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しわ寄せは保育士に、「児童福祉」の歴史的使命-構造的な低賃金

Bloomberg 8月16日(火)6時0分配信

子供が好きだというだけで仕事を続けていくことはできなかったー。元保育士の笹本沙紀(29)さんの経験だ。

都内でキャリアを6年半積み重ねたが、給料はすずめの涙で仕事はハード。人間関係のストレスもたまり心身ともいっぱいいっぱいとなり退職した。「我慢ができなかった」と振り返る。

保育士の資格は持つが保育園などで働いていない「潜在保育士」は厚生労働省によると全国に約76万人いると推定される。にもかかわらず現場で働く保育士が不足している背景には、強い規制と低賃金が横たわる。その改革は、女性の就労を進め労働力不足に対応しようとしている安倍晋三政権にとって喫緊の課題だ。

今のところ政府の対応策は、公費投入による保育の受け皿拡大が優先され、構造改革は後回しになっている。アベノミクス全体の傾向と同様の構図だ。統計・資料や関係者の取材を通じて見えてきたのは、保育を福祉と位置付ける戦後からの法制度の下で、保育士の賃金が低く抑えられ、離職へ追いやっているという構造的な問題だ。

安倍首相は女性が輝く社会の実現をうたうが、今のままでは保育士は「輝けるわけないですよね」 と、笹本さんは笑顔をみせながらも語った。

補助金と規制

現行の保育制度の根幹は、国の基準に基づいて都道府県が保育施設を認可する仕組みにある。認可を受けた施設には公立・私立問わず補助金が支給される。補助金額は膨大で運営費の8割以上をカバーしているケースもある。しかし補助金には規制も付く。保育時間や人員配置に加え、人件費も事実上規制がかかっている。

笹本さんが、都内の民営認可保育園に勤務していたときの月給は残業込みで手取り16万円台だった。昇給はわずかで、能力とは関係ない年功序列。規則で定められた書類作成にかかる時間が長く、子供にしっかり時間を割けなかった時もあったという。つらかったのは、保育時間の管理が厳しく働くお母さんの助けになれなかったことだという。例えば急な残業で1時間延長の依頼があったとき、「本当はオーケーって言ってあげたかったのに言えなかった」。

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最終更新:8月16日(火)6時0分

Bloomberg