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特徴のないコンビニを、面白くする簡単な方法

ITmedia ビジネスオンライン 8月17日(水)6時25分配信

 コンビニというのはチェーンによって、目立った特徴があるわけではない。コンビニに行こうと思ったとき、例えば、家の近くにファミリーマートがあるのに、わざわざ電車に乗って隣駅のセブン-イレブンに行く人はほとんどいないはずだ。セブンもファミマもローソンも、品ぞろえや取り扱っている商品やサービスそのものは大差がないからだ。

【ファミリーマートの新サービス「24h洋服お直し便」】

 今回は、乱立するコンビニが生き残るための独自のサービスについて考えてみよう。

●結局、選ぶのは近くのコンビニ

 このコンビニに行かなければいけない――というシーンはどういうときか。読者の中には「セブンのコーヒーでなければいけない」、「ローソンのプレミアムロールケーキでなければいけない」という人もいるだろうが、食べ物・飲み物以外に「クジ」をひくために、特定のコンビニに足を運ぶ人もいるはずだ。

 コンビニには「一番くじ」などのハズレなしのクジがある。クジの取り扱いは各社異なるが、コンビニの1サービスとして定着している。特定キャラクターのグッズをコンプリートしたくて、クジを“大人買い”した人もいると聞く。

 このように、「そのコンビニでなければならない」という明確な目的があれば多少遠くてもそのコンビニまで足を延ばすだろう。逆に言うと、特にこだわりがないのであればコンビニの看板を選ぶようなことはない。結局、利用するのは近くにあるコンビニなのだ。

●独自のサービスとキャンペーンで差別化を図るはずが

 コンビニ各社は、消費者にとっては「横並びの存在」であることを認識しているので、日々さまざまなキャンペーンや独自のサービスを生み出し、差別化を図ろうとしている。

 ところが面白いことに、コンビニは他社で成功した事例はもちろん、成功してもしていなくても、大々的に売り出しているモノは自社でも真似して売り出すという習性がある。近年で言うなら、コンビニコーヒーやドーナツが良い例だろう。

 販促キャンペーンにおいても、クジで商品が当たるモノやキャラクターグッズと商品を抱き合わせたモノなど、それぞれに違いはあれどやっていることはどこも同じだ。

 新しい動きとしては、ローソンがスマホゲーム「Ingress」と協業したキャンペーンを展開している。社会現象にもなった「ポケモンGO」が浸透した今、マクドナルドと同じくコンビニ全店が「ポケストップ」になる日もそう遠くはないのかもしれない。

 このように次々とキャンペーンを打ち出すことを、コンビニ本部は「とても良いこと」と認識している。もちろん、キャンペーンは商売の武器なので良いことに変わりはない。しかし、当初は独自のキャンペーンでもその後他社が真似をするので、次から次へと同じようなキャンペーンやサービスが増える事態となってしまう。

 以前の記事「コンビニで展開されるキャンペーンが、つまらない理由」でも書いたが、“イタチごっこ”の結果どうなるのかというと、店舗運営の負担が増えるばかりになる。

 なぜ、コンビニ各社は多種多様なキャンペーンやサービスを展開するのだろうか。黎明(れいめい)期のころならともかく、コンビニが日本全国に乱立する今となっては、ただ営業しているだけでは大きな集客は見込めないし、通常商品だけでは売り上げ増も期待できなくなっているからだ。

 そこで、コンビニ各社は差別化を図ろうとしてあれこれ試みてきたのだが、結局、オリジナリティは保たれず、無駄なサービスや販促キャンペーンばかりが増えているのが現状なのだ。

●コンビニにはその店独自のサービスがない

 そんな中、ファミマが新サービスを開始する。洋服や靴、バッグなどのお直しサービスを展開するビック・ママと協業し、ファミマが発送と受け取りの窓口になるという。現時点では一部の店舗で先行導入しているが、成功すれば当然全国展開となる。

 「コンビニに洋服お直しのマニュアルでもあるのか?」――筆者はこのニュースを見たとき、個店で洋服を直すサービスだと勘違いし頭が混乱した。そして、次の瞬間「そういえば、コンビニは個店独自のサービスはやっていない」ということに気付いた。

 個店がなぜ独自のサービスをやらないのか。理由は簡単、本部がやりたがらないからだ。個店独自のサービスを本部が管理・保証できないまま、自分のところの看板で勝手なことをされては困る。万が一、何か問題が起きれば最終的には本部の責任となる。

 しかしよくよく考えると、キャンペーンだろうがサービスだろうが、統一していても一定数の苦情はある。また、店が提供するレベルにバラつきもある。個店が独自のサービスを展開したとしても、結果は大きく違わないだろう。

 それほど変わらないのであれば、やってみたら案外面白いのではないだろうか。かつて筆者が本部社員だったころ、さまざまな業界で活躍してきたオーナーと付き合いがあった。例えば、元不動産業、元寿司屋、元農業など。コンビニオーナーというのは、ありとあらゆる業界から転職しているのだ。

 先の洋服お直しサービスも、現コンビニオーナーの中には洋裁を経験した人もいるかもしれない。であれば、自分の店で洋服のお直しを直接受けたほうが、スピーディかつ細やかな対応ができるはずだ。元農業経験者なら自分で育てた野菜を、元すし屋ならお寿司を店内で握って販売するというのも面白い。

 「あそこのコンビニのお寿司はほかの店と違ってうまいんだ」「角のコンビニで売っている自家栽培の野菜がおいしい」――。こうした他のコンビニにはない独自のサービスは、お客さんの目にも新鮮に映るだろう。

●マニュアル通りでは「商売人」として成長できない

 もちろん、独自のサービスを個々の店で展開するのは容易なことではない。しかし、店の経営を「商売人」として考えたとき、本部で統一されたモノだけを提供するよりも、そのほうがはるかに成長できるのではないだろうか。

 業種や職種を問わず、商売の「面白さ」というのは非常に大切だと筆者は考えている。実は、コンビニオーナーの多くは商売の経験がない。商売を知らずに商売を始めているのだ。

 実際、クレームの多い店のほとんどは、オーナーが「コンビニが商売である」ことを忘れているか、知らないまま経営している。扱う商品もマニュアルなどもすべて本部がおぜん立てしてくれて、教えられた通りにさえやっていればそこそこの売り上げはあるので、よく分からなくても食っていけるだけの利益は出る。

 フランチャイズの仕組みとして完成されているのでそれはそれで素晴らしいことだが、オーナーが「商売人」として成長するのは難しいとも言える。お客さんからのクレームが絶えないコンビニの多くは、オーナーが商売人になりきれていない。なんとなく経営している結果、クレームが多いのだ。

 もし、コンビニが個店独自のサービスを提供するなら、そこは経営者の責任だ。本部が統一した教育プログラムよりも、オーナーを「一人前の経営者」として育て上げる近道となるだろう。

 現在は「チェーン店というだけで、コンビニ個々の店のオーナーは別々だ」ということが周知されている。つまり、個店独自のサービスが受け入れられる可能性は十分にあり、全店共通のサービスでなくてはならないというわけではない。

 ファミマへ行って「Lチキください」となんとなく言ってしまうのは、今の特色のないコンビニが言わせているということに、本部は早く気付くべきではないだろうか。

(川乃もりや)

最終更新:8月17日(水)6時25分

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