殺人 現代社会の写し鏡ではないと否定できるのか

BuzzFeed Japan 8月16日(火)5時10分配信

相模原市の障害者施設で起きた殺傷事件。「障害者は無価値」と存在を否定する容疑者の言動は社会に衝撃を与えた。なぜこんな考えが生まれるのか? 社会はこれをどう克服したらいいのか? 全盲と全ろうの重複障害がある東京大の福島智教授にメールでインタビューした。【BuzzFeed Japan / 溝呂木佐季】

【質問】植松聖容疑者は園職員に「重度障害者は生きていても仕方がないので、安楽死させた方が良い」と話し、衆院議長宛ての手紙に「障害者は不幸を作ることしかできません」と書いたと報じられています。この考えの根本的な問題を教えてください。

問題点が三つあると思います。まず、この世界に「生きていてもしかたがない」ような人間は、誰一人いません。

次に「安楽死」という言葉を間違った意味で使っています。安楽死とは「助かる見込みのない病人を、本人の希望に従って、苦痛の少ない方法で人為的に死なせること」(広辞苑)という意味です。

しかし、重度障害者は「助かる見込みのない病人」ではありません。適切な手助けがあれば、元気に生き続けられる人たちです。したがって、容疑者が使っている「安楽死させる」という言葉は、実際は「殺す」という意味です。

最後に「不幸をつくる」という表現は、無意味で誤った表現です。なぜなら「幸福」や「不幸」は、机や椅子といった形のある物体のように「作る」ことや「壊す」ことはできないものだからです。

それらは一人ひとりの人間が心の中で感じ取るものです。同じ環境や出来事に対しても「不幸と感じる人」「幸福と感じる人」「幸不幸を感じない人」など様々でしょう。

そう考えれば「障害者は不幸を作ることしかできない」という断定的な表現は、そもそも文章として意味をなさないことが分かります。

【質問】福島さんは事件について、憎悪犯罪(ヘイトクライム)と優生思想が絡み合っていると解説されています。どういう意味ですか。

憎悪犯罪とは、民族や肌の色、信仰する宗教の違いなどによる差別を理由とする犯罪のことです。LGBTなど比較的少数派のセクシュアリティ(性的指向性)を持つ人たちが対象にされることもあります。今回の事件は「障害」という属性(性質)を持った人たちが憎悪の対象になったと思います。

優生思想とは、人類の「悪質な遺伝」を淘汰し、「優良な遺伝」を保存することを目指す考え方で、人間の命に優劣をつける思想です。

ここでの「優劣」の基準ははっきり決まっているわけではありません。特定の民族が「劣っている」とされたり、ある種の病気や障害のある人が「劣っている」とされたりします。優生思想の恐ろしいところは、それが現実の政治や政策に影響を与える危険性のある思想だという点です。

ナチス・ドイツは第二次世界大戦中、優生思想に基づき、ユダヤ人をおよそ600万人虐殺しました。そして「生きるに値しない生命」として、知的障害者や精神障害者などをおよそ20万人抹殺しました。

しかし、これはナチスだけの問題ではありません。優生思想は第二次大戦後も世界各国で生き延びてきました。例えば、日本では1948年制定の「優生保護法」が代表的です。一部の障害者やハンセン病患者などが子供を作れないように、強制的に手術をされました。1996年に「母体保護法」に改正されましたが、優生思想的側面が完全になくなったとは言えません。

また現在も「出生前診断」で胎児に障害があると判明した場合、堕胎手術を受ける例は少なくないと言われます。つまり、優生思想は今の社会にも根深く存在しています。

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最終更新:8月16日(火)12時22分

BuzzFeed Japan

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