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赤字とCO2排出量に苦しむ四国電力、原子力発電の再開で脱却できるか

スマートジャパン 8月17日(水)13時25分配信

 東日本大震災の発生後で4カ所目になる原子力発電所が動き出した(2カ所は再び停止中)。愛媛県にある四国電力の「伊方(いかた)発電所」の3号機が8月15日の午後2時18分に送電を開始した。震災直後の2011年4月から定期検査に入ったまま運転を停止していたため、5年4カ月ぶりの再開である。

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 発電再開にあたって佐伯勇人社長は「四国における安定的かつ低廉な電力供給を支える基幹電源の発電を再開できたことは感慨深く、当社にとりましても事業運営の安定化の観点から大変意義あるもの」とのコメントを発表した。実際には地域の電力供給よりも四国電力の経営にメリットがある。

 先ごろ電力会社10社が発表した2016年度の第1四半期(4-6月期)の決算で、四国電力だけが赤字に転落したインパクトは大きい。本業のもうけを示す営業利益が前年同期に48億円の黒字だった状態から一気に84億円の赤字に陥ってしまった。しかも震災後に電力会社の収益を圧迫していた燃料費は125億円も減少したにもかかわらずだ。

 一方で2015年8月から原子力発電所を再稼働させた九州電力は10社の中で最大の167億円にのぼる増益を果たした。各社とも販売量が縮小して売上高の減少が続く中で、原子力発電所の再稼働による燃料費の削減に頼る。ただし原子力は安全対策費が膨大にかかり、定期点検の頻度も多いことから、長期にわたって収益を安定させる効果を期待できるかは疑問である。

 特に周辺地域の住民や自治体からの反発は根強い。実際に伊方発電所の運転停止を求める裁判が愛媛県内のほか広島県や大分県でも起こっている。政府が指定した災害対策重点区域には愛媛・山口2県の8市町が含まれていて、対象地域の住民の不安は再稼働で増幅した。関西電力の「高浜発電所」のように住民の反対によって運転停止を余儀なくされる可能性もある。

石炭・石油火力が7割以上を占める現状

 四国電力が原子力発電所の再稼働にこだわる理由はほかにもある。CO2(二酸化炭素)排出量の削減だ。四国電力が2015年度に販売した電力の内訳を見ると、実に55%を石炭火力が占めている。同様にCO2の排出量が多い石油火力と合わせると全体の7割を超える。

 この結果、電力1kWh(キロワット時)あたりのCO2排出係数は0.669キログラムと高い水準のままだ(固定価格買取制度による削減効果の調整後)。電力業界全体では2030年度にCO2排出係数を0.37キログラム/kWhまで低下させる目標を掲げている。四国電力は現状からほぼ半減させる必要があるが、CO2排出量が少ないLNG(液化天然ガス)を燃料に使える火力発電設備は現在のところ「坂出発電所」しかない。

 原子力発電は出力の調整がむずかしく、需要の増減に合わせて火力発電と併用する必要がある。原子力を再稼働させるだけではCO2排出量を大幅に低下させることはできない。火力発電設備をLNGに転換して高効率化を図ることが急務だ。しかし原子力の安全対策に膨大な費用がかかる状況では、火力発電の設備投資額も限られてしまう。

 伊方発電所の3号機は「プルサーマル」方式であることから、政府や原子力産業からの期待も大きい。プルサーマルはウランとプルトニウムを混合したMOX燃料を使って発電する方式で、発電後に再処理して燃料をリサイクルできる利点がある。

 ところが青森県の六ヶ所村で建設中の国内唯一の再処理工場は稼働の見通しが立っていない。加えてプロサーマル方式は重大事故が発生した時の被害が通常の方式と比べて増大する懸念もある。はたして伊方発電所の再稼働が四国電力と地域の双方にとってプラスに働くのか、大きな疑問が残ることは否めない。

最終更新:8月17日(水)13時25分

スマートジャパン