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スティック掃除機の“当たり年”に飛び出した注目製品――パナソニック「イット」の秘密

ITmedia LifeStyle 8月17日(水)6時10分配信

 今年は各メーカーが発表するコードレススティック掃除機が軒並み“当たり”で、発表会などに参加するたびに各メーカーの底力を思い知らされている。その中で最も興味をひかれたのが、本体を半回転させることでノズルを“I字型”に切り替え、家具と壁のすき間を掃除できるパナソニックの“iT”(イット)だった。

デザイン担当の山本侑樹氏。“iT”は「銃みたいでカッコいい」とネットで話題になった

 パナソニックは、スティック掃除機の分野では国内メーカーの中でも最後発であり、前モデル「MC-BU110J」はデザインはエレガントながらノズルがやや大きく、取り回しが悪かったため個人的にはあまり評価していなかった。しかし、それからおよそ1年半、デザインと使い勝手の両面で驚くほどブラッシュアップされた“iT”「MC-BU500J」が誕生した。今回は、同社商品企画部の北口和美氏と、デザイン担当の山本侑樹氏に開発の経緯やデザインのポイントなどについて聞いた。

●三洋電機の技術を継承した“iT”

 コードレススティック掃除機“iT”の名前の由来は、本体に対してノズルを“I字型”にも“T字型”にも片手で切り替えられること。まるで一筆書きのように部屋中を掃除できることを実現した「くるっとパワーノズル」が最大のポイントだと北口氏は話す。

 これを実現するため、技術開発のベースに利用したのが、三洋電機のキャニスター式掃除機“airsis”(エアシス)に採用されていた「逆立ちパワーノズル」だった。

「コードレススティック掃除機は、手に取ってサッと使えることが絶対であり、命です。でも、付属のアタッチメントなどを使うと、それだけで動作を止めることになります。これをなんとかしたかった」(北口氏)

 パナソニックにはキャニスター式掃除機に使われる「親子ノズル」があったが、足でポンっと取り外すことができても、やはり動きを止めてしまうことは変わらない。そこで三洋電機が持っていた技術をブラッシュアップする方向で開発することに決めたという。「“隅やすき間を逆立ちで一発!”というのが、元々のキャッチフレーズだったということも決め手になったかもしれません。ただ、それをよりスマートにするために、今回、設計やデザインがかなり頑張ってくれました」(北口氏)

 デザイナーの山本氏によると、コードレススティック掃除機“iT”をデザインする最初の段階から、ノズルの付け替えはなしで、床もすき間も掃除できるものにするというのは決定事項だったという。

「ただ、三洋電機の『逆立ちパワーノズル』を使った掃除機は、ハンドルが左右両方に付いていました。見た目には分かりやすく、確かに両手を使えば回転はさせやすかったのですが、持っている手を持ち替えることで、どうしても流れが止まってしまいます。つまり、このままでは“一筆書き”のコンセプトを実現できません」(山本氏)

 まるで一筆書きのように掃除をもっと気軽にできるようにしたい。しかも部屋に“出しっ放し”にしたくなるよう、スリムでシンプルにデザインすることが不可欠だったと山本氏は話す。「ハンドルのボリュームを抑えつつ、使いやすくするために、ハンドルを“L”字型にデザインしました。ハンドルのデザインが1つの大きなポイントで、片手でノズルを切り替えるために、モーターやバッテリーの配置も考慮し、スムーズに回せることも考慮しています」(山本氏)

 ノズルを片手で“T字型”から“I字型”へと変えることができて、かつ“I字型”ですき間を掃除するときも、無理なく、使いやすさは維持しなければならない。そのために重要なのがハンドルの角度だったという。

「ハンドルは垂直ではなく、あえて30度の角度をつけました。これにより回転させ、“I字型”にした後でも手首に大きな負担なく、掃除をし続けることができます。もちろんこれがパーフェクトとはいえませんが、すき間を掃除する時間や面積は、通常の床面と比べて少ないですから、現段階ではこれが最良だと自負しています」

●すき間を掃除したくなる掃除機

 実際にしばらく試用してみたが、これまでのコードレススティック掃除機と“iT”のもっとも大きな違いは、家具と家具の細かなすき間や通常の視線では見えない家具の下なども、とにかく「掃除したくなる」ことだった。

「前向きな気持ちになる掃除機と言われるのはうれしいですね。コードレススティック掃除機は、汚れが目立つところをサッと掃除する使い方がメインになる分、見えないところをわざわざ見つけ、ノズルを付け替えてまで掃除しない人も多いです。でも、“iT”を使ってもらえれば、これまで確実に見て見ぬ振りをしていたようなところも掃除したくなります」(北口氏)

 掃除機において吸引力が高いのは当然のこととして、もっとも重要な点は操作性とともに密着感であると思う。コードレススティック掃除機“iT”は、小型軽量なノズルながらもその点は一切妥協がないようだ。

「パナソニックはパワーノズルを開発して28年以上続けているので、そのあたりはしっかりと実現できています。そのポイントの1つが『ガバとり』構造を採用したことです」(北口氏)

「デザイン的には、実はその『ガバとり』構造のバンパーに搭載されているローラーがポイントでした。もともとこのローラーは、より目立たせたい機能であったことから、三洋電機時代は、“鬼の角”のようにローラー自体の存在が際立つものでした。でもそれでは、シンプルでスマートな“iT”にはマッチしません。『今回はローラーを外に出さない』と設計に話をして、結果、バンパーに内蔵することができました」(山本氏)

 実際、ローラーがバンパーに内蔵されても壁を平行移動させるスムーズ感を損なうことはなく、かつ壁際にたまったゴミも効率的に取ることができた。とくに階段などの掃除ではその効果を大いに感じることができる。

 さらに注目はそのブラシ部分にある。こちらはパナソニックのキャニスター掃除機などの技術をブラッシュアップし、効率良く集じんできるように3種類のブラシを配置しているという。

「コードレススティック掃除機の場合、まだまだゴミの取れ方に不安を持っている人が多いのも事実なので、しっかりとれることをアピールするためにも、キャニスター式の技術であるV字パターンをブラシに転用しました。さらに3種類のブラシを組み合わせ、グリーンはフローリングなどのふき掃除用として、1本1本のブラシの設置面をより広げるためY字形状にしました。先端が丸では床面には1点しか接しませんが、Yなら確実に2点が接するので、効率良く床面からゴミがとれます。本数自体も増やすことで、キャニスター掃除機に負けない掃除力を実現しています。次に白いブラシはじゅうたん用のブラシで、素材はやや固めなので、絡み付いたペットの毛などもしっかり取ることができます。また、壁際などのゴミを重点的に取るグレーのブラシは、大きなゴミを吸い上げるために、あえてブラシを間引きすることで、歯抜け状態にして風の通り道をキープしています」(北口氏)

 また、カーペットの上などを走行しやすいように起毛布ローラーを採用しているのもパナソニックならでは。「これは、ふとん用掃除機からの技術転用になります。ふとんという環境は特殊で、掃除機のノズル自体を滑らせると、ふとんまでズレてしまうため、掃除機をスムーズに動かすのが難しい。そこで、起毛布ローラーを採用しているのですが、それをコードレススティックでのじゅうたん掃除用に活用したということです。パナソニックはあらゆるタイプの掃除機をこれまで作ってきているので、その良い部分を応用できるのも強みです」

 コードレススティック掃除機“iT”の最大の魅力といってもいいのが、シンプルでスマートな形状だろう。コードレススティック掃除機自体が、部屋に出しっぱなしにして使うというスタイルなので、各社ともデザインには非常に力を入れているが、パナソニックの場合、その一歩先を実現した。余計な存在感は主張せず、エレガントで細身の本体を生み出すことに成功したからだ。「出しっ放しにするとはいえ、あくまでも掃除機ですから、必要以上にデザインを前面に押し出す必要はありません。デザイン家電ではないため、カッコいいことよりも、掃除機として使いやすく、置いてあって快適であることの方が重要です。だから、1本の線のような細さを実現することに最後までこだわりました」(山本氏)

●“1本の線”になるデザイン

 最初のコンセプト段階から、壁面のコンセントプレートよりも細い70mm前後にすることは決定事項だったと北口氏は言う。

「そのためにダストカップの位置や基板、モーターやバッテリーなどを、その細身の本体幅内にどう配置するか、熟慮を重ねました。例えば、バッテリーのセルは通常、板状に横に並べるのが普通ですが、それでは今回の本体幅である72mmには到底収まりません。最終的に、かまぼこ状にセルを配置することにしました」(北口氏)

 円柱状のモーターを採用した時から、本体は円柱状にデザインすると決めていたという。「その後セルや基板の配置を考えました。本来はすべてを円柱内に収めたかったですが、セルは単三形乾電池より一回り大きいので、どうしてもその状態で収めるのは難しく、円柱の上に板がのっているような形状に落ち着きました。でも、その凸部分がなるべく視覚的に目立たないようにするため、ハンドルの内側に配置しつつ、角の丸みを他の丸みとそろえたり、イメージされた時に記憶として残らない程度にまでは抑えられたと思います」(山本氏)

 側面から見ると銃のようなスタイルで、どこか男性受けしそうな雰囲気を醸し出しているのもデザイン的特長だ。だが、メカメカしさが強すぎるということはなく、柔らかで絶妙なデザインバランスを保持している。

「デザイン的に最も重要なことは、前から見た時に“1本の線”に見えることでした。男らしさを主張するような必要はありません。前から見る1本の線が主、横から見た銃っぽさというのはあくまで従。内側を黒でまとめたことで、フロントのそれぞれのカラーよりも、内側は見た目に沈み込むので、コントラストの関係で前に主張してくることはありません。これにより、ノイズが少なく1本の線のように見えるのです」(山本氏)

 このように掃除機という生活家電を絶妙なバランスのデザインに落ち着かせられたのは、実はデザイナーの山本氏自身の過去のキャリアにも関係しているのではないかと、商品企画部の北口氏は分析する。実は山本氏は入社してすぐに電動工具をデザインを担当し、その後、対極である「パナソニックビューティ」などの美容家電をデザイン。現在、その中間ともいえるコードレススティック掃除機のデザイナーになったという異色の経歴を持つ。これについて、本人の山本氏はどう思っているのだろうか?

「デザイナーとして最初に担当した電動工具は、正直あまりデザインを求められるようなものではありませんでした。実際に、現場の方々に話を聞いても、使い勝手についてはあれやこれや、いろいろ要望を話してくれるのですが、デザインについて言及されることはほぼなかったと記憶してます。次に担当した美容家電のパナソニックビューティは、逆に美しくなるために美しい道具であることは非常に重要で、デザインも気を使いましたね。この時に担当したフラッシュ脱毛機のデザイン経験が、実は今回の“iT”をデザインするにも役立ったかもしれません。というのも、フラッシュ脱毛機もコードレススティック掃除機と同様、引き出しや棚にしまい込んでしまうと、そのまま使われなくなってしまうものだったので、あえて出しっ放しにしておけるようなデザインにしました。本体にコードを巻き付け、ハンドルを台座に置いても、スマートな印象になるようにしています。それが今回の“iT”のハイブリットなデザインを完成できた理由かもしれません」(山本氏)

 繰り返しになるが、今年は各メーカーが発売するコードレススティック掃除機は機能、デザインともに軒並み上質な“当たり”である。その中でもデザインと使い勝手の両面で存在感を示す“iT”「MC-BU500J」。注目の製品と紹介した理由がお分かりいただけただろうか。

※初出時に山本侑樹氏のお名前を誤って山口氏と記載していました。おわびして訂正します。(8/18 16:30)

最終更新:8月19日(金)12時59分

ITmedia LifeStyle

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