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石巻に4万人が集まったap bank fes 2016。来年へと続く一歩/ライブレポート・セトリ

エキサイトミュージック 8月17日(水)7時15分配信

 
■【Reborn-Art Festival × ap bank fes 2016】ライブレポート
2016.07.29(FRI)、30(SAT)、31(SUN)at 宮城県 石巻港 雲雀野(ひばりの)地区
(※画像52点)
(c)Reborn-Art Festival
撮影/YOSHIHARU OTA、TAKEHIRO GOTO、TETSUYA YAMAKAWA

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石巻で初開催となったap bank fes。来年へと続く新たな一歩

2016年7月30日(土)、31日(日)と7月29日(金)前夜祭を含む3日間、宮城県石巻港雲雀野(ひばりの)地区で【Reborn-Art Festival × ap bank fes 2016】が開催された。ミュージシャン47組、アーティスト9組、フード関連(シェフ・サービスメンバー39名、出店者40組)が参加し、首都圏や東北各県から観客のべ4万人を動員した。

2005年~12年まで、静岡県掛川市つま恋で開催されていた(12年は兵庫県、宮城県でも開催)ap bank fes。4年ぶりの復活となった今回は、場所を石巻に移したことを筆頭にさまざまな変化を遂げていた。そもそも今回のフェスは、来年、2017年夏に、石巻、牡鹿半島を中心に51日間の日程で開催予定の芸術、食、音楽の“総合祭”【Reborn-Art Festival 2017】のプレイベントという位置づけであり、地域と密着したイベントであることが各所で打ち出されていた。

ライブは、基本的に日本のトップミュージシャンが集まった“Bank Band”の演奏にゲストボーカルを迎えた形と、バンド、ソロアーティストが、左右に二つ並べて設置されたステージに交互に登場するという形式で行われた。Bank Bandのステージに、交互でバンド、ソロアーティストのステージもあるので、これまで以上にバリエーションに富んだラインナップが楽しめた。




オープニングは地元のジャズオーケストラやコーラス隊、ダンサーなどと、Bank Bandとのコラボステージが飾り、櫻井と地元とコーラス隊とのハーモニーが石巻の晴れ渡る空の下に響く。初日は石巻市長が開会宣言も行い、このフェスがどんな意味を持って行われるかが明確に見えるオープニングだった。そのステージにSalyuが現れ、櫻井とともに「to U」を歌う。これまでのap bank fesでは恒例だった楽曲だけに、復活したという印象が強まる。だが、櫻井はこの1曲でステージを去り、あとはBank Bandがゲストボーカルを迎えてのステージと、それぞれのバンド、ソロアーティストへという今回、新たに変わった形式のステージへと移っていった。




1日目、新曲「鬼」も披露してくれたクリープハイプ、タイトルに込めた禅の言葉の意味を話しつつ、ニュー・アルバムのタイトル曲「日日是好日」を歌ってくれた藤巻亮太、自分たちが作り続けている曲への思いから人々が争うことなく互いを認め合うことへの望みを語り、「ALMA」などを歌ったACIDMAN、白いドレスまとい、いつもの裸足というスタイルで「強く儚い者たち」などの代表曲から、人前で歌うのは初めてという新曲「ひばり」まで歌ってくれたCocco、若手らしく自己アピールをしつつ、盛り上げ役を務めたWANIMA、一方、自分たちが確立してきたスタイルを揺るぎなくみせたZAZEN BOYS、SPECIAL OTHERSなどがステージに立った。


そして、これまでのap bank fesではトリを飾るオーガナイザー的な位置づけで登場していたMr.Childenは、今回は中盤、もっとも会場の気温が上昇する15時頃にステージへ。1曲目「名もなき詩」で一気に会場のテンションを上げると、「すっごい暑いですけど大丈夫ですか?」と桜井が呼びかける。ステージ設計上、日陰に入っている桜井は、「みんなと同じ気分はここらへん?」と、ステージ前方の日が差し込む場所まで出てきて観客をさらに沸かせる。続いて、スタンドマイクを握り締めると、「Tomorrow never knows」を歌い、涼しい風が吹くバラードを、と「しるし」を穏やかな歌声で届ける(2日目はここで「HANABI」を披露)。石巻では初開催となったReborn-Art Festival × ap bank fes 2016。初めてのことをするのは何かと不安もあるけど、そのことをワクワクドキドキできる心を持ちたいと、そんな思いがこもっているという「PADDLE」を。さらに「シーソーゲーム ~勇敢な恋の歌~」「innocent world」とヒット曲を連打し、ラストは嫌なことがあっても自分一人だけと孤独にはならないで欲しい、誰かがきっと見てくれていると観客に語りかけ、「足音 ~Be Strong」を会場一体となって歌い、ステージを去った。個人的に何度かMr.Childenがフェスやイベントに出演しているところを見ているが、ここ最近ではここまでヒット曲満載のセットリストはなかったように思う。どちらかというと、今の自分たちのモードを見せる最新曲を中心にしつつ、ヒット曲を盛り込むという印象が強かったので、今回に限ってはそれよりも来てくれた人をとにかく楽しませたいという思いが強かったのではないかと感じた。








またこの日、櫻井は、Bank Bandとしては、オープニングの「to U」の他に、中島みゆきのカバー曲「糸」(2日目はRCサクセション「スローバラード」)、今回が初カバーとなったBUMP OF CHICKENの「ロストマン」、このフェスに向けて作られ、「この曲を歌うためにここに来た」(櫻井)と話した、Bank Bandの6年ぶりの新曲「こだま、ことだま。」を披露した。そして、この歌の紹介のとき、櫻井が少し涙ぐんだようにも見えた。真相はわからないが、あの震災ですっかり様相を変えてしまったこの地で、何かを“始める”ことができることへの大きな思いがあったのではないかと感じた。このほかにも、櫻井はスガ シカオのステージで、カラオケで高得点をとるとそのことをスガに報告しているというエピソードとともに、「夢のゴール」を歌ったりと、出番は以前より減ったとはいえ、多くの場面で観客を楽しませた。



2日目。前日はソロとして出演したSalyuがこの日は佐藤タイジとのコラボステージを披露したり、そのステージにバンドとしても出演した赤い公園の津野米咲が参加したり、他にも、MISIAと櫻井が一緒にBank Bandの「はるまついぶき」を歌ったり、OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDに小林&櫻井が参加したり、こちらもやはり前日はソロ出演だったSUGIZOが、フリューゲルホーンプレーヤーのTOKUとともにステージに立ったりと、普段なかなか見られないコラボが多数あった。もちろん、コラボ以外のステージも見どころは多く、赤い公園、ストレイテナー、APOGEEらが、それぞれのバンドの個性を見せれば、ナオト・インティライミ、GAKU-MCらはソロとは思えぬパワーで会場全体をお祭り騒ぎにしたりと、この日も一日中、極上の音楽が石巻に流れた。また、Bank Bandのメンバーとしてステージに立ち、本フェスの実行委員長として指揮をとってきた小林武史が、YEN TOWN BANDとしても登場。ときおりおぼつかないMCをボーカルのCharaにいじられたりしながらも(笑)、昨年、YEN TOWN BANDが復活したときからこの場所で鳴らすことをイメージして作ったという「my town」を披露するなど、いちミュージシャンとしての思いも伝えてくれた。



そして、この日は、石巻市内で行われる“川開き祭り”に際して、時を同じくして会場でもMemorial Timeと称する慰霊のための時間がとられた。約20分間に渡り、小林武史、SUGIZO、TOKU、Salyuらによる演奏と歌が、津波ですべてが流され、後に瓦礫を集積する場となっていた会場のある石巻港に響いた。この場所でフェスを行うためには、通常の何もない場所で開催するよりも、多くの問題があったことが容易に想像できる。収容人数ももし津波が発生しても、全員が歩いて非難できる時間と場所を想定して、各日2万人となったと聞いた。会場からは防潮堤を作る重機がすぐ側に見えていたし、仙台、石巻から会場までのシャトルバスからの車窓にはさまざまな被害の爪あとも見えた。自分が住む街では新しい建物を見てもなんの感慨を持つこともないが、この地で新しい建物を見ると、その場所にあったものへ思いも巡る。フェスを開催することに対して賛否両論あるとは思うが、少なくともこのフェスに参加した誰もが、何らかの思いを抱いてそれぞれの日常に戻ったことは間違いないだろう。





Memorial Time以外にも、飲食ブースの出店が地元のお店や、材料を使ったものであったり、来年のReborn-Art Festivalに続く、アート作品とのコラボが会場の各所で行われていたり、これまでのap bank fesと同様、飲食店で出される食器類がリユース可能なものであったり、各所に使われているものが環境に優しい素材だったりなどなど、他のフェスとは違った取り組みが多方面でされていて、アーティストのライブを楽しむ以外にも、多くの経験ができた。ap bank fesに関しては来年も開催されるかどうかは現在のところ発表されていないが、【Reborn-Art Festival 2017】とともに、またこの地に多くの人たちが集えることを願いたい。
(取材・文/瀧本幸恵)

≪出演アーティスト≫
●7 月 29 日(金)
Bank Band
Salyu
東田トモヒロ
藤巻亮太
LEGO BIG MORL
ウカスカジー
●7 月 30 日(土)
Bank Band
SUGIZO
ATSUSHI
手代木花野 with 片山千穂
渡邊絵理
石巻桜坂高等学校合唱部
石巻ジュニアジャズオーケストラ
石巻メンネルコール
渡波獅子風流塾
Salyu
クリープハイプ
黒木渚
藤巻亮太
ACIDMAN
大森靖子
名越由貴夫
Mr.Children
Cocco
スガ シカオ
ZAZEN BOYS
WANIMA
GAKU-MC
SPECIAL OTHERS
金子ノブアキ
SUGIZO
七尾旅人
●7 月 31 日(日)
Bank Band
SUGIZO
ATSUSHI
手代木花野 with 片山千穂
渡邊絵理
石巻ジュニアジャズオーケストラ
石巻メンネルコール
渡波獅子風流塾
宮城県石巻好文館高等学校音楽部
佐藤千亜妃(きのこ帝国)
赤い公園
安藤裕子
ナオト・インティライミ
ストレイテナー
佐藤タイジ(シアターブルック)
Salyu
津野米咲(赤い公園)
Mr.Children
ハナレグミ
MISIA
YEN TOWN BAND
(仮)ALBATRUS
APOGEE
GAKU-MC
あらかじめ決められた恋人たちへ
SUGIZO
TOKU
OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND

最終更新:8月24日(水)16時30分

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